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Last-modified: 2017-07-10 (月) 22:37:23

サーリャ「ルフレは渡さない。彼女は私の運命の人……」
サーリャが一人イーリス地区を歩いていると仲睦まじい様子の男女が目に入った。
クロムとルフレである。どうやら自警団の訓練の帰りに二人で買い物をしているようだ。

 

サーリャ「あの男…また私のルフレと…気に入らないわ」
サーリャがそう思うと同時にクロムにラッキースケベの呪いが発動した。
そして例のごとくルフレに勢いよく抱き着き、ルフレが恥ずかしさのあまりクロムにトロンを放った。
クロムはそのまま黒焦げになり、ルフレはクロムに対する怒りを抱えたまま一人でどこかに行ってしまった。
 サーリャはルフレの後を追った。うまくいけばこのまま二人でデートでもできるだろうと考えたからだ。サーリャがルフレの後をしばらく追い続けているとルフレの足がとある店の前で止まった。
 それはドレスショップだった。ショーウィンドウの最も目立つ部分にはきらびやかなウェディングドレスが置かれていた。ルフレはしばらくそのドレスを見つめ、そして独り言のようにつぶやいた。

 

ルフレ「きれいなウェディングドレスですね。私もいつかこんなドレスを着てクロムさんと…。でも、ラッキースケベをかましてくる今のクロムさんとは上手くいく気がしません…。それさえなければとても幸せなのですが…。でも、仕方ありませんね」
ルフレが寂しそうにそうつぶやいたのを見て、サーリャは雷に打たれたような感覚に陥った。
 自分がルフレを愛しく思うあまりクロムに対し邪魔を入れることはルフレの幸せを奪っていることではなかったか。自分がこれまで最も遠ざけていた事実を今、目の前で見てしまった。そのとき、妹のシャラに言われた言葉がまざまざと思い出された。

 

彼女は、笑えてる?

 

サーリャ「私があの男に呪いをかけたせいでルフレは…。私は間違っていたの…? 私は…どうすれば…」
サーリャはその場を後にした。

 

自警団の訓練もなく丸一日休みだったその日、ルフレはサーリャに呼び出された。聞けば
少し話したいことがあるという。
 サーリャに言われた場所まで来ると、彼女はすでにルフレを待っていた。

 

ルフレ「サーリャさん、こんにちは。今日はいきなりどうされたんですか?」
サーリャ「ルフレ…来たのね。今日はあなたに大切な話があるの」
ルフレ「大切な話ですか?」
サーリャ「ええ…あなたとあの男…クロムについて」
ルフレ「っ…!」
サーリャ「私、この前あなたがドレスショップの前でウェディングドレスを見つめているのを見たのよ…。
ルフレ、あなたはそれを見てとても羨ましそうにしていた…。あなたも、いつかあの男と結婚したいのね…?」
ルフレ「サーリャさん…。で、でも私とクロムさんの間にはそんな特別な予定は…ない…ですよ」
サーリャ「シャラが言っていたわ。あなたとあの男が結婚しない限り自警団の他の者も結婚することは難しいだろうって」
ルフレ「そんな! みなさんは私たちになんて構わずに幸せになってくださっていいのに!」
サーリャ「ルフレ、あなたは今、幸せ?」
ルフレ「え?」
サーリャ「あなたは今、あの男と一緒に過ごす時間をとても大切にしている…。
そしてあの男を愛している…ルフレ、私にあなたの正直な気持ちを聞かせて?」
ルフレ「私の気持ち…。私は、イーリスの森で倒れていたときにクロムさんに拾っていただきました。
家族に再会できるまで孤独だった私にはクロムさんは太陽のような存在でした。
そのときから私はクロムさんを愛しています。できることなら、その…
クロムさんとも結婚したいです…」
サーリャ「……」
ルフレ「でも、クロムさんは優しい人だから、クロムさんを好きな方がいたら
その方ともきっと結婚してしまうと思うんです。私は…寂しいですけれども、
それでもクロムさんが好きです」
サーリャ「ルフレ…!それは違うわ……!!」
ルフレ「サーリャさん?」
サーリャ「あの男は…あなたのことだけをずっと見ているの。あなたのことが好きで、ずっと追いかけていたのよ…。
だから私はいつもあの男を邪魔していた。私もあなたがとても好きだから、あなたをとられたくなかったから……」
ルフレ「サーリャさん…」
サーリャ「でも、それはあなたをかえって悲しませていたみたいね…。ごめんなさい。私、あなたをこれ以上好きでいる資格はないわね…」
ルフレ「サーリャさん…確かに、私はクロムさんが好きです。サーリャさんのお気持ちには、その…応えることはできません。
でも、サーリャさんはいつも私のことを思ってくださっている…。それだけでも十分嬉しいんですよ」
サーリャ「ルフレ…ありがとう」
ルフレ「だからサーリャさん、これからもいいお友だちでいてください。あなたは私の一番の親友です」
サーリャ「ルフレ、私はとても欲張りだったみたいね。あなたの幸せは私の幸せでもある…。
ルフレ、あなたが幸せになるための手伝いを私にさせてちょうだい」
ルフレ「えっ…?」
サーリャは穏やかに笑った。