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3 FETVに向かう …政府機能を奪ったら…まずはそれを全国に知らせるんじゃないか?
エフラム 「政権を奪ってもそれを皆が知らんでは意味ないからな…全土に放送を流すに違いない!」
さっと踵を返すとエフラムはFETVの放送局に向かって駆けていった。
FETV…紋章町全土に様々な番組を提供する放送局の建物はすでに周辺をAKJの兵隊たちに囲まれていた。
AKJの車両に据え付けられたスピーカーより大音量で声が流れる。
AKJ隊員「紋章町AKJ政府よりFETVに伝達する!本日より紋章町憲法は無期限の停止となりAKJの決定と指示が全ての法に優先する!
これに基づきFETVの施設をAKJ公的放送のため接収する。大人しく従えばよし、従わねば国家反逆罪として武力制圧する!」
イリオス 「…なんか物騒な事言ってるぜ…どうすんだよ社長」
この時FETVのスタッフ陣は5階のスタジオに集まっていた。
基本的に小心者の社長は真っ青になって部屋の隅で震えている。
シャナム 「どどど、どうしよう………」
セーラ 「こういう時こそリーダーシップを発揮してよ! 使えないわね!」
シャナム 「ひどくね?」
ユアン 「ねーねーセーラ」
セーラ 「何よ?」
ユアン 「ワープの杖持ってないの? 持ってたらそれで僕を逃がしてよ」
セーラ 「持ってねぇよ!つかあれ自分はワープできないっての!?私一人置いていく気かい!?」
ユアン 「チッ使えねぇ…」
セーラ 「んだとこのクソガキ!」
ドロシー 「あ、あのですねぇ…仲間割れしてる場合ではないんじゃないでしょうかね?」
イリオス 「よ、様子見に出してた亡霊戦士が戻ってきたぜ…AKJの奴らは70人前後…何人か魔道士もいるみたいだ」
シャナム 「よし降参だ。大人しく従うことにしよう」
ドロシー 「はやっ!? 報道の自由を守るべき我々がテロリストの脅迫に屈していいんですか!?」
シャナム 「ハリウッド映画じゃあるまいし民間人の我々に何ができるのさ!?
自慢じゃないが私は本物と違って雑魚だ。さっきから小便ちびりそうだ!」
イリオス 「そ…そりゃ俺たちは聖戦士でもなければチートユニットでもねぇけどよ…」
シャナム 「そうだろうそうだろう? 大体下手に抵抗して局の設備が壊されでもしたら誰が保障してくれるんだ?
そんな事になったら事件が片付いても営業を再開できなくなるぞ…その場合の経済的損失を考えるとだな…
下手したら倒産しかねん…ここは穏便にだな」
セーラ 「相変わらず銭勘定は早いわねぇ」
ドロシー 「し…しかしですねぇ…私たちは皆さんに真実を伝えるマスコミとしてこの事件を正しく放送しないといけないのではないでしょうか?」
ユアン 「僕は命あってのモノダネだと思うけどなあ…AKJのおねえさんたちに僕の可愛さをアピールすれば僕だけでも見逃して…」
セーラ 「こらガキ!一人だけ逃げようったってそうはいくか!」
イリオス 「あいつら全員ブラコンだからそんなアピール無駄だぞ」
その時である…イリオスの携帯の呼び出し音が鳴り響いた。
イリオス 「なんだってんだこんな時に…はいもしもし!」
オルエン 『イリオス!? 今朝からFETVが映らないんだけど…なにかトラブル?
局の電話は通じないし…
うちの上司がカンカンなのよ。CM流さないなら料金返せって…』
フリージ社はFETVのスポンサーをしておりオルエンはその担当者である。
オルエンに限らずこの時点で紋章町住民の9割以上はまだクーデターの発生を知らなかった。
TVが流れない事を訝しみつつも日常の生活を送っていたのである。
ちなみに電話線は包囲してるAKJによって寸断されているが携帯の電波を抑えるところまではまだ手が回っていないようだ。
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イリオス 「オルエンか? いや…ちょっと今は放送できる状態じゃなくてな…」
耳ざとくその名前を聞いたシャナムがイリオスから携帯をひったくる。
シャナム 「オルエン様! これはやむをえない事件でして私どもの不手際では決して決してございません!
全責任はAKJにありますのでなにとぞなにとぞごかんべんを!!!」
オルエン 『しゃ、社長!?』
携帯を握り締めながらシャナムは渾身の土下座をする。
スポンサー様は彼にとって神にも等しい。
もっとも携帯越しに土下座など見えるはずもないのだが。
シャナム 「なにとぞ!なにとぞ!」
オルエン 『お、落ち着いてください社長! AKJって政治団体のAKJですか? いったい何があったんです?』
シャナム 「ははっ!うちの政治部記者の情報ですがAKJがクーデターを起こし我々の放送局を包囲しているのですっ!
現在局施設の引渡しを要求しておりまして…」
オルエン 『な…なんですって!? イリオスは無事なんですかっ!?』
シャナム 「え、ええ、さっきお話されたようにうちのスタッフは無事です…」
オルエン 『あ、ご、ごめんなさい動転して…わ、わかりました。上司にはそのように…』
そこで電話の向こうから何かやりとりが聞こえてきた。
よくは聞き取れないが…
シャナムが肝を冷やしていると電話の主が代わったようだ。男の声が聞こえてきた。
ケンプフ 『フリージ社広報部部長のケンプフだ。事情は聞いた。だぁが…何があろうと違約は違約だな社長?』
シャナム 「申し訳ありません申し訳ありません!」
ケンプフ 『こっちだって高いCM料払っているんだ。二時間以内に放送を再開しろ。出来なければ違約金だ』
シャナム 「そ…そんなご無体な!?」
ケンプフ 『ああん? 何が無体だ。契約書にはそのように書いてあるのだぞ?
むしろ二時間も待ってやる俺に感謝してもらいたいものだな』
電話はケンプフの方から切られた。
シャナムは真っ青な顔をして膝を震わせている。
イリオス 「しゃ…社長?」
シャナム 「守だ…」
セーラ 「へ?」
シャナム 「死守!AKJの要求はつっぱねる!そうしなければ我々は倒産だ!!!」
ユアン 「ちょ…ちょっとまってよ!スタッフは殆どシビリアンなんだよ!戦えるのは10人もいないんだよ!」
イリオス 「つかどんだけ自転車操業なんだよ!? 違約金払えないのかよ!?」
シャナム 「あひゃひゃひゃ!誰が違約金なんぞ払ってなるものか!
局の設備を守りつつ放送準備!いいか、金は命より重いんだ!」
イリオス 「しゃ…社長が壊れやがった…」
セーラ 「ちょっとまてや!あんたの金を守らすためにアタシらに命張れっての!? 冗談じゃ…」
そこまでセーラが言いかかった時である。
シャナムは窓を開けると屋外のAKJに向けて怒鳴り散らした。
シャナム 「拒否拒否拒否!断固拒否!つかブラコンとかシスコンとかありえんわ変態!」
AKJ隊員『ぬ…ぬわぁんだとぉ! ほざきやがったわね! 下手にでりゃいい気になりやがって! ブッ殺す!』
シャナム 「ふっ…これで奴らは降参しても許してくれんぞ? 全員一蓮托生でここを守るしか道が無くなったな?」
セーラ 「こ…このクソ社長…」
ユアン 「うらんでやる!」
イリオス 「どうにかなったら後でボーナスくらいだせよな!」
シャナム 「ドロシー君、君の望みどおり私は放送の自由を守るためにAKJの要求を拒否したよ?
君の望みどおりになってよかったじゃないか?」
ドロシー 「…なんか釈然としないんですが…社長のは放送倫理よりも金のためでしょうに…」
やむをえずFETVスタッフ陣はスタジオのある五階に続く階段に机や椅子を積み上げてバリケードを築くと
エレベーターの電源を切断した。五階に篭城する構えだ。
階段にはシャナムとドロシーとユアン…それと亡霊戦士2名が配置された。
外壁より繋がる非常階段はイリオスとセーラ、それに亡霊戦士1名が待機してAKJの強行突入に備えている。
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その頃AKJを束ねるラケシスはというと…朝食を終えてAKJ本部に入り一日のスケジュールを確認している所だった。
主要幹部たちはラケシスを除いて学生が大勢であり午前中はAKJ本部は閑散としている事が多い。
まずはいつものようにエルトシャンの巨大な肖像画に心からの愛情を込めて口付けをする。
次に支持者の所を回る支度をしていると電話が鳴り響いた。
ラケシス 「はい、こちらAKJ…」
オルエン 『フリージ社広報部オルエンですっ! 貴女達の行いはいったい何事ですかっすぐに止めてください!』
ラケシス 「は、はい? ちょっと事情が掴めないのだけれど…なんの話?」
オルエン 『クーデターを起こしてFETVを襲撃しているではありませんか!!!』
……ラケシスは硬直した。
考えるまでもない。そんな事を仕出かすのはプリシラしかいない。
そういえば朝のニュースを見ようとして番組が映らず妙に思ってはいたのだ。
ラケシスは抗議するオルエンの言葉も聞き流して受話器を叩き付けると全速力で駆け出していった。
ラケシス 「どこまで短絡思考なのよ! このままでは兄妹愛が紋章町の住民に悪と認識されてしまう…
バカ! プリシラの大バカ!!!」
そのプリシラは指揮設備を備えたトラックをFETVに向けて走らせていた。
言うまでもない。紋章町全土に政権掌握と新政権の樹立を伝えるためである。
演説文は全て頭に入っている。
プリシラ 「うふうふうふふふ……あはははは……」
AKJ隊員「ご機嫌ですねプリシラ様」
プリシラ 「ええ嬉しいわ。いままでの人生で最高の日になりそうなんですもの。
私は兄様を愛しています。兄様も私を愛してます。邪魔なのは世間体やくだらない法律だけ。
ならそれを変えてしまえばいいのよ」
AKJ隊員「おともします。我らAKJの理想実現のために」
すでに中央道路でAKJの兵隊が移動中のバイロン大統領を捕縛したとの連絡が入っていた。
政府閣僚の身柄のことごとくを押さえた今、これで残る第一目標はFETVのみだ。
プリシラはFETVより新憲法…とりわけ兄妹恋愛自由化関連の法を発表すれば、
今まで世間の目を恐れてAKJに参加していなかった者たちや、兄との愛を諦めて他の相手に走った妹たちも自分達を支持すると考えていた。
彼女の頭の中では妹=兄を愛する者であり、それを積極的に表に出しているか、ひた隠しにしているかの違いでしかない。
プリシラ 「ふふ…ふふふ…考えてもごらんなさい。今まで世間の目を恐れて堂々と活動できなかった妹が何人いるか…
紋章町の全ての妹が立ち上がれば新政権に反対する勢力も滅ぼせるでしょう。そして私達の革命は完成する…」
そう…今までAKJに参加する勇気を持たなかった妹も自分の下に集まる。
名前を挙げればきりがない。
リン、エリンシア、レナ、カアラ、マーシャ、ラクチェ、オルエン、エダ、パティ、クレア、デューテ、
ギネヴィア、ターナ……他にも大勢いるが彼女たちがことごとく同志として結集するだろう。
実際にはブラコンの気の無い者が大半なのだが…それはプリシラの脳内では世間体を恐れて隠している事になっている。
プリシラの車がFETV放送局に到着した時点で放送局の数箇所から煙が上がっていた。
シャナムの挑発にキレたAKJが苛烈な攻撃をかけたためである。
プリシラ 「な、何をしているの! 設備類が使用不能になったら放送ができないじゃない!」
AKJ隊員「し…しかし奴らはブラコンシスコンを変態となじりました!この罪万死に値します!」
プリシラ 「確かにそれは許せないわ…だけどそれより今は局の掌握が優先よ。状況は?」
AKJ隊員「四階と五階の間で交戦中です。数はこちらが勝っていますが狭い通路ですので一度にはかかれません」
プリシラ 「ふふ…いいわ、私にまかせなさい…」
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階段部分ではAKJ隊員たちが魔法を打ち込んでバリケードを取り除こうとしていた。
その向こう側からドロシーとユアンが間接攻撃で彼らの進撃を阻んでいる。
ドロシー 「社長!バリケードが抜かれたら社長の出番ですよ!」
シャナム 「わわわわわわわかっている。いいいいい違約金を払わないためだ」
スタジオでは一般スタッフ達により放送再開の準備が進んでいた。
いま少し時間を稼いで状況をニュースで流せば救援も来るかも知れない。
ユアン 「社長…僕達が逃げる時間くらいは稼いでよね…」
シャナム 「もはや逃げ場なんかないさ! ふっ…私のバルムンクが唸る!」
ドロシー 「それ盾じゃないですか…」
非常口でもイリオスとセーラが防衛に当たっていた。
扉を打ち壊そうとするAKJにイリオスが雷を浴びせて倒す。
だが直ぐに次の隊員が扉に取り付くと槍や剣で打ち壊しにかかった。
イリオス 「くそったれ…もう扉がもたねぇぞ!」
セーラ 「そん時はアンタがそこを塞ぐのよ!」
イリオス 「ちょっとまてや!?俺はどうなる!」
セーラ 「後ろから回復してやるから持ちこたえなさい!」
イリオス 「無茶苦茶抜かしやがって!」
もはやFETVの命運は風前の灯に思えた。
AKJはシャナムの言葉に怒り狂っており今更降参しても許してはくれないだろう。
エフラムがFETVの建物前まで辿り着いたのはこの時である。
彼は路地裏からそっと様子を伺ってみた。
エフラム 「…煙…戦いが起こっているようだな…」
周囲を冷静に観察する。あまり人数はいない。大半が建物の中に入っているようだ。
エフラム 「あれなら強引に突破もできよう…だがプリシラはいないのか?」
エフラムにはわかりようもない事だがプリシラもすでに内部にと入っていた。
エフラム 「入り口は二箇所…のようだな。正門と裏の非常階段か…突入して助けてやるべきだろうが…
それともここで張ってプリシラを待ち、奴が来たところを倒すべきだろうか?」
続く
1 正門から突っ込む! 男なら正攻法!突撃だ!
2 非常口から突入する! 裏の方が敵が少ないに違いない。ここから中に突入するぞ!
3 様子を見る プリシラが来るのをひたすたここに隠れて待つか…
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348 :助けて!名無しさん!:2011/02/15(火) 20:03:52 ID:M0Mq77GV
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