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Last-modified: 2017-02-16 (木) 20:30:05

スー「兄さんはどういうつもりなのかしら。マルスにも贈ってみたらどう…って?」
首をひねる。口数少ない兄は時々考えの読めない時がある。
ロイには既に渡した。そうこうしてるうちにバレンタインも終わった。
普段さほど行き会う相手というわけでもないマルス。
親友リンの弟であり、片思いを抱いてる相手であるロイの兄である。
そして一応顔見知り。それ以上でも以下でもない。
何の気無しに買ったたけのこの里を手に、まあなんか行き会いそうもないし、自分で食べちゃうかと箱に手をかける。
ささいなことだがスーはたけのこ派だ。
その時だった……

 

彼が目の前にワープアウトしてきたのは。

 
 

理由は大した事ではない。
アホ神ユンヌのイタズラだ。けっこう構ってちゃんのあの鳥が家の中に仕掛けてたワープトラップ踏んじまったのだ。
あっと思うのも束の間、気が付いたらどっかに飛んでいた。
真っ暗だ。何も見えない。
マルス「なんだよもう…あのアホ…どこだよここ…なんか柔らかい……」
スー「…………………なんでもいいけどどいてくれる?」
マルス「…はぇ?」
間の抜けた声が出た。
はい。その手のコメディものの定番的状況でした。
ワープアウトしたマルスはたまたま偶然信じがたい天文学的確率の結果。たまたま偶然その場にいたスーの胸に顔を埋めていた。思いっきり。
豊かだ。雄大だ。大自然の恵みだ。豊穣だ。リンに近い…げふん。
爽やかな風の香り、草の香り、そして地の恵み。その大きさ、柔らかさにマルスはこの世界が神に愛される祝福された地であることを感じ取った。
大きさは希望、形の良さは感動、そしてその人類の希望が自分の顔を受け止め…
民族衣装を大きく押し上げる部分が柔らかくひしゃげてその感触を伝えてくれている。これだけでご飯5杯は食える。
マルス「ご、ごめんっ……こ、これじゃクロム兄さんだ……」
名残惜しくも後ろ髪惹かれる思いで身を離す。
兄ならばあたふたしつつも未練がましく粘って引き延ばして少しでも長く感触を味わい、そしてルフレさんからビンタをもらうところであろう。
マルスはそこまでムッツリにはなれなかった。
…ファルシオンに血が集まるのだけはどうしようもなかったが。
なんにせよこんなんしてしまったら嫌われてしまっただろうか。などと軽く落ち込んでいたが。
相手はきょとんとしつつもなんか涼し気というかさして気にするでも無い感じだ。
それはそれで異性として意識されてなに気がして複雑である。
ちょっと何を考えてるか掴めないとこのある娘さんではあるが。
異民族ゆえにか表情の読みにくさもある。
…意外と向こうも同じような事をこちらに思ってるのかも知れないがそれは伺い知れない。
さてどうしたものかと思ったのも束の間。
スー「ん」
…の一言でたけのこの里が差し出された。
いや、もうちょっと何か言おうよ。
マルス「…え…くれるの?」
こくんと頷かれた。肯定の意だろう。
スー「一日遅れだけど」
と、付け加えられる。
え、つまりそういう…今日は15日だし。
ものを考えると義理の類かもしれない。間違っても本命ではないだろうが。
とはいえ義理くれるくらいには…だし。
ありがとうと応じるとスーは何度か小さく頷いた。
そして、馬の世話があるからと行ってしまった。

 

…しばらく呆然としたマルスは家に帰り…箱を前に部屋で悶々として整理されない気持ちのままいろんな表情を浮かべるのだった。
同じく悶々としたファルシオンもそのまま…ごほごほん。

 

終わり