「それじゃ、また話を聞かせてね」
「勘弁してよ、もう…」
ニュクスにさんざん話を絞り取られて、解放されると既にもういい時間だった。なんだかんだ惚気を友人にぶちまけた形なので悪い気はしないのだが。
もう寝てしまおうと廊下を歩いていると、突如電話のベルが鳴り響いた。
「はいもしもし、兄弟家です」
『ミカヤさんですか!?ああちょうど良かった!!』
電話の相手はセシリアだった。教師である礼儀正しい彼女のこの取り乱し用は、それだけの事態だと感じられた。
「落ち着いてセシリア先生、一体どうしたの?」
『す、すいません…ミカヤさん、サザ君が、サザ君が!?』
夜の帳が下りた裏路地をミカヤは必死に駆けていた。運動が得意でないミカヤなので足元は覚束ないが、その歩みに迷いはない。
(『今溜まり場のバーに行ったら、サザ君から伝言て「もう多分来れない、いきなりでごめん」って!突然過ぎて何が何だか…』)
(何考えてるのよ、あのバカ!!)
引き止めるアイクの声も届かず、気づけば家を飛び出していた。
行き先なぞ知らないが、サザとは彼が赤ん坊の頃からの付き合いなのだ。なんとなくだが分かる。
そして、遂にその緑の背中を捉えた。
「……ミカヤ?」
「サザ!!アンタ突然なに言い出…して…」
サザの目を見て、ミカヤの言葉が途切れる。
彼の瞳が、光の灯らない、光すら飲み込む様な黒色だった。緑風(笑)と侮られようと、決して情熱の火が消える事はなかったサザの瞳が、だ。
昔見た、この世の全てに絶望し、ただ無為に無気力に日々を生き続けた者の瞳が、今のサザのそれと同じだった。
「はは、せめてミカヤには知られない内に居なくなろうと思ってたんだけどな。やっぱり俺ってダメなんよ」
「な、何言ってんのよ!?辛い事があったなら私が話を聞くから!?」
それでも自分なら、とサザを救うために、ミカヤは必死で声を上げる。
「辛い事、か…なあミカヤ、俺、ミカヤの事が好きなんよ。1人の女性として、ミカヤを愛しているんよ」
「は、はあ!?//い、いきなり何言い出すねよ!?///」
「いきなり…はは、やっぱり俺のアプローチ、さっぱり届いてなかったんよ。悔しいなぁ」
言われて、何となく思い当たる。よく漆黒と共に珍妙な行動に出ていた事があった。親愛の情からくるじゃれつきだと思っていたが、あれがアプローチだったとは。
「…ミカヤが後千年は相手を作る気が無いって言ってたし、俺が弟とか息子としか見られてないのも知ってた。だから、何千年掛かろうとアプローチし続けてていつか振り向かせる、って思ってたんよ」
「…でも、アイクが…俺より遥かに条件の厳しい実弟のアイツが、壁をブチ抜いてミカヤの心を射止めたんよ」
「アイクみたいな『主役』と、俺みたいな『脇役』の格の違い、解ってたはずなのに改めて突き付けられて、流石に男として心が持たなかったんよ」
「サザ……」
気持ちを直接聞かなくても、自分なら彼の事は大体分かる、そんな慢心をしていた今までの自分を殴りたくなった。しかしそれでも、と彼を救おうと頭の中で言葉を搔き集める。
「…ミカヤもアイクも、誰が悪いって訳じゃない。ただ意気地無しで器量の狭いつまらない男が、みっともない嫉妬で姿を消す、ただそれだけの事なんよ」
「そ、そんな事はない!!貴方が我慢強くて努力家で優しい立派な人だって、私は知っているわ!!」
「…じゃあミカヤ、アイクじゃなくて俺と付き合ってくれ」
「え、ええ!!??///」
「俺はアイクなんかより何倍もミカヤを愛しているし、アイクの何倍もミカヤを幸せにする自信があるんよ」
サザの魅力はよく知っている。彼となら慎ましくも幸せな家庭を築けるだろう。しかし、アイクへの不義理を働く事なんて出来ず、ミカヤは押し黙る。
「…ごめん、俺今最低の質問をしちまったな。はは、だから俺はモテないんよ」
「…追いかけて来てくれてありがとう、ミカヤ。『アイクとミカヤ』の幸せは願えないけど、『ミカヤ』の幸せはいつまでも願っているんよ」
「!?、サザ、待っ」
言うと、サザはその二つ名の様に、風の如く一瞬で消えてしまった。ミカヤは追い縋ったが、最早一寸の気配すら感じられ無くなっていた。
「ああ、サザ……ごめん…なさい……ごめんなさい!」
サザの想いを自分が踏みにじった。サザ本人ですら否定するだろう考えだろうが、今はそうとしか思えず、その罪の重さに耐えきれなかったミカヤは、崩れ落ちて涙を流した。
心配して追いかけて来てクロムに発見されるまで、ミカヤは泣き続ける事しか出来なかった
セティ「……例え、紋章町を離れようと、私達はいつだって、共に居る。どうかそれを、忘れないでくれ」
サザ「…………それでも、しばらくは、自分を見つめ直したいんよ……」
オフェリア「今日のバイトも疲れたね」
ジークベルト「そうだね。まだ人手が少ないから仕方ない事かもしれないけどね、ん?」
オフェリア「どうしたの?」
ジークベルト「オフェリア。悪いが先に帰っていてくれ、少し用事が出来た」
オフェリア「え?まあ、良いけど」
ジークベルト「さて…」
サザ「………」
ジークベルト「あの、どうかしましたか?」
サザ「……あんたは?」
ジークベルト「通りすがりのお人好しって所ですかね、悩みがあるなら相談に乗りますが…」
サザ「……実は…」
説明中…
ジークベルト「成る程、そのような事が…」
サザ「ああ、俺は…最低なんよ……」
ジークベルト「……そんな事ありませんよ」
サザ「…何故そう思うんよ?」
ジークベルト「先程色々と聞きましたが、貴方は間違っていません。貴方は自分の想いを好きな人に言った、それは人間として当然の事です」
サザ「だが…俺はあいつを…ミカヤを傷付けてしまったんよ…だから俺は最低なんよ……」
ジークベルト「それはきっと相手も同じ事を考えていると思いますよ、貴方だけが自分を責め続ける必要はありません」
サザ「そうか…あったばかりの人にそこまで言われるなんてな…」
ジークベルト「偉そうな事を言ったのなら謝ります」
サザ「いいや、寧ろあんたのお陰で少し気が楽になれたんよ、俺は…この紋章町を離れるつもりでいるんよ」
ジークベルト「町を離れる?」
サザ「ああ、色々な所に行って色んな人と出会って…そしてビックになってこの町に帰って来るんよ!帰って来た時は…あんたに一番に顔を見せる事にするんよ」
ジークベルト「立派な目標ですね、その時を私も楽しみにしていますよ」
サザ「ありがとう、じゃあ行って来るんよ!」
サザは旅をしてした
一人歩いていると口を突いて歌が出てくる
なので歌った
やってやんよやってやんよやってやんよ
憎い漆黒をボコボコに
喧嘩は売るんよ 瞬殺で
肩で緑風 ……
ここまで歌ってから歌詞が出てこなくなった
紋章町を出てこないだ立ち寄ったとある異界で聞いたようなそんな歌だった……
サザはとある異界にやってきた
そこは荒廃しモヒカンが荒れ狂っていた
悪を討とうとしてサザは返り討ちにあい身ぐるみを剥がれた
無念だが一旦別の異界に退避した
身ぐるみが無いのでパンツ一枚で
そしてそこでは同じくパンツ一枚の男が魔物と戦っていた
サザは彼と共に戦った
やがて鎧が手に入った
着込んでみた。パンツ一枚よりマシだ
短剣を投げながら横に横に進んで魔物を倒していたらなんか赤くてやたら強い魔物が出た
鎧を砕かれサザはパンツ一枚に逆戻りした
ビッグになるための旅は続くんよ