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Last-modified: 2017-02-24 (金) 21:10:32

クロム「……よしっ…片付けOK。誰を呼んでも問題無い好青年の部屋だな。うん」

――――クロムの部屋。
彼は一仕事終えたとばかりに額を拭った。そう、今日はこれから訪ねてくる人がいるのだ。
ゆえにエロ本やらAVの類を隠していたのだ。ベッドの下とか引き出しの中に。来るのが男だったらいちいちそんな事をする必要は無い。
つまり―――――――

 
 
 

ルキナ「ごめんくださーい」
クロム「ああ、いらっしゃい。座布団はそこな…コーラでいいか?」
ルキナ「どうもありがとうございます。お父様」

 

はい。娘でした。
ルフレも何度か招いた事はあるのだが今回は違う。

 

クロム「ルキナと二人ってのも久しぶりな気がするな。最近学校とかどうだ?」
ルキナ「学業も剣もそれなりに。少なくとも恥ずかしい成績はとってません」
クロム「ん、そうか」

 

親子の会話と言えば会話だ。しかし一般的な親子かというとそれも違う。
そりゃまあそうだろう。歳も5歳くらいしか離れていないしクロムはまだ独身。ついでに童貞。
そういう内からすでに成長済みの子供が未来からやってきても親父らしく…というのはなんぼなんでも無理というもの。
どうしても接し方は兄貴分みたいな感じになる。理屈じゃ自分の娘とわかっちゃいるし大事な存在である事に違いはないが。
一方ルキナにとっても未来のクロムは当然っちゃ当然だが親子ほどに歳の離れた中年のおっさんだった。
自分の知らない年代の若クロムであるがゆえにどうしても接し方の変わるとこがある。

 

クロム「で、話があるって言ってたが」
ルキナ「ええ…ん……お母様の事なんですが…」
クロム「まだ決まらんですまん…やっぱり落ち着かないか?」
ルキナ「急かそうってつもりはないんです。ちょっと…思う事がありまして」

 

今だルキナの母は未定。クロムとしてはまず恋人、ついで結婚、そういう段階を踏んでいきたいもんだが…
またそのための努力もしているつもりだが今だそれは実っていない。はよ彼女ほしい。
傍からみりゃもうさっさとくっついちゃえよお前ら、というくらいルフレとは親密なのだがとっても親しい半身と恋人の間にある最後の線を突破できてない感じだ。
ともあれルキナの話を聞こう。母の事で思う事とはなんだろうか。
……保育士さんの方の話じゃ一時期ンンの存在がやばくなったことがあった。
よもや俺が喪に留まってるばかりにルキナにも?
小さく息をのみ…話を聞く心構えを整える。

 

ルキナ「…順を追ってお話します。私…親子3人、いえ、この時代に生まれるべき赤ちゃんの私を入れると4人。それでいろいろネタが…温かな親子の関係があると信じて未来からやってきました」
クロム「まて。メタが混じりつつあるぞ」
ルキナ「そこも含めて、なんです…ですが…覚醒解禁直後こそ出番のあった私ですが今やすっかり空気…」
クロム「う…やっぱり夫婦揃わないと…独身男と娘、じゃなんだかネタ的に妙…だから…なのか?…す、すまん。なるべく早く…」
ルキナ「そこで…私は思ったのです。セルフでいいのでは…と」
クロム「セルフ?なんだそりゃ」
ルキナ「お父様がお母様を射止められないのならば!自分がお母様になればいいと!」

 

クロム「……………………………は?」

 

何を…言ってんだ…この娘。

 

ルキナ「あ、ごめんなさい。説明が必要ですよね?」
クロム「……なるべくわかりやすく頼む」
ルキナ「ほら、当たり前のように同じ時代に二人の歳の違う私がいたりするじゃないですか?原作で。私と、赤ちゃんのほうと」
クロム「…まあ、ほんとは当たり前じゃないんだろうけどな」
ルキナ「と、いうことはタイムパラドックスがどうとか小難しい事はこの際いいのです」
クロム「SF入ってきたな」
ルキナ「それで……この間、エフラムおじ様がンンをお嫁さんにしましたでしょう?」
クロム「…おい、まさか…」
ルキナ「となると親子でもよいのでは…と!産んでもらうのではなくもう自分で自分を産む。いわばセルフ出産もありなのではないかと!お父様と!」
クロム「………あのだな……突っ込ませてもらうが…ンンはエフラムと知り合った時点じゃ親子じゃなかったんだし、後々ノノ繋がりで時空がアレして後天的に親子になったんであって…だな。
    俺らとは事情が違う…というか自分で自分を産んだりしてないだろ」
ルキナ「無茶苦茶は承知してますが…覚醒考察してますといろんな時空とか平行世界とか複雑な事になってますし…
     そんな中の一つとして試してみてもいいのでは…ないでしょうか」
クロム「だからな…そもそもシグルド兄さんが激怒するぞ。と、いうか自分が母で自分が娘で、とか可能なのか?
    俺に置き換えてみても俺の親父が俺で俺の息子が俺とか想像不可能だし、やはりな…」
ルキナ「可能かどうかわからないから試すんでしょう!家族になりたいんです!もう空気は嫌なんです!ずっと、ずっと待って…待ってるのにお父様ときたら!」
クロム「う…まだ結婚できないでいるのはすまないと思ってるが…」
ルキナ「わがままはわかってます。私のエゴなのも…けど…もうこれくらいしか私には思い付きません」
クロム「お、落ち着け。深呼吸してだな!」
ルキナ「ですから…そう、これで私も生まれてちょびっと形は変わりますがファミリー形成です」
クロム「ま、待て…ルキナ!お前は取り乱してる!」
ルキナ「分かってますお父様が童貞でいらっしゃることは。作り方に自信は持てないかもしれません。わ、私だって初めてですが…が、頑張ってリードしますから!」
クロム「娘に言われると傷つくぞ!?待て!待てってば…脱ぐな!?」
ルキナ「もう一つ分かってます。お父様が巨乳好きだって。エイリークおば様に似た私ではそういう気は起きないかも知れませんが…」
クロム「それ以前の問題だってば!?とにかくだな!落ち着いて…」

 

と、とにかくルキナがたくしあげた上着を戻してやろうとその身に手をかけ…気が付いた。
ものすげー熱っぽい事に。
クロム「って、なんじゃこりゃ!? 病院行くぞ病院!」
ルキナ「ま、待ってください…話はまだ……」
ぐずるルキナを無理やり抱え上げそれいけ病院。
病気だの体調不良だのはライブや傷薬じゃいかんのだ。

 
 

ユミナ「インフルエンザね。しばらく学校は休み。薬飲んで家で寝てなさい」
ルキナ「…はい…」
ユミナ「んじゃ家に送るわ。はいワープ」
便利なもんである。杖代は医療費の内に入ってしっかり請求されるが。
保険は効くから安心です。
クロム「すまん、ありがとうな」
魔法陣でルキナが飛んでくのを見送るとちっこい看護婦さんに礼を言う。
確かこの娘、小学生だったよな。就労とかどうなってんだろうと思ったがまあ細かい事はよかろう。
ユミナ「…で、診療ん時にあらかた話は聞いたけど」
クロム「……う」
いろんな意味で人に聞かせられん話だ。
だったのだがテンパっていらんことまでしゃべってしまった。
ユミナ「……体調不良で譫言を口走ったとかちょっと疲れててわけわかんない事言っちゃった…で片付ける事もできるけど…
    あの娘、溜まってたもんはあるわよ。真面目な奴って発散下手なんだから。こういうのはいい加減で不真面目な方がある意味返っていいものだし…
    しっかりしたげなさいよ。あんた、ルフレさんの事でいっぱいいっぱいになっちゃって、周りの事、見えてなかったでしょ」
クロム「ぐうの音もでん……ルキナに不安と…寂しい思いをさせていた…んだろうな」
ユミナ「わかったらラッキースケベがどうとかでヘタレてないでさっさと決めて家族…なったげなさいよ。いいこと?」
クロム「ああ……」

 

………彼が去った後…カルテを眺めながらユミナは独り呟く。

 

ユミナ「ヘタレてないで…か……ユベロだってヒノカ先生とバレンタインに贈り物交換したのに…」

 

静かに漏れたのはため息だけだった。

 
 

シグルド「……………………未遂か」
ラケシス「発作的に剣を投げなくなっただけマシ、かしら……」