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Last-modified: 2018-01-13 (土) 22:07:37

『若獅子の苦闘』

 
 

5月の半ばになる頃、ロイはバイク仲間に誘われてサーキットに来ていた
「・・・、空が青いな」
だが何故かハキハキしてるのではなくどこか疲れてる様子であり
ロイは休憩エリアにバイクを停めた後少しはなれた所に
手を頭の後ろに足を伸ばして仰向けになっていた
「よっ、無事か?」
「えぇ、生きてますよ。だけどきっちり休まないと駄目ですね。
まだ疲れが取れません」
そこへライダー仲間の友人がやってきた
ロイの様子を伺い持ってきたドリンクをパスした
「感想は?」
「思った以上にキツイですね、
いやキツイと謂うより慣れないとマズイですね」
「そりゃそうだ、お前は初めてだもんな」
「だってダートコース(悪路)ですよ、オンロードと勝手が違う上に、乗り方が変わりますから」
そう今日ロイはサーキットでもダートのサーキット云わば
モトクロスのコースに来たのだ
初めてモトクロスを走るロイは七転八倒の連続であった

 

そもそもダートコースはオンロードと違い舗装されておらず
土でコースが出来ておりタイヤのグリップも儘ならないものである
また起伏や急斜面、ジャンピングスポットが
設けられ三次元のアクションを要とするステージである
バイクはオフロードを走れるバイクでなければならない
オンロードバイクで走るのは自殺行為かつバイクを壊してくださいの様なものだ
オンロードしか持ってないロイは仲間からバイクを借りる事にした
その仲間がお古のモトバイクをタダで貸してくれたのだ
借りたバイクを走るロイは壊さないように走るもうまくいかず
起伏でバランスを崩し、またオーバースピードで
コーナーのバンクに突っ込み、ジャンプの着地に失敗し転倒など
初めてのせいでロイは乗れずにいたのと、大切なマシンが
土まみれにしてしまったのだ

 

「それに大切なマシンを」
「気にすんな、ちゃんと乗りこなせばバイクも冥利につきる
まぁ誰しも最初はそんなもんさ、徐々に慣れれば上手く走れるさ」
「・・・そうですね。ではもう一回走ってきます
 走って慣れないと此処でへこたれる訳には行きませんからね」
仲間の励ましより起き上がり、ドリンクを飲み干すとロイはピットの所へ戻りバイクを再び乗り回す

 

やはり自分のイメージ通りには行かず転倒やコースアウト、バランスを崩す連続であった
ジャンプで飛び越す時に前に重心が寄りすぎたせいで、前のめりに倒れそうな事がある
(もうちょっと重心がを後ろに・・・)

 

またコーナーで上手くインベタ(十分に減速し侵入旋回脱出をイン側で曲がる)が出来ず
旋回中にマシンがフラツイてしまい、イン側の足で踏ん張り立て直そうとする
(・・・旋回中のスピードを極力落とさない様にしないと!)

 
 

あれやこれや考えて走る内に昼時になり休憩を取り始めた
仲間達との一時の休みの最中でも方法や攻略は怠らず、先輩ライダーから話を聞き
自分の物にしようとただ努めるのだった

 
 

(先輩達のアドバイスを元に走って行かないと)
休憩後、いの三番でコースに入る
走り回すもアドバイス通りに行かず不安定な走りを繰り出して行く
上手くいかず黙々と走っていくとジャンプスポットへ差し掛かる
スピードを落とすのを忘れてしまったのだ

 

(不味い飛ばしすぎた!)
ジャンプで頂点に達すると、思わず前のめりになる
後ろ下がると落ちてしまうからだと咄嗟に判断したのだ
間もなく地面に着く
着地する、転倒は免れないはずだった

 
 

だが車体は大きく跳ねることなく安定した着地をした
(あれ?上手くいった)
思わず一瞬だけ後ろをみたら着地地点が下り斜面だった
(・・・そうか!そうだったのか)
ロイはどうやら理解したようだ
休憩中に他ライダーからのアドバイスにこうあったのだ
『ジャンプの着地は場所に対して重心と向きを変えるのだそうすれば上手くいく』
との事だった
先ほどは斜面が衝撃を軽減したのと同じく車体が斜面に沿って流れるように走ってくれたのだ
またアクセルをオフにしたことでタイヤがスピンせず車体が暴れることなく着地できた
コツを掴んだロイ、次に迫るはコーナーだ
差し掛かる前にあるものに気づいた
(!・・・コーナーをよく視るとイン側はタイヤの走ったラインの跡
 アウト側はバンクになっている所にもラインの跡
 ・・・これに沿っていけば!)
コーナーの入口前、スピードを落としインベタで攻める
旋回中ラインの跡をなぞる様に走り、ハンドルを軽くインに向け
アクセルを半分開ける
出口付近でハンドルを戻しフルスロットル
コーナーを鮮やかに駆け抜けた
(クリア!)

 

その後も最初は走り方が解らなく試行錯誤してたが走りながらも次々に
ジャンプ・起伏・コーナーをクリアして行く
元来持っている運動神経に加え、大乱闘で修羅場を潜り抜けた彼は
半日足らずで最早朝飯前になったのだ
更にタイムを徐々に縮めて行き初めて走った時に比べ大きく削ってきた
気がついたときには夕方前になり、休憩を除いて優に5時間は走ったのだ
すると仲間の一人が旗振って合図を送る

 

『戻るぞ』

 

ロイはスピードを落としコースを走りながら休憩所へ向かった
「お疲れロイ、上手くなったな」
「お疲れ様です、なんとか上手くいきましたがまだですね」
互いに挨拶をし、談話やジョークを交わしながら楽しい一時を過ごす
「じゃ、また連絡するぜ。お疲れ」
「お疲れ様でした」
早めの解散し別れの挨拶を済ませた後、帰路へ向けてオンロードを走らせる
だが高速を走る途中思わぬ事が起きた
(・・・ハッ!一瞬眠たくなった、不味いな・・・!)
走りすぎた反動か睡魔がロイを襲い始めた
たまらず通常車線へ入り定速に落とした
紋章町へ行くパーキングエリアは最早最後のところを過ぎ去り
この後は入口しかないのだ
(早く家につかないと、高速道路の事故は不味い)
高速道路の単車の事故は命に至りかねない
ロイは途中休憩しなかったことを後悔するはめになる
眠気覚ましに悪手であるがヘルメットのシールドを開け
風で刺激を受けようとした
やがてそんな格闘が続きやっと家についた
倉庫へバイクを入れ玄関のドアを開ける
「ただいまぁ~・・・、あ~疲れた・・・」
家についた安堵か、ロイは玄関で前向きに倒れていった
倒れた姿はゾンビの様な姿である、また眠気と格闘したせいもあって
ついには寝息を立てていった

 

「・・・ん、あれ?僕玄関で寝てたはず?」
倒れた後軽く眠っていたロイは、目を覚ますと天井が見えた
「私が居間へ運んだよ」
「ミカヤ姉さん」
女性の声がした
頭を後ろに倒すとそこには兄弟家の長女ミカヤの姿が写った
「お疲れ様ロイ、どうだった今日は」
「一言言って『疲れた』だね。」
「?・・・何かあったの?」
「それは―」

 

今日の事を話すとミカヤは苦笑いをした
「それはお疲れね」
「まぁね、でも楽しかったのは事実さ」
「ロイって本当に何でも興味持つね」
「うん、面白そうなのはなんだってもつさ。
 所でさ何でまた僕に膝枕をしてるの?」
そんな会話をしてると、ロイはあることに気づいた
ミカヤの膝枕に乗りながらだ
会話中ロイは膝枕されてることに気付けなったのだ
「久しぶりにロイにやってみたかったのよ、どう?」
「うん気持ちよかったよ。でもどうせなら兄さん達やサザさん、
 暁の団の皆さんにした方がいいんじゃないかな?」
「それもそうだけどねやっぱり大切な弟だもの、
 姉に甘えてもいいよ?このところ休日含め走りっぱなしだし」
「有り難いけど気持ちだけでも受けとるよ。
 甘えばかりにはいかないからね」
感想を述べたロイは、自分以外にした方がいいと言うとミカヤは
労いを込めてロイに誘いを求めた
しかしロイにとっては思春期故か恥ずかしいと思い気持ちだけと答えた

 

起き上がった後、ロイはあることに気がついた
「あれそういえば荷物は?」
先ほどまでからっていた荷物がないことに気づく
当たりを見回すとミカヤから返答が来た
「それなら洗濯室においたよ」
「ありがと姉さん、あとお風呂場借りるよ」
「いいよ、ロイも帰ったばかりで疲れてるし私とエリンシアで洗ってくから」
「いいの?じゃ、お願いします」
荷物を確認した後、姉達に洗濯を任せロイは入浴や夕食を済ませる
自分の部屋に入ると、今日の走り記録したビデオを見る
だが、ロイは此処で再び後悔するはめになった
(3/4が転倒シーン・・・しかも悲鳴を上げつつ・・・)
写ったビデオの中身は殆どか転倒ばかりであった
これでは今日の走りが参考に出来ないのだ
だがそれでもロイは無駄にはしないようビデオに眼力込めて見る
そんな休日の終わりにロイは翌朝、目に隈が出来すごすはめになった