路地裏の通り魔 後編 終
「いや、ちょっと待てマルス。オーブはうちの物置に封印の盾として置いてあるはずだ」
マルスの呟きを聞いたシグルドがそんなことがあるはずはないと否定する。
「…ちょっと待って。今確認するわ」
サラが真偽を確かめるためにウォッチの杖を取り出し兄弟家の物置を覗く。
「…えーと…これかしら?確かに五色のオーブがはまった盾があるわよ」
「じゃああれは違うのか…?」
サラの報告を聞き、考え込むアイク。直後に必死でリンから逃げるマルスが助けを求めた。
「…と、とにかく今のこの状況をどうにかしてよ!!」
「…オトナシク…コロサレロ…」
「と言われても…僕達は僕達であの竜を止めてるしねえ…」
6人に襲われている面々以外は祭壇付近から現れる竜を倒すので必死である。
「…くくく…逃げ惑えマルス…」
「…貴様さえ殺せれば我が野望も叶う」
「…いくら紋章町最強の男といえども」
「…暗黒竜には敵うまい」
「…ファルシオン以外ではな」
突然6人の動きが止まり、6人の口からガーネフの声が出てくる。
「…ガーネフ!?馬鹿な、貴様はついさっき死んだはずだ…」
全員が驚いている中でマルスが目の前に立つリンへと問いかける。
「…さよう。確かに先程の攻撃でわしは死んだ」
「…だがわしは死ぬ前に自分の精神を分割した」
「…そして6つの精神で闇のオーブと同じような物を作り上げた」
「…そしてそのオーブを着けられた相手の精神を乗っ取り」
「…その相手が大事に思っている奴に対する感情を逆転させた」
「…さらばだマルス。お前の大事な姉に殺されるがいい」
喋り終えたガーネフは意識をオーブに戻し、再びリン達の攻撃が始まる。
「くっ…光のオーブがないとどうしようも…」
髪を数本切り裂かられながらも攻撃を避けたマルスが呟く。
「諦めるな!この世に無敵などない。必ず弱点があるはずだ!」
火竜を数体薙ぎ倒しながらアイクが弱気になっているマルスを励ます。
周囲ではちくちくとHPを削られながらもサザと戦う漆黒の騎士や、
ブーツを履き、華麗にジュリアンの間合いから逃げているレナ、
リザイアや銀の剣からひたすら逃げつづけながら説得をしているクリス、
メティオからひたすらリーフを盾にして逃げているクライネ、
そして無限に湧き出る竜を逃がさないように倒す兄弟達が戦っている。
「…そうだね、諦めるのはまだ早いね。みんなありがとう。頑張ろう!」
みんなの奮戦を見て再びやる気を取り戻すマルス。
そしてその決意に答える物が祭壇へと駆け付けたのである。
「その通りだ、マルス」
ドアからまだ少し眠そうなガトーが5人の援軍を連れて現れたのだ。
「ガトー様…それにシーダ!?」
「ミルラ!?それにチキまで…」
「ナギさんも来たんだねハァハァ…」
「マルス様、私達もマルス様のために助けに来ました!!」
シーダはドラゴンキラーを片手にマルスの元へ駆け寄ろうとしていた。
「エフラムのためにも…頑張ります」
ミルラはエフラムの元へと駆け寄り、サラと睨み合いながら化身する。
「チキもお兄ちゃん達のために頑張るよ…zzz」
「ギャァァァ!?熱い!チキ!敵はあっち!!僕は違うよ!!このひとでなしー!!」
寝ぼけているチキが竜と一緒にナギに近寄ろうとしたリーフを燃やし尽くす。
「悪い子は…お仕置き…」
よくわからないことを言いながらナギも化身して竜を燃やす。
形勢は兄弟達に有利になり、竜達もみるみるうちに減っていった。
「マルス様、あのオーブはまがい物です。ですからきっと弱点があるはずです」
マルスの元へ駆け寄ったシーダがマルスへと助言をし始める。
「弱点…か」
「それは愛です。あのオーブが心を操るならそれ以上の心で打ち破ればいいのです」
「…こんな時にまで愛の話…?」
いつものように愛の話をし始めるシーダにマルスは思わずツッコミを入れてしまう。
「…レナサン…コロス」
「…ジュリアン!!私のことをレナって呼んで!」
シーダの話を聞いて本気にしたレナがジュリアンを抱きしめながら叫んだ。
すると抱きしめられたジュリアンは苦しみはじめ、もがく。
「…レナ…サン…コロ…レ…ナ……ウボォー!?」
一際大きな叫びを出したかと思うと、ジュリアンの首にあるオーブが砕け散った。
「…あ……レナさん…どうしてここに…?」
「ジュリアン!!元に戻ったのね!!」
泣きながらジュリアンと抱き合うレナ。
「うそ…いや、マジですか!?」
思わず口から驚愕の声が漏れる。シーダの言ったことが本当に弱点だったのだ。
「みんな、見たか!!操られた者には愛で戻せるぞ!!」
茫然とするマルスをよそに周囲の者は次々に説得を始める。
クリスがカタリナとクリスを。ミカヤがサザを。クライネやローロー、カタリナがエレミヤを。
マルスが正気に返った時にはリン以外の皆は解放され、竜を倒していた。
そしてマルスの目の前にいたリンはオーブのガーネフの動揺を見せていた。
「ば、馬鹿な…まさかこのわしの闇が破られるとは…」
「あなたには愛の力がわからないのですね。愛とは力なのです!」
何故かマルスをよそにシーダがガーネフに向かって愛について語っていた。
「さあマルス様!マルス様の愛でお姉様をガーネフから助けてください」
シーダや竜を退治し終えた皆がマルスとリンを見守る。
「…マジですか…ええい!!やってやる!!」
やけっぱちになったマルスがうろたえるリンを抱きしめた。そして…
「…マァァルゥゥスゥゥ!!また嘘を載せた新聞を配ろうとしたわね!!」
「いや、それは嘘じゃなくて真じ…痛い!!姉さん僕の肘はそんなに曲がらな…ギャア!?」
事件から数日後。いつものようにマルスはリンからお仕置きされて居間に倒れていた。
傍らではそんな2人を微笑みながらエリンシアが見ている。
あの時、マルスはリンを抱きしめながら耳元でこう囁いた。
「…あれ、また少々太りましたか?やけに抱き心地がいいですよ」
「…………マァァァルゥゥゥスゥゥゥ!!そんなに死にたいのかしら!?」
「…ば、馬鹿な…このわしが抑え切れないほどの怒りが…広がって…」
その断末魔と共にオーブは砕け、ガーネフはついに消え去った。
「やった、元に戻りましたよリン姉さん…ですから首をこれ以上絞めないでください」
「うん、それ無理」
「ですよねー…アァァァァァァ!?」
祭壇にマルスの断末魔が響き渡り、通り魔事件は解決した。
エレミヤ達は情状酌量の余地もあり、罪を地域の奉仕活動で償った。
主犯のガーネフは生き返されて、とある拷問をされているらしい。
何にせよもうこんな辛く悲しい事件は起こらないだろう。
「…それにしてもどうしてマルス兄さんはあの時からかったんだろうね?」
「簡単ですよ。感情を暴走させるなら怒らせるのもありですよね?」
「そうか。みんなは親愛の情を強めたけど兄さんは怒りを強くしたのか」
「なるほど…兄さんらしいね。素直じゃないなあ」
「イタイ!!ネエサンソレイジョウハ…ウボァー!!」
「…ま、みんなも無事だしめでたしめでたしかな」
終わり
おまけ
「ガーネフ、貴様の解放条件は闘技場でこの書で勝つことだ」
刑務所から連行されたガーネフは警官から手渡された書で闘技場に立っていた。
「ふ…このわしに勝てる者など…」
ニアかとん 25/25
(錬成ファイアー)
威力1 命中50 必殺0 重さ20
カキーン!NO DAMAGE!!
「…なんだその哀れな術は。炎とはこうして使うものだ!!」
ニアかえんりゅう --/--
(錬成ファイアー+女神の加護)
威力20 命中150 必殺150 重さ1
「あーあ、死んじまって。馬鹿な奴だ」
今度こそ終わり