兄弟家の休日
前回までのあらすじ
引き返してきたリーフの助太刀により、アイク、ヘクトルはなんとか門番を撃退することに成功
果たしてこの手ごわい門番達は、そこまでして何を守っているのか・・・・・・?
彼らの休日は、続く。続くったら続くのだ!
「ハァ・・・ハァ・・・・・・」
「ブヒィ・・・ヒィ・・・」
「ハァハァ・・・・・・」
疲れ果てた三人の男達が研究所らしき部屋の床に倒れている
言うまでも無く、先ほどまで激戦を繰り広げていたアイク達である
彼らは苦戦するも、なんとか騎士を倒すことに成功した
「いやー、正直、流石に死ぬかと思ったね」
「これほどまでに厳しい戦いは久々だった・・・・・」
「まぁ、勝てたんだからよしとしようぜ・・・・・・ふぅ、まだ息が上がってやがる」
そう、倒せたはずだったのだ
倒した相手が、ただの機械相手だったのならば
しかし、三人はある事を忘れていた
この島の敵たちは、あらゆる意味で彼らの常識が通用しないということをいうことを
故に彼らに安息など許されはしないと
だから彼らは、倒れた騎士の方から微かに流れてくる音声を聞き取る事ができなかった
・・・・・・・自己修復装置・・・・起動。
オートリペア・・・完了まであと2秒・・・・・・
アイク達の行く先に再び暗雲が立ちこめ始めていた頃・・・・・
砂浜付近で待機していたマルス達は、兄達の身を案じていた
そのせいか、皆の表情は暗く険しい
「アイク兄さん達、大丈夫かしら・・・・・」
「そうね・・・・・力だけならアイク兄さんに勝てる者はそういないでしょうけど、
この島は不思議なことが多いから・・・・・・」
リンとセリカはやはり妹なだけに、兄弟達の身が心配のようだ
無論、マルス以下他の兄弟達も心配していないわけではない
しかし、実際に口に出して心配しているのは彼女達だけであった
何故ならば・・・・・・・
「リン姉さんもセリカも、そんなに心配するもんじゃないよ。
そんなに家族のことが信用ならないの?」
「ッ!
マルス、あんたはまたそんなこといって・・・・・!」
「・・・・・・大丈夫。
ヘクトル兄さんやリーフはそれなりに戦えるし、ロイはあれでいて悪運が強い。
それよりなにより、アイク兄さんの異名を忘れたのかい?」
マルスの問いの意図がつかめないのか、怪訝そうな顔で見つめ返すリンとセリカ
マルスは少し間をおいてから言った
「紋章町一の??フラグブレイカー″。これまでだって、何度も僕たちの死亡フラグをへし折ってきたじゃないか。
そんな兄さん達がいるんだ。僕はむしろ、敵さん達に同情するね」
最後の方は照れが入ったのか、おどけた口調で語り終えたマルスに対して、
リンは一瞬キョトンとした表情をした後、苦笑いをしながらマルスに同意を返す
「そうね。紋章町にいたころはあまりにそれが当たり前過ぎて、忘れてたわ。
思い出させてくれてありがとう。・・・・・・・・・あと、励ましてくれたこともね」
珍しく素直に礼を言われたマルスはそれが予想外だったのか、多少慌てた様子で言葉を返した
「リン姉さんがお礼をいうなんて・・・・・明日は雪かな?
とうとうここ南国にも氷河期がやってくるのかもね」
「・・・・・・たまに良い事言ったかと思えばオンドレはーーーーーーーーー!!!!!」
「ちょ、僕一応病み上がりなんですけどオオオオオオオオオオオオオッ!!!???」
「・・・・・・・マルス兄さん、アルムのこと忘れてるわよ」
セリカのその一言は、全身のありとあらゆる間接に現在進行形で激痛が走っているマルスにはまるで届いていなかった
青空の下、マルスの悲鳴が木霊する・・・・・・
しかしその悲鳴とは裏腹に、マルス以外の皆の表情は、先ほどまでとはうって変わって穏やかな物になっていた
(皆・・・・・・頼むから無事でいて)
(何も収穫がなくてもいいから、全員帰ってこい。
それだけで、兄さんは十分だ)
年長組のエリンシアとシグルドの、声なき祈り
はたしてそれは、アイク達に届いたのだろうか
結果は、彼らが帰ってくるまで分からない
場面は再び、アイク達視点へと巡る
そこにはただ、剣撃の音と血なまぐさい光景が広がっているばかり
彼らは再び、戦いの渦へと巻き込まれていた
「ちくしょう!なんでこいつまだ動いてやがるんだ!?」
「分からん・・・・だが、やるしかあるまい・・・・・・・!」
「いい加減にしてほしいよこのヒトデナシー!
あ、機械だから元々人じゃないか・・・・・・」
「んなこと言ってる場合じゃ・・・・うおっ!?」ブゥン!
「・・・・ピピ、ピ・・・・・・・・・」
あの後、一体何が起こったのだろうか
状況を整理すれば、こういうことになる
一度は倒したかに思われた深紅の騎士
しかし、騎士は背中の自動修復装置を起動
アイク達が倒れているすきに修復が完了、そして再び戦闘を開始した・・・・・・
アイク達は修復装置に気づいてはいなかったが、仮に気付いたとしても勝機は薄いだろう
騎士は常に彼らを正面に捉えており、背後を取る隙はまったくない
その上、苦労して倒した相手の復活に、三人の戦意は大きく削られていた
倒しても、倒してもきりがないのではないか?という疑念がつねに頭の中に沸いてしまい、
それがどうしようもなく剣の振りを鈍らせ、回避を遅らせる
気付けば彼らは、三人がかりにも関わらず防戦一方となっていた
「くそっ、流石にもう・・・・・・」
「これ以上は・・・・・・・!!」
「・・・せめて、ロイ達を逃がせたのが幸運と言うべきか」
「あいつらには、脱出して助けを呼んでもらわねえとな」
三人はそんな会話をしつつ、ある覚悟を決めた
自分達はここで一度朽ち果てるという、悲しい決意を・・・・・・
他の家族さえ脱出できれば、自分達はバルキリーを掛けてもらえる
ロイ達が無事なら、ここの危険を伝えることで彼らがこの騎士に襲われる可能性を無くすることもできる
無論、まだ勝負がついたわけではない
最後のあがきとばかりに、アイクが単身で突っ込む
「ヘクトル、リーフ!逃げろ!!!」
「兄貴!!」
「兄さん!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
「!!!!!!!!!!」
キィンッ!!
ズガアッ・・・・・・・・ン!!
「うおおおおおおお!?」
「うわあああああああっ!!」
次の瞬間、深紅の騎士を中心とした激しい爆発が起きる
ロイとヘクトルは突然の衝撃に、思わず身体を伏せてしまう
部屋が熱と煙幕にしばし包まれ、彼らの体力を奪っていく
ロイ達がまず確認したかったのは、アイクの無事であった
最後に見たのは、騎士に突っ込んでいきもろとも爆発に巻き込まれたアイクの姿のみ
ひょっとしたら、爆発に巻き込まれたのでは?と心配になったのだ
いやむしろ、その可能性の方が高い
その思いもあいまって、まだ視界が確保されぬうちに二人はアイクのいたあたりへと駆け寄っていた
彼らの予測通り、兄は爆発の震源地で死んだようにして倒れていた
「兄さん!大丈夫!?」
「気絶してんのか?どうやら、脈はあるみてえだが・・・・・・・」
アイクは二人の声に多少の反応を示したが、眼をあけることはなかった
次に、ロイとヘクトルは周囲の確認を始めた
あの騎士の動力部が生きているようなことがあれば、破壊しなければならないからだ
先ほどのような事があれば、今度こそ三人とも命はないだろう
しかし周囲に散らばっているのは破片ばかりで、原型を保っているものは一つも残っていないようだった
ひとまず安心した二人の耳に、よく知った声が二つ飛び込んできた
「おーーーーい!!」
「三人とも、生きてるーーーーーー!?」
「ロイ!それにアルムも!」
「お前ら、どうして・・・・・・」
「へへ、心配になって後から付いてきちゃった」
「ぼ、僕が悪いんだ。リーフ兄さんも行ったのに僕たちだけ逃げるの?なんて言うから・・・・・・」
滔々と訳を話し始める二人に、兄達のありがたい説教が降り注ぐ
「ばっっっか野郎!!なんて無茶しやがるんだ!!!!!」
「まぁ僕が言える台詞じゃないけど、足手まといになるだけと分かっててくるのは感心しないなぁ」
そのまま長い説教タイムへ突入しそうな気配を感じ取ったのか、ロイが二人の言葉を遮る
「・・・・・・ちょっと待ってよ!僕はともかく、アルム兄さんは足手まといになんかなんてないよ!」
「え?」
「あっ、気付いてないの!?あの騎士にとどめをさしたの、アルム兄さんなんだよ!!!」
「「な、なんだってー!?」」
「馬鹿な!アイク兄さんでも取れなかった背後をあのアルムがいともあっさりととれるなんて・・・・・・
ありえないよ!」
「ってか、それを認めちまったら俺らの努力が馬鹿みてえじゃねえか!!」
「まぁ、実際ピザトル兄さんが馬鹿なのは事実だけどね」
「んだと!?」
ギャーギャーゲンサクデハピザノクセニ!ソレハフウインノハナシダ!メタハツゲンハ(ry
二人の言い争いで、十分が経過した・・・・・
―――十分後
「結局の所、どうしてアルムは奴の背後を取ることができたんだ?」
「お前もステータスじゃ兄貴に引けを取らないのは知ってるが・・・・・
それでもあいつには敵わないはずだ」
「・・・・・・・あいつに最初あった時のことを覚えてる?」
「ああ、この部屋に初めて入った時(27章>>437)だろ?」
「たしか、侵入者4名・・・・・排除シマス とかなんとか・・・・・
・・・・・・・ん?4名・・・・・・・・・・?」
「・・・・・そう、僕アルムはその影の薄さ故に、機械にすら感知されることがなかったのだぁーーーーーーっ!!」
「「「・・・・・・・・・・・」」」
「アルム兄さん・・・・・自分で言ってて悲しくならない?」
「・・・・・少し」
「・・・・・ともかく敵は倒した。探索再開だ」
「アイク兄さん!もう起きて大丈夫なの?」
「問題ない。爆発に巻き込まれる瞬間に受け身をとったからな。
それでも気絶してしまうとは、まだまだ鍛練不足のようだがな・・・・・」
(至近距離の爆発の受け身をとれる時点で・・・・・・)
(十分すぎる気がするぜ・・・・・・・・)
(流石兄さん!そこに痺れる憧れるゥ!!!)
リーダー格のアイクの復帰と同時に、一同は探索を再開した
幸い、他に騎士のような強力な障害は見当たらなかった
途中レーザー兵器やガードシステムなどがあったが、それらはアイクがすべて ヌゥン! で叩き潰した
ザッザッ・・・・
「ここが最深部か・・・・・・何も無いな」
「いや、あるにはあるけどよくわからない物ばっかりってのが正直なところだよね」
「こんな言葉みたことない!っていう本とか、
こんなのいじったことない!っていう機械とかばっかりだね」
「素直に帰ってマルス兄さん達を連れてきた方がいいかも・・・・・」
探索が一段落したのか、彼らは帰り支度を始めた
どうやら一端皆と合流し、機械や語学に詳しそうなエイリークやマルスを連れてくるつもりのようだ
帰路に着く彼らの顔には疲労が浮かび、あちこちに傷ができている
服は所々破れている上に、血にまみれているといった具合だ
しかし何はともあれ、彼らは全員無事で探索を終える事が出来た
その喜びを噛みしめながら、アイク達は待っている家族の元へと向かうのだった・・・・・・
つづく