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Last-modified: 2017-03-04 (土) 22:33:14

コンビニ宅配や出前。
便利なものである。外に出かけなくても夕飯が届く。
一昨日はローソン(外伝)、昨日は流星軒。
家じゃ寝るかソシャゲするかくらいしかしてないのでさして腹も減らない。
一日一食+お菓子でも抓めば充分だ。
…とはいえそれでもその一食を欠けばさすがにお腹も空くわけで。
ヴェロニカ「…お腹空いた…」
さ、何か頼もうとばかりにネットで注文しようとしたその時だった……
回線が切れた。
ヴェロニカ「!?」
そういえば回線工事が入るとかメールが来てた気がする。
しくじった。これでは注文ができない。
ヴェロニカ「…なんてね。PCがだめでもスマホがあるもの」
……無かった!
ヴェロニカ「!?!?」
………ちょっと貯めこみ過ぎたコンビニ弁当の空箱や散らかしたコミックやらゲームの箱。
かくもとっ散らかった部屋のどっかに置きっぱなしにしたらしい。
この中から見つけ出す事は至難。
着信でもあれば音がしてわかるが、ここ2、3年。電話をしたのは流星軒に出前頼んだ時くらいだ。
人から電話がかかってくるはずもない。メールも来ない。
……腹が減った…お腹が鳴いた……

 

マークス「今日もシフトに…と、言っても私くらいしかおらぬが」
そこにやってきた先生。
人の家の事に首突っ込もうと家の従者のバイトに応募してきた。
継母もよく確認もしないでポンと採用しちまった男だ。
何かというと学校に来たまえ、とか、さっぱりやってない勉強を教えようとしてきたりとかのうるさい男だが、
従者の仕事はそれはそれできちんとする。学校の仕事も多忙なためさすがに毎日来るわけではないが。
ヴェロニカ「いつもならウザいけど今日はいいところに来たわ。今すぐコンビニにお使い行ってきて」
マークス「む?…ほぅ…どうしたのかね。いつもなら自分で注文するのに」
ヴェロニカ「かくかくしかじかでネットの大海から遮断された絶海の孤島状態なのよ。さ、早く…」
マークス「おっとすまない。今、父上が体調を崩して寝込んだ気がする!…看病せねばならぬから今日は早引けさせてもらうよ。では」
ヴェロニカ「は……!?」
マークス「……もう大分家から出ていないだろう?」
ヴェロニカ「…記憶にあるだけで三か月くらいは…そ、そんなのどうでもいいでしょ」
マークス「夕飯食べたければ自分で外に出て買ってくるしかないな。いや残念だ。私が今日勤務できれば用意してあげられたのだが勤務時間外ではそうもいくまい」
……あからさまだ。
ヒッキーの自分を少しでも外に出そうとしてるのだ。
うざい。腹立たしいし忌々しい。相手の意図に載るような気がするのも悔しいが…
そこを曲げて頼んだりもできない。彼女はプライドが高かった。
ヴェロニカ「…ふん」
どうせ近所だ。歩いて5分かそこらだ。ほんのちょっとだ。
たしか記憶にある限りでは3か月くらい前には自分で出かけた…はずだ。
その時と同じようなものだ。
少し悔しいが胃は空腹を訴えてくる。彼女はあえて教師の方を見ないようにして玄関へと向かって行った。

 

…そして主の居なくなった部屋で教師は軽く首を振った。
不摂生を凝縮したような部屋の中、カーテンを二重にかけて外界からの光を拒んでいる部屋。
ちっとも姿を見せない、マークス自身面識の無い継母。
…根気よく、時間をかけて取り組まねばな…
その時である。デフォ設定のまま一度も変更されてない着信音が部屋のどこかから聞こえてくる?
マークス「む?」
不躾とも思ったが気にかかるものであり…
ゴミの中から音源を探し当てた。
…よもや彼女に連絡を取ろうという者がいるのか?
……スマホの画面には登録された名……義弟エフラムの名が表示されていた。
マークス「…着信ありか…」
なんでもいい。他愛の無い話でもしてやってほしい。
彼女が戻ったらどんな顔をするだろうかな。

 

ぎ ゃ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ ………………………………

 

思いを馳せたのも束の間。
玄関の方から悲鳴が聞こえてきた。
マークス「な、何事!?どうしたのかね!」
全力ダッシュで駆けつけると…

 

ヴェロニカ「目が…目がぁーーーーーっ!!!」
引き籠って夜型生活してる彼女には日の光は眩しすぎたようだ……
日傘でも探して来よう…
ヴェロニカ「もうやだ…目、痛い…太陽嫌い…大嫌い…お腹空いててもいい。回線復旧まで待つ…」
マークス「…急かしはしないが…」
本当に腰を据えてかからねばなるまい…