閑話 「あの日あの時」
マルス「ククク…今の僕はアシュラすら凌駕する存在だ」
リーフ「いきなりどうしたのマルス兄さん?移動力の話?…というか胡坐掻いて光のオーブ載せてるだけだよねそれ」
ダダダ
リン「スーに何吹き込んだマァァァルスゥゥゥ」デデーン
マルス「げえっ!リン姉さん」
オコルトオトコガニゲマスヨ…ヨケイナオセワヨ!!カクゴシナサイ…ギャーコノヒトデナシー
閑話休題
第二章が長くなりすぎたので前半だけ投下します。
※注意
この話にはKINSINネタが含まれています。
このネタが苦手な方とシグルド兄さんはNG登録をお願いします。
第二章 前半
学問の最高学府の一つグラド大学、その正門でエフラムはとある人物を待っていた。
「むぅ…早く来ないだろうか」
日が傾きかけているとはいえ、研究室やサークル活動で正門を通る学生は少ないわけではなく、
通り過ぎる学生に好奇の目で見られているためか非常に居心地が悪い。
願いを込めて呟いていると
「ごめん、待たせちゃったねエフラム」
エフラムの切実な願いが天に届いたのか待ち人リオンが姿を現し、
二人はようやく肩を並べ、世間話をしながら大学内を移動する。
「リオン、少し遅かったな…何かあったのか?」
「意外と距離があったし…徒歩だったから余計にね」
「それよりもエフラム、ちゃんと動きやすい恰好で来てくれたんだね」
リオンの言う通りの格好だが、エフラムがなぜ運動着で来ているのかといえば、
リオンに頼まれたからでありそのリオン曰く、
グラド大学の武道館が改装されたことにより、魔導書を使った模擬戦が可能になったらしく、
魔法職が苦手とする槍装備の相手の対策を練りたいと相談され、その相手として指名されたという訳だ。
最も、武道館の使用は予約制ではあるが。
「しかし、別に今日でなくともよかったのではないか?お前もエイリークともっとデートしたかっただろう」
「……まあそうしたいのも山々なんだけど…Eドリンクの改良でなかなか時間が取れなくて」
「…じゃあ僕は着替えてくるから。武道館はこの先だよ。鍵はこれね」
爆発的なヒットを記録したEドリンク、その開発者がリオンであることを改めて実感し、
その忙しさの発端が自分の相談なのだからある意味申し訳ない。
研究室へ着替えに行くリオンの背に謝罪の念を送り、彼が指し示した方向へ歩き出す。
三分ほど歩くと夕日に照らされた武道館に辿り着き、鍵を開けて入り口からロッカールームに入る。
既に運動着を着ているため、ロッカーに仕舞うのはタオルと身分証を入れたバッグくらいだ。
準備運動をしながらリオンを待ち、しばらくすると魔導師の服を着たリオンが武道館に姿を見せる。
「また、待たせちゃったね」
「気にするな、ちゃんと有効活用している。それよりリオンも準備運動しておいたほうがいいぞ」
待たせたことを再度詫びるリオンだったが、気にするなと返し、
自分は模擬戦の前に精神を落ちつけようと、壁際に置いてあったパイプイスに座り瞑想していたが、
「エフラムはエイリークのことどう思っているの?」
近くで準備運動をしているリオンが突拍子もない質問を投げかけてくる。
その意図は掴めないが一応答えておくべきだろう。
「前にも言ったが、エイリークは俺の…」
「大切な妹……だったっけ?」
自分の答えに被せるように、準備運動を終えたリオンが口を開く。
「何だ…憶えているなら聞く必要は…」
「さあ、そろそろ始めようか」
もう聞くことはないと言わんばかりに会話を打ち切るリオン。
らしくない友人の言動に困惑しながらも、武道館に用意されている鉄の槍を持ち配置につく。
相対するリオンが持つのは、表紙の色から察するにファイアーの魔導書だろう。
「行くぞっ―――」
「……」
槍を構え試合開始の確認をとるが、リオンは未だ沈黙を守り続けている。
やはり様子がおかしい、
「リオン…どうしたんだ。今日のお前はおかしいぞ」
「具合でも悪いんじゃ…」
「エフラムは僕が今日何していたかわかるよね」
心配して声をかけてみたが、彼からの返事はこれまた脈絡のないものだった。
とりあえず話を続けてみる
「ああ…リオンとエイリークからも聞いたよ、デートしていたんだろう」
「そっか…エイリークからも…か…」
どうやらエイリークという名前に琴線があるらしい。
「エイリークと何かあったのか。まさか喧嘩でも…」
「今日エイリークと一緒に買い物しているときに気付いたんだ…」
「エイリークは僕やラーチェルと一緒にいても、偶に僕たちじゃない遠い誰かを見ている」
突然語り出すリオンだが、エフラムはこれ以上余計に反応することなく聞き逃すまいと聞き役に徹する。
「その誰かがね……ようやく分かったよ…それは……エフラム…君だ」
「な、何を言って…」
あまりの展開に冷静さを欠いたのか口を挟むエフラム。だが、
「待ち合わせ場所に来たエイリークが持っていたバックを似合っている、と褒めたらね…」
「『兄上に誕生日プレゼントで貰ったんです』って笑顔で答えてくれたんだ…」
「僕たちでもまだ見たことのない"最高"の笑顔をね」
「……」
エフラムの動揺を気にすることなく言い切ったリオン、それとは裏腹にエフラムは言葉が出なかった。
未だ無感情の顔で告げられた事実の意図はようやく掴めたが、どう答えればよいのか。
「そういえばエイリークに聞いたけど…エフラムはこんな事言っていたらしいね」
「『俺達は兄妹だ、先には進めん』って、それは本当に君の本心かい? 」
「……」
無情にも矢継ぎ早にリオンは二の句を継いでくるが、言い切ったということか再び口を閉じる。
「俺は…………」
何か言わなくてはという思考は働くものの、告げるべき言葉が浮かんでこない。
「……じゃあさ、エフラム」
言葉の出ないエフラムに痺れを切らしたのかリオンは一つの提案をしてくる。
「待たせてばっかりだったけど、"これ"で語り合おう」
そうして突き出すのは一冊の魔導書、それだけでエフラムには十分に伝わった。
「…すまないが、そうさせてもらう」
短く答えるとエフラムは槍を構え、リオンは魔導書を開く。
「行くぞっ―――」
「行くよっ―――」
ほぼ同時に放たれた掛け声とともに、夕焼けに染まる武道館で戦いの火蓋が切って落とされた。