エフラム「…………」
サラ「……」ゴチゴチ
エフラム「…………」
サラ「……」ツンツン
エフラム「…………」
サラ「…………」ガンガン
エフラム「……おい」
サラ「あ、起きた」
エフラム「……妙に硬いもので叩かれたり突かれたりすれば嫌でも起きるぞ。何だよ朝から……というか何で人を攻撃してるんだ?」
サラ「この箱? チョコに決まってるじゃない、今日はバレンタインだし」
エフラム「それはいいんだが……別にこんな朝早くじゃなくても。渡される側の状況とか迷惑も考えてだな……」
サラ「失礼ね、私だって致命的に駄目なこととそうでないことの区別くらいできるし」
エフラム「やっていいことと悪いことじゃないのか……」
サラ「だから区別ならちゃんとしてるって、今回だってボツにした考えが結構あるんだから」
エフラム「ほう、例えばどんなのだ?」
サラ「そうね……まず、私の等身大チョコを用意するとか」
エフラム「そんなの渡されても食べきれないぞ」
サラ「それに、そんなの用意するのにとんでもない手間がかかるし、渡されても兄様も困るだけなんじゃないかと」
エフラム「まあな。大体、お前の形したチョコを頭からバリバリ食べるとか想像しただけでもシュールだ」
サラ「他には……私の身体をチョコでコーティングしてプレゼント、とか」
エフラム「……それって危険じゃないのか?」
サラ「うん、危ない。もし実行できたとしても、全身のチョコを食べきるまで時間がかかりすぎるのでこれも却下」
エフラム「ろくなのが無いじゃないか……」
サラ「それで、仕方ないから普通のチョコにしたの」
エフラム「仕方なくじゃなくて普通はそうするだろ」
サラ「でも普通じゃちょっとつまらないよね……あ、私に口移しでチョコを食べさせる権利もあげようか?」
エフラム「……まあ、それでいいならな」
サラ「……え?」
エフラム「まあ、年に一回のイベントだしな」
サラ「…………」
エフラム「……いや、たまには俺も反撃を試みたりしてだな」
サラ「…………」
エフラム「……悪い、冗談が過ぎた」
サラ「……いいよ、別に」
エフラム「いや、だからそれは冗談で……」
サラ「何? 自分で言ったことの責任を放棄するの?」
エフラム「それは……わ、分かったよ」
エフラム「とりあえず、どんなチョコなのか見せてもらうかな……開けていいか?」
サラ「そんな大したものじゃないけど……普通の生チョコだし」
エフラム「手作りなのか?」
サラ「まあね。ほどほどに頑張って作ったから」
エフラム「ほどほどなのか……」
サラ「私って自分で言うのもあれだけど、覚えるのは早いから。そんなに苦労しなかったけど割と上手く出来たと思う」
エフラム「……その出来がいいのを朝早くから渡しに来てくれたのか?」
サラ「……そ、そんなたまたま出来がいいのを早く渡したくて仕方なかった落ち着きのない奴みたいに言うの止めてくれない?」
エフラム「……いや、まあ……いいけどな。じゃあ一口……」
サラ「……どう?」
エフラム「……美味いな」
サラ「……でしょ? 私も自分で食べて……っ!?」
エフラム「…………」
サラ「……ん……っ……!?」
エフラム「…………」
サラ「……いきなり……」
エフラム「……勢いでやらないと躊躇するだけだと思ってな」
サラ「…………」
エフラム「……悪い、怒ったか?」
サラ「……別に」
エフラム「……そうか。……そ、そうだ、自分で作ったチョコの味はどうだ?」
サラ「そんなの今更確認するまでもないから、何回も味見してるし」」
エフラム「苦労しなかったのに何回も味見したのか?」
サラ「……いいじゃない、何回味見しようが私の勝手でしょ?」
エフラム「……まあ、そうだけどな」
サラ「……ねえ」
エフラム「何だ?」
サラ「さっきの……いきなりすぎてよく分からなかったから……もう一回」
エフラム「…………」
サラ「……ダメ?」
エフラム「……毒を食らわば皿まで、か」
サラ「……毒じゃないし。ていうかダジャレ?」
エフラム「いや、そんなつもりは……ダジャレになってしまってるのか?」
サラ「もう、そんなことどうでもいいから」
エフラム「お前が言ったんだろうが……ほら、こっち向け」
サラ「……う、うん」
サラ「あのさ」
エフラム「何だ?」
サラ「分かってるだろうけど……来月のお返し、ちゃんとしてよね。ここまでさせてあげたんだから最低100倍はないとダメだからね」
エフラム「100倍って……何時間する気だよ」
サラ「べ、別に同じことをしろなんて言ってないでしょ。ちゃんと頭使ってよね」
エフラム「分かったよ。やれやれ……今から考えないと大変だな」
終わり