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Last-modified: 2017-04-21 (金) 23:22:21

ジル「この辺りの筈なんだけど……」

 

本日はエコーズの発売日。昨今は店ではなく宅配で購入する人も多い。
必然運送屋のジルは今日は死ぬほど忙しかった。あっちにこっちに飛竜で飛んではエコーズを届けている。
特に運送屋泣かせなのは人里離れた一軒家とかそういうとこから注文貰った時だったり、住所のよくわからん配達だったりなのだが…
今回は極め付けだった。
バレンシア地区、アルム里村長邸のアルム氏なる人物からエコーズ&アルムセリカのアミーボの注文である。
そんな奴知らん。それはまあいい…いいが…アルム里ってどこよ?
地図に見事に乗ってない。そんなとこにどうやって配達しろというのだ。
それでも人づてに情報集めて…深い深い森の上空を竜で飛ぶことしばし。
どうも空中から村を見つけるのは難しそうだ。やむを得ず着地し、周囲を探り……

 
 

そして遭難した。
ジルは泣いた。なんで人様にゲームの一本配達するのにこんな目に合わなくてはならんのだ。
日は暮れて暗くなり、会社に連絡取ろうにも携帯は見事に圏外、森の中では時々魔人やゾンビに遭遇して
斧振り回して追い払った。マミーに出会うというラッキーもあったがそれはそれ。
腹も減ってきた。ほんとならとっくに仕事終わって家に帰ってカプ麺でも食いながらのんびりしてるはずなのだ。
いや、しかもこの後にもいくつか配達の荷抱えてるのだ。だいたいエコーズだ。あとセリカのアミーボがいくつか。アルムのは注文が他に無かった。
しかし、もう指定の時間に配達は無理だ。
お客さんにクレームされて頭を下げ、会社に帰れば上司に叱られるだろう。切なさと悲しみはやがて…
アルムへの憎悪へと変わった。こんなとこに住むなと言いたい。つか街に出てきて店で買ってよといいたい。
…といってもこれが仕事なのだし、アルムが悪さをしたわけではないのでその怒りと憎しみはあくまでの心の奥だけ。
彼女もプロである。あるが指定時間内の配達失敗確実なのでプロの矜持的にも凹まざるを得ないが。
いやそもそも…

 

ジル「生きて帰れるの…私…?」
エコーズのソフトとアルムたちのアミーボ抱えたままこの森で朽ち果て白骨を晒すのかも知れない。
嫌だ。嫌すぎる。ここで死んだら死体は絶対見つからない。すなわち蘇生もしてもらえない。
ハールさんにももう会えなくなる。死んでたまるかこんちくしょう。
生きて…生きて…エコーズ届けて帰るんだ……

 

それから…一週間……
食べられないかと思ってよくわからん木の実を食ってゲロを吐き…
彷徨い続けて見かけた鹿の首を斧でぶった切ってフレイボムで焼いて食べ…
樹のそばで眠り…ふらふらになって……そして……
ジル「み…み…民家…家……畑……」
森の奥深く…ジルはその秘境へとたどり着いた……
ベルフ「誰だ!?また目立ちそうなやつが来たのか!?」
ジル「す…すみませんお尋ねします…アルムさんのお宅は…どちらでしょう…」
ベルフ「おのれネタになりそうな侵入者め…え?あ、村長に用事なの…うん、あっちの岩陰にある一番目立たない家だよ」
ジル「ありがとうございます…」
よくわからん村人に食って掛かられたがもう取り合う気力も無い。
ジルはその地味な家の前にたち戸をノックし……
アルム「はーい、…あ、やっと来てくれたんだ!」
戸は開いた。立て付けが悪いのか勝手に開いた…ように見えた。
風の強い日だ。ちょっと風が人の声に聞こえなくもないが…
ジル「こ…ここまできて…ここまで来て…留守だなんて…」
アルム「え!?いや!目の前にいるから!ハンコ持ってきたから!?」
ジル「不在票置いてこ…再配達…やだ…嫌すぎる…もう行きたくない…次はハールさんに担当してもらお…帰ろ…」
アルム「いるってば!?なんで目の前にいるのに気が付かないの?まって!僕のエコーズおいてってよー!?」

 

傷心の宅配屋は不在票置くと悲しみに暮れながら去っていった…
後には注文の品を受け取れなかったアルムが残るのみ…