ひな祭りな流れをぶった切って前スレの流れをぶち込みますよ猿渡さん!!
『剣聖VS神将』
アイク「というわけで噂の剣聖に会いにやって来た」
カアラ「なにが「というわけで」なのかわからぬが
兄者に用事というのなら呼んでこよう。しばし待て」
アイク「わかった」
カレル「君かな? 私に用事があるというのは」
アイク「ああ、グレイル工務店のアイクだ。今日は修行のためにあんたに会いに来た」
カレル「兄弟家のアイク…だね。噂は聞いているよ。
町内でも最強の名が上がるほどの剣士が私のような老いぼれになんの修行をするんだい?」
アイク「あんたの剣の腕の噂は聞いている。どんな剛剣もあんたにかかっては全く歯が立たないと」
カレル「それは買いかぶりだよ。しかしわざわざこの家まで足を運んでくれた事だし
もてなしの代わりになるとは思えないけど一手交えてみることにしようか。
カアラ、ちょっと出てくる
多少時間がかかるかもしれないから客人用のお茶の用意をしておいてくれないかな」
カアラ「分かりました」
カレル「さて、さすがにここで君に剣を振るわれると家に被害が出そうだからね。場所を変えよう」
アイク「ああ、かまわない」
…アイクとカレル移動中
フィル「母上! 私も後学の為見学してまいります!!」
バアトル「待ていフィルよ!! 最強を目指す漢同士の戦い、この父もしかと見届けようではないか!!
というわけでカアラ! おぬしも来るのだ!!」
カアラ「いや、私は兄上から茶の用意を…」
バアトル「ええい!細かい話はいい!! 共に最強を目指す漢ならこの対決を見届ける義務があるはず!!!」
カアラ「…私は女だ。 まあいい、支度が終わったら私も向かうとしよう。
二人とも巻き込まれないよう注意するのだぞ」
フィル「ハイッ!!」
バアトル「よし、ゆくぞフィルよ!!」
数十分後
カアラ「さて、意外に時間を食ってしまったがまだ続いておるの…か?」
カアラが目にしたのは無造作に剣を下げ、穏やかな笑みをたたえたままのカレルと
対照的に剣を正眼に構え、ポーカーフェイスを崩さないアイクの姿だった。
両者とも全く動かないが静と動、お互いの闘気が絡み合い周囲の雰囲気をすべて飲み込んでいるかのようだ。
近くを見ると息を飲んで見守るフィルトバアトルの姿がある。
カアラ「おい」
フィル「ヒィッ!!」
バアトル「うおぁ!!!!」
カアラ「まさかとは思うが仕合始めてからずっとあの状態なのか?」
フィル「は…はい! でも動かないだけであのお二人は何十合の斬り合いをしているような…そんな雰囲気です」
バアトル「ウ…ウム。ワシも難しいことはよくわからぬがあの二人が凄まじきばかりの域で戦っていることは分かるぞ!!」
カアラ「む…」
二人がカアラに答えていた刹那、目にも止まらぬ速さでアイクの剣がカレルを襲った。
バアトル「ぬぉ!!」
フィル「叔父上!!」
だが確実にカレルを捉えたかのように見えた剣は虚しく宙を切る。
そして最小限の動きで攻撃をかわしたカレルの剣が今度はアイクに向かって最短距離で放たれる。
ガキッ!!
しかしその攻撃もまた、素早く防御の姿勢にシフトしていたアイクの剣によりガッチリと阻まれた。
アイク「かなり、やる」
カレル「…噂では剛剣の威力ばかり耳にしたが、
君の剣の真の強さは基礎から徹底して鍛えられた剣技の賜物だね」
カレルの言葉が終るや否やアイクが絡んだ剣を一気に振り抜く。
カレルはそれに逆らわず後方に飛びつつ反撃の体制を整えようとするが
それより速くアイクの攻撃が怒涛のように打ち込まれる。
カレル「なるほど…これは!」
だがカレルはその全ての攻撃を最小限の動きで自らの剣で攻撃の軌道を変え受け流し
わずかにできる隙を狙ってアイクに必殺ともいえる攻撃を放つ。
カアラ「兄上の攻撃は全てが後の先を取り、相手は為す術もなく食らうのが普通なのだが…」
カアラが呆れるほど正確な動きで後の先を取られるにもかかわらず
カレルに攻撃を繰り出し続けながら自らに放たれる攻撃を防御するアイク。
お互いの直近で一秒にも満たぬ鍔迫り合いの直後、同時に距離を取る二人。
カレル「これは私のような年寄りには少々荷が勝ちすぎる相手だね」
アイク「そうか? 俺にとってはこういう戦いは新鮮で楽しいんだが」
カレル「やれやれ…」
アイクの相手がまともに務まる相手は大概人外級の身体能力の持ち主であり
また、それらと互角以上に戦うからこそ町内最強クラスの名をほしいままにしているのだが
純粋に技術を競える相手で言えば実際のところ漆黒の騎士くらいしかいない。
その点柔の剣を極めているとも言えるカレルの相手は
アイクにとってなかなか体験できる機会ではない。
カレル「さて、申し訳ないが次の一合でお開きにさせてくれるかな?
さすがに体力が限界でね、帰ったらお茶にしよう」
アイク「わかった。最後にするのなら全力で頼む」
カレルが初めて剣を両手に持って構える。
アイクは変わらず正眼の構えを崩さない。
カアラ「…」
バアトル「…」
フィル「…」
見守る三人も息を呑む中、再び周囲が静寂になる。
カレル「……」
アイク「…ぬうん!!」
三人が見たのはコマ落としのような動きでアイクに剣を振り下ろしたカレル。
そして構えていた剣で薙ぎ払いを放ったアイクだった。
フィル「い…一体今のは!?」
バアトル「ぬぉぉ…わしが瞬きをした間に何が起こったというのだ!!」
カアラ「…無拍子…」
カレルが放ったのは一切の殺気も予備動作も存在せず、斬られた相手がその後になって気づくという
ある意味究極の一撃。
そしてそれに反応できたのもカレル以外ではアイクだけであった。
カレルの頭上を薙いで止まったアイクの剣
そしてアイクを両断していたはずの位置で止まった”折れた”カレルの剣。
カレル「武器が壊れてしまったか、私の負けだね」
アイク「いや、もしその剣がもう少し丈夫であれば俺は斬られていた。俺の負けだ」
カレル「では間をとって引き分けということにしておこうか」
アイク「ああ、そうだな」
カレル「さて、だいぶ待たせてしまったようだねカアラ。戻ってお茶にしようか」
カアラ「わかりました、茶の用意は済んでおりますゆえ戻るといたしましょう」
フィル「叔父上! アイク殿! 素晴らしい勉強になりました!! 是非私にも後ほど一手ご指南いただきたく!!」
カアラ「やめておけフィル、アイク殿は相手が誰であろうと手加減はせんと聞く。治療の手間をかけさせるな」
バアトル「ぬおおぉぉぉぉぉ!! なぜわしはあの時瞬きをしてしまったのだ!! 一生の不覚!!」
~バアトルの家~
カレル「アイク、君はなぜ強さを求める?」
アイク「理由がないといかんのか?」
カレル「例えば名声であったり復讐であったり、大抵人が強さを求めるのにはそれぞれの理由があるからね」
アイク「あんたはどうなんだ?」
カレル「私は……そうだね。私はかつて人を斬りたい…人を斬る事そのものが人生の意味となっていた。
今はただ、私にとっての剣とは父なる空の声を聞き母なる大地に育てられた物。
風をなぎ、気と調和するというものが紆余曲折の果てに私が見つけた、私なりの剣の道だった。
だから理由があって求めたのではなく、辿りついたといったほうが正しいのかもね」
アイク「そうか、やはり俺にはわからん」
カレル「わからない?」
アイク「そうだな。もし俺があんたの言う境地にたどり着いたとしてもきっと俺はその先を見たいと思うだろう。
俺は自分がどこまで進めるのかそれがみたい。強いて言うならそれが理由かもしれん」
カレル「…なるほど。アイク、きっと君はいつか私なんかを超えて誰も見たことがない境地に分け入ることだろう。
柔も剛も全てを超越した境地に。
だがそれはきっと孤独で険しい道だ」
アイク「覚悟ならで来ているつもりだ」
カレル「ははは、そう言うだろうと思っていたよ。
毎回さっきのような仕合をするのは勘弁願いたいけど、何かあればまた来るといい」
アイク「ああ、ありがとう。あんたと仕合えて得たものは多かった。決して無駄にはせん。
じゃあそろそろ帰ることにする、お茶まで出してもらって悪かったな」
カアラ「何、気にするな。なかなか良いものを見られた。また来るといい」
バアトル「ぬう、難しい話は聞いておると頭が痛くなる…一体何の話だったのだ!!!」
フィル「今の私では叔父上やアイク殿と仕合うにはまだ未熟…!! これからも精進しなくては」
~兄弟家~
アイク「というわけで剣聖と仕合ってきた」
ミカヤ「というわけでじゃないわよ、いきなり他所様の家に押しかけて仕合を挑むのはしっこくさんとこだけにしなさい」
マルス「それにしても意外だね。カレルさんて『剣魔(笑)』のイメージがすごくあるから
普通にアイク兄さんに星にされると思ったのに」
アイク「そうなのか? それはそれとしてあの感覚を忘れんうちに練習しておきたい。付き合ってくれ」
リーフ「え、ちょ、なんで、なんで僕が襟つかまれて引きずられてるの!?」
アイク「仕方がないだろう、エフラムとヘクトルは出かけていていない。それにお前は自分で思っているよりも弱くない」
リーフ「イヤーー!! このひとでなしー!!」
カレル「それにしても強かったね、あの若さと強さで進化し続けているというのが今後とても楽しみだ。
私も若い頃あれほどに一途に『強さ』を求めていればね…」
~終わり~