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Last-modified: 2010-05-16 (日) 20:22:13

さくらんぼの実る頃(下ネタ)

 

※下ネタ注意

 
 

リン   「ふーん、ふーんふーふーふー♪(FEのテーマ)」
ロイ   「あれ、どこかへ出かけるの、リン姉さん?」
リン   「ん? ええ、お休みで、こんないいお天気だし……ちょっと草原へ、遠乗りしに行くのよ」
ロイ   「ああ、そうなんだ。どおりでご機嫌だと思った」
リン   「ふふ、ロイだって一緒に来てみれば分かるわよ。
      どこまでも続く草原、抜けるような青空、吹きすぎるそよ風……」
ロイ   「そして隣にはラスさん?」
リン   「そうそう……って、な、何言い出すのよロイったら!」
ロイ   「あはは、ごめんごめん、ちょっとした冗談だよ」
リン   「もう……じゃ、行ってくるわね。ワープ便使うから、そんなに遅くはならないと思うけど」
ロイ   「うん、行ってらっしゃい。ラスさんによろしくね」
リン   「からかわないでったら!」

 

ロイ   「あんなにご機嫌なリン姉さんは久しぶりだな……さて、僕はどうしようか……」
マルス  「ねえロイ」
ロイ   「ん? なに、マルス兄さん?」
マルス  「君ってさ」
ロイ   「うん」
マルス  「チェリー?」
ロイ   「ブッ……きゅ、急に何言い出すの、兄さん!?」
マルス  「いや、選択肢は多そうだからね。でもその反応見るとまだチェリーか」
ロイ   「げ、下品すぎるよいくらなんでも!」
マルス  「ははは、ロイこそ見方がいやらしいんじゃないのかい?
      性行為は人間が種を存続するために必要不可欠な、自然な営みじゃないか」
ロイ   「恥ずかしいっていう言葉についても、もうちょっと知って欲しいな。
      それと、僕に選択肢が多いっていうのも誤解だよ」
マルス  「ほう。でも、ずいぶん女友達が多いみたいだけどね?」
ロイ   「だから、皆とは友達なんだよ。その……彼女とか恋人とか、
      そういう深い関係になった人はいないし、皆だって僕をそういう対象としては見てないよ」
マルス  (単に水面下で牽制しあってるせいで誰も抜け駆けできないだけだと思うけどね。
      ま、ロイの場合は本人が気づいてない方が楽しいから黙っておくけど)
ロイ   「……でも、マルス兄さんは毎度毎度聖人君子みたいな顔でとんでもないこと言い出すね」
マルス  「ははは、会話の主導権を握るには最初のインパクトが大事だからね」
ロイ   「弟との会話で主導権とか考えられてもなあ……」
マルス  「まあまあ。そんな訳で、今日は我が兄弟がチェリーか否かを確認しようと思う」
ロイ   「って、皆に聞いて回るの!?」
マルス  「当然じゃないか。気になるからね」
ロイ   (なんで急にそんなこと言い出したんだろう……
      相変わらず、我が兄ながらマルス兄さんの考えることはよく分からないな)
マルス  「さて、それじゃ下から順にいってみようか」
ロイ   「気が進まないなあ……」

 

マルス  「リーフ、リーフ」
リーフ  「なに?」
マルス  「君ってさ」
リーフ  「うん」
マルス  「チェリー?」
リーフ  「……」

 

 ブバァァァァァァァァァァァァッ!

 

ロイ   「うわぁ、リーフ兄さんの鼻からまるでイルカの潮吹きのような鼻血が!」
リーフ  「こ、この人でなしーっ! なんてこと想像させるんだよ!?」
マルス  「いや、僕は質問しただけであって勝手に妄想膨らませたのは君なんだけど……
      うん、でも今のではっきりしたよ、君もチェリーだったんだね」
リーフ  「ほっといてくれ。くそっ、僕だって今に大人のお姉さんに……」
ロイ   (やっぱり年上の人がいいんだ……)
マルス  「んー、でも意外だね、リーフのことだからもう例の三人娘と寝てるかと思ったけど。とっかえひっかえ」
リーフ  「ナンナ、ミランダ、サラ? 冗談じゃないよ、あの三人は僕を玩具ぐらいにしか思ってないね。
      普段の僕に対するボロ雑巾みたいな扱いを見ていれば分かるでしょ?
      僕としては、彼女らが早くどっかの不運なイケメンを捕まえて、僕で遊ぶのに飽きてくれるのを祈るばかりさ」
ロイ   (これはまた……)
マルス  (なんともリーフらしいニブチンっぷり……)
ロイ   (その辺りがあの三人の競争心に火をつけるんだろうけどね)
リーフ  「ちなみに僕としては初めてのときは綺麗なお姉さんに手取り足取り……ああ、また鼻血が。
      あ、でもそれで結婚まで考えちゃうような余裕のないお姉さんは嫌だなあ。
      僕としては、適当に遊ばせてくれつつ将来の保証もしてくれるようなお姉さんが」
ロイ   「いやそこまでは聞いてないから」
マルス  「そしてあくまでもお姉さんにこだわるか……リーフの姉好きは異常」

 

マルス  「セリス、セリス」
セリス  「なに、マルス兄さん?」
マルス  「君ってさ」
セリス  「うん」
マルス  「チェリー?」
セリス  「……? さくらんぼがどうかしたの?」
ロイ   「通じてないよマルス兄さん」
マルス  「予想はしてたけどね。セリス、ちょっと耳貸して」
セリス  「うん」
マルス  「いいかい、チェリーっていうのは…… …… ……」
セリス  「…… …… ……!!」
ロイ   (うわ、セリス兄さんの顔が見る見る真っ赤に……!)
セリス  「なななな、なんてこと聞くんだよ、マルス兄さん!」
マルス  「そんなに恥ずかしがることでもないでしょ、君ぐらいの年頃ならもう既に遊び歩いてる奴だっているのに」
セリス  「だからってそんな……」
マルス  「うん、でもその反応を見る限り君もチェリーだね」
セリス  「あ、当たり前じゃないか!」
マルス  「そうかな。君だってずいぶん好かれてるように見えるけど」
セリス  「そりゃ、皆とは仲良しだけど……それは友達としてであって、
      好きとか嫌いとか、そういうの、僕はまだ……その……」
マルス  「うわ、まだその段階だったのか! ロイより初々しいね、こりゃ」
ロイ   「ぼ、僕だってそんなのまだ考えたこともないよ!」
マルス  「またまた。君たちもリーフに劣らぬムッツリ君だね」
セリス  「そういう言い方は止めてってば!」
マルス  「そんなこと言って。セリスだって、周りの女の子のちょっとした仕草にドキッとしたことぐらいあるでしょ?」
セリス  「え、あ、う……」
マルス  「おっ、その反応を見る限り、あったらしいね? ほらほら、兄さんに教えてごらん?
      誰なんだい、君のエロスを刺激したのは? ユリア、ラナ、ラクチェ、フィー、パティ、ティニー、リーン……
      おやおや、君もロイに負けず劣らず選択肢が多いみたいだね?」
セリス  「な、なんで僕の友達の名前、マルス兄さんが知ってるの!?」
マルス  「ははは、このアカネイアの陰の支配者と巷で噂の僕の人脈と情報力を侮ってもらっては困るな! で、誰?」
セリス  「し、知らないよそんなこと! もう、いい加減にしないとホントに怒るよ!?」
マルス  「やれやれ、そんなに怒ることでもないだろうに……まあ、悪かったよ。じゃ、質問を変えるけど」
セリス  「……なに」
マルス  「君、前はいいけど、後ろの方は大丈夫なのかい?」
セリス  「……?」
ロイ   「……? ごめん、今度は僕も意味が分からないんだけど……」
マルス  「……突っ込み役が不在ってのは辛いものがあるなあ……」

 

マルス  「アルム、アルム」
アルム  「? なに、マルス兄さん」
マルス  「君ってさ」
アルム  「うん」
マルス  「セリカとはもう寝たの?」
アルム  「……」
ロイ   「聞き方がダイレクトすぎるよ!」
マルス  「だって、それ以外の選択肢はありえないでしょ」
ロイ   「だからって……」
アルム  「……いくらマルス兄さんでも、その質問はちょっと許せないな……」
マルス  「おや、どうやら気に障ったようだね」
アルム  「当たり前だろ。全く、シグルド兄さんじゃあるまいし、邪推しないでほしいな」
マルス  「ってことは、まだなんだね」
アルム  「まだというか、一生そういうことするつもりはない」
ロイ   「断言した!? あー、これは僕でもちょっと意外かも……」
アルム  「ロイまで……あのね、僕とセリカは確かに愛し合ってるけど、兄妹なんだよ?
      そういう風になるのはありえないよ」
マルス  「いや、その理屈はおかしい」
ロイ   「僕もちょっとよく分からないな……」
マルス  「相変わらず君たちは独特の世界観と言うか倫理観を築き上げているね」
アルム  「いい? 僕らは確かに手を繋いで歩くしお風呂も一緒に入るし抱き合って寝たりときどきキスしたりもするけど」
ロイ   (この時点でもう十分ヤバいような)
マルス  (よしなよロイ、彼らに一般的な倫理観は通用しない)
アルム  「でもね、それはあくまでも兄妹愛なんだ。その一線を超えることはない。
      僕らは一生仲のいい兄妹として添い遂げ、仲のいい兄弟のまま一緒のお墓で眠るんだ!」
マルス  「これまたぶっ飛んだ理想をお持ちで……まあいいや、とりあえず頑張りなよ」
アルム  「もちろんさ。ああ、こんなこと話してたらまたセリカの顔が見たくなってきた。それじゃ」
ロイ   「……行っちゃったね」
マルス  「うーん、これは思わぬ収穫だな。面白いことになってきた」
ロイ   「え、何が?」
マルス  「さっきアルムが言ってたことは、彼にとっては本心かもしれないけどね」
ロイ   「うん」
マルス  「セリカにとっては、どうかなあ……?」
ロイ   「……ちょ、怖いよその発想は! 大体、セリカ姉さんはいつも『やましい感情なんてない』って言ってるし」
マルス  「甘いねえロイは。女ってのは、僕ら男には想像もつかないような考え方をする複雑怪奇な生き物なのさ。
      ロイだって、誰からどんな感情を抱かれているか分かったものじゃないよ?
      信頼できる年上のお姉さん、とかには注意するんだね」
ロイ   「なんか妙に限定的だけど……大丈夫だよ、僕の周りにそんな危なそうな人はいないから」
マルス  (分かってないなあ、ロイは……そのぐらいの女性が一番必死でヤバい存在だっていうのに)

 

マルス  「ヘクトル兄さん、ヘクトル兄さん」
ヘクトル 「あ? なんだよ」
マルス  「兄さんってさ」
ヘクトル 「おう」
マルス  「チェリー?」
ヘクトル 「……マルスよ、お前が弟じゃなかったらぶん殴ってるところだぜ?」
マルス  「うん、僕も相手が兄じゃなかったらこんな質問はしてないよ」
ヘクトル 「チッ、相変わらず口の減らねえ奴だ」
マルス  「うーん、年少組と違って、兄さんの受け答えにはずいぶん余裕があるねえ」
ヘクトル 「当たり前だろ。大体、聞かれて困るようなことか?」
マルス  「ってことは、つまり……?」
ヘクトル 「おう、もちろん経験済みだぜ、俺は」
マルス  「予想通りだ。さすがヘクトル兄さんだね」
ヘクトル 「まあな。ま、俺ぐらいの漢ともなると、世の女どもも放っておかねえ訳だ」
マルス  「ほうほう」
ヘクトル 「っつっても、俺は面倒くさい女は好みじゃねえから、深い仲になった奴は未だにいねえけどな」
マルス  「そうでしょうねえ、ヘクトル兄さんぐらいの漢ともなると、ついていく人にもそれなりの資質が必要でしょうし」
ヘクトル 「分かってんじゃねーか。ま、俺は選ぶ側だから、気の合う女が見つかるまではじっくり構えてるつもりだけどな」
マルス  「ははは、さすがはヘクトル兄さんだ。これならミカヤ姉さんやエリンシア姉さんも安心ですね」
ヘクトル 「おうよ。ま、お前もつまんねーこと気にしてないで、ちょっとは男らしくなれるように努力するんだな」
マルス  「そうですね。いやー、参考になりますよ。それじゃ、つまんないことで呼び止めて失礼しましたー」

 

ロイ   「……で、僕は言われたとおり引っ込んでたけど……」
マルス  「うん、ありがとう。いやー、予想通りだったな」
ロイ   「まあ、ヘクトル兄さんは普通にそういうことしてそうだけど」
マルス  「いや違うよ。あれはまだチェリーだね」
ロイ   「え、でもあんなに余裕のある……」
マルス  「馬鹿だなあ、ヘクトル兄さんみたいな人が、弟に『チェリー?』なんて聞かれて、『ああ、まだだぜ』なんて言うと思う?
      多分今頃は、『クソッ、マルスの野郎、俺がこの年で女も知らねー情けねえ男だと思ってやがるのか。
      っつーか、まさかあの野郎、俺より早く経験済みなのか……!?』とか焦ってるに違いないよ」
ロイ   「そ、そうかなあ……?」
マルス  「そうだって」
ロイ   「で、一人で行ったのはどうして?」
マルス  「だって、ロイがあの場にいたら『どんな人とヤったの?』とか聞こうとするだろ?」
ロイ   「そんな下品な言い方しないよ!」
マルス  「でも、詳細を聞こうとはするわけだ」
ロイ   「……まあ、気にはなるし、ちょっとは聞くと思うけど」
マルス  「そうしたらきっと、目線が泳ぎ出して受け答えも歯切れが悪くなると思うなあ、ヘクトル兄さん。
      でも、そんな風になって本気で怒り出したら後が大変じゃないか?
      だから、兄さんの顔を立てる狙いもあって、さっきは僕一人で質問したのさ」
ロイ   「嫌な気の使い方……」
マルス  「ま、ヘクトル兄さんは『どどど、童貞ちゃうわ!』ってタイプかな」
ロイ   (ヘクトル兄さんが聞いたらマジ切れしそうな表現だな……)

 

マルス  「エフラム兄さん、エフラム兄さん」
エフラム 「なんだ、マルス」
マルス  「兄さんってさ」
エフラム 「ああ」
マルス  「チェリー?」
エフラム 「ああ」
ロイ   「うわ、一瞬の迷いもなく!?」
マルス  「余裕ですねえ。どうして?」
エフラム 「どうして、と言われてもな……女のことなど考えても大して楽しくない。それより今は己の腕を磨かなくてはな」
マルス  「これはこれで面白い答えだな……予想通りではあるけど」
エフラム 「で、それがどうかしたのか?」
マルス  「いや、別に大した意味はないんですけどね」
エフラム 「そうか。まあ、お前達も年頃だしな。そういうのに興味を持つのは分かるが……
      残念ながら、俺に女をなびかせるコツなんて聞くのはお門違いだ。
      そういうのはヘクトルにでも聞いてくれ。奴なら多少は知っているだろう」
ロイ   「あー、うん、そうだね……」
マルス  (この人も分かってないなあ……)
エフラム 「もういいか? ちょっと出かける用事があってな」
マルス  「ほう。修行ですか?」
エフラム 「いや、またユリアにミルラたちの引率を頼まれていてな。ちょっと山までハイキングに行ってくる」
ロイ   「……」
マルス  「……」
エフラム 「……? なんだ、変な顔して」
ロイ   「ああいや、なんでもないよ、うん」
マルス  「気をつけて行ってきてね」
エフラム 「ああ。じゃ、行ってくる」

 

ロイ   「……」
マルス  「……」
ロイ   「……」
マルス  「……チェリーだらけの我が家に救世主が!? 幼姦マ」
ロイ   「ちょ、それはいくらなんでもヤバすぎだって!」
マルス  「……でも、正直ちょっとは想像しただろう?」
ロイ   「う……は、発想がなかったといえば嘘になるかな……」
マルス  「エフラム兄さんには、女のなびかせ方は聞けなくても幼女に懐かれる方法は聞けそうだなあ」
ロイ   「いや、本人も無自覚だと思うけど、あれは……」
マルス  「どうかなあ……ところでロイ、光源氏って知ってる?」
ロイ   「やめてよそういう例えを持ち出すのは!」

 

マルス  「エリウッド兄さん、エリウッド兄さん」
エリウッド「なんだ、マルス」
マルス  「兄さんってさ」
エリウッド「ああ」
マルス  「チェリー?」
エリウッド「……フーッ……」
ロイ   (うわ、呆れきったように深々とため息を吐き出している……!)
エリウッド「マルス……すまないが、君に情操教育を施しなおしている暇はないんだ……」
マルス  「これは予想外の反応だな……」
エリウッド「いいか、君たちがそういう年頃で、そういうことに興味を示すというのもわからないではないが。
      その経験だけで人間の価値が決まると思ったら大間違いでだね」
マルス  「そんなことは百も承知ですよ。だから、そういうのとは関係無しに聞いてるんじゃないですか」
エリウッド「……僕は、まだだ」
マルス  「ニニアンさんとかフィオーラさんとかは?」
エリウッド「ニニアンに、フィオーラ……? 魅力的な女性だとは思うが、そういうことは考えたこともない」
ロイ   「え、意外だなあ……エリウッド兄さんの方もまんざらじゃないかと思ってたのに」
エリウッド「ロイ、マルス……君ぐらいの年だと、恋に対して一瞬で燃え上がるものだとか、
      一目ぼれだとか、他のことが気にならなくなるとか、そういうイメージばかり抱いているかもしれないが……
      僕は多分、そういうタイプの人間ではないんだと思う。
      恋情も愛情も、二人の時間を重ねながら、ゆっくりと育てていくのが性に合っているみたいなんだ」
ロイ   「はあ」
マルス  「つまり?」
エリウッド「……そういうものを育てるための、時間と心の余裕がない」
マルス  「……」
ロイ   「……」
エリウッド「毎日毎日必死で家計簿と向き合って胃薬飲みつつ謝罪に走り、
      ヘクトルとエフラムの喧嘩がエスカレートしないか常時見張りつつ
      アイク兄さんのラグネルの使用法に目を光らせる……
      こんな生活だ、恋だの愛だのは遠い別世界の話のように思えるよ……」
ロイ   (い、いくらなんでも気に病みすぎなんじゃないかな……?)
マルス  (神経細い人だからね……さすがにここまでくると気の毒になってくるな……)
エリウッド「大体、必死で僕らを養ってくれているシグルド兄さんやミカヤ姉さん、アイク兄さんのことを考えると、
      とてもじゃないが恋愛に現を抜かす気にはなれない。
      まずは僕らが一人前になって、兄さん達を安心させてあげないと」
ロイ   (ま、まともすぎる……!)
マルス  (ミカヤ姉さん辺りは、僕らがこういう考えでいることの方を気に病みそうだけどね)
エリウッド「……ああ、ごめん。別に、君たちに恋をするなとか言いたい訳じゃないんだ。
      ただ、出来るならば恋をしているときも節度は保って欲しいと思う。
      アルムとセリカは常時あの通りで見ていてハラハラするし、リーフなんかこの間も
      町で見かけた美人のお姉さんシスターを『とらえる』コマンドでくぁwせdrftgyふじこlp」
ロイ   「ちょ、兄さん落ち着いて!」
マルス  「ほら、精神安定剤と胃薬だよ」
エリウッド「……ふーっ、すまないな二人とも。まあそういう訳だから、恋愛のイロハが知りたいのなら
      ヘクトル辺りに聞いてみてくれ……それじゃ、僕はまた謝罪に行ってくる……」
ロイ   「い、行ってらっしゃい……」
マルス  「……苦労するね、エリウッド兄さんも……」
ロイ   「……いや、マルス兄さんもその苦労の原因の一部だってことを自覚するべきだと思うけど……」

 

マルス  「アイク兄さん、アイク兄さん」
アイク  「なんだ?」
マルス  「兄さんってさ」
アイク  「ああ」
マルス  「チェリー?」
アイク  「……」
ロイ   (あ、あれ? 考え込んでる……意外だな、アイク兄さんだったら『別に、どうでもいいけどな』みたいに言うと思ったのに)
マルス  (いやいや、今やフラグクラッシャーで有名なアイク兄さんだけど、
      それはつまり立てたフラグは多かったってことだからね。意外な女性遍歴が聞けるかも……)
アイク  「チェリーか。俺は」
マルス  「うんうん」
アイク  「あんまり好きじゃないな」
マルス  「……は?」
アイク  「あんな小さな果物は、腹にたまらん。やはり食い物は肉でないと」
マルス  「いやいや、そういう意味じゃないですよ!」
アイク  「……? じゃあどういう意味だ? 悪いが、俺は植物には詳しくない」
マルス  「そうじゃなくて! つまりですね、女の人と寝たことがあるかどうかとか、そういう……」
アイク  「女と寝る……? ……マルス、俺も最近、自分がまだまだ一人前には程遠いと再確認したところだが……
      さすがに、姉さんたちに添い寝してほしいなどと考えるほどには、子供じゃないつもりだぞ」
マルス  「いや、そういう意味でもなくてですね」
アイク  「じゃあ何だ。お前の聞きたいことはよく分からん。知っての通り、俺はあまり学がないんだ。
      質問があるなら、もっと分かりやすく頼む」
マルス  「……えーと、じゃあ……兄さんは、赤ちゃんがどこから来るか知ってる?」
ロイ   (ちょ、マルス兄さん、それはいくらなんでも馬鹿にしすぎ……)
アイク  「……難しい質問だな。どう教えたらいいものか……」
マルス  (この反応を見る限り、知識はあるんじゃない?
      まだ年若い僕らに、性行為についてどう教えたものか困ってるっぽいし……)
アイク  「いいかマルス」
マルス  「うん」
アイク  「赤ん坊がどこから来るかということに関しては、二つの学説があってな」
マルス  「……は?」
アイク  「コウノトリが運んでくるというのと、キャベツ畑で拾ってくるというのが……
      いや待てよ、橋の下から拾ってくるという説もあったか……?」
マルス  「……あー、いや、もういいやアイク兄さん、ありがとう、参考になったよ」
アイク  「そうか。じゃあな」

 

ロイ   「……予想外というべきか、予想通りというべきか……」
マルス  「……さすがアイク兄さん、あらゆる部分で僕らの想像を凌駕する男だな……」
ロイ   「……と言うか、アイク兄さんは保健体育の授業を受けてなかったのかな」
マルス  「寝てたか、さもなくば何の話をしているのかさっぱり分からなかったか……」
ロイ   「両方ありえそうで怖いなあ」
マルス  「まあ、世の中には極めて性欲の薄い人間っていうのも稀にいるって話だし」
ロイ   「そういうレベルじゃない気がするけどね、アイク兄さんの場合」

 

マルス  「シグルド兄さん、シグルド兄さん」
シグルド 「なんだ、マルス」
マルス  「兄さんってさ」
シグルド 「ああ」
マルス  「チェリー?」
ロイ   (ああ、言ってしまった……! さすがに一家の大黒柱に対してそれはまずいよマルス兄さん)
マルス  (いや、だからこそ聞く価値がある……!)
シグルド 「……」
ロイ   (ドキドキ)
マルス  (ドキドキ)
シグルド 「……ああ、そういう意味か。そう言えば、まだ経験のないことをそういう風にも表現するんだったな」
マルス  「ええ、まあ」
ロイ   (さすがに意味は理解してたか……)
シグルド 「もちろんわたしはまだ。未婚だからな、当然のことじゃないか」
マルス  (うん、予想通りの反応だ)
ロイ   (しっかりしてるというべきか、それとも時代に遅れているというべきなのか……)
シグルド 「しかし、そうか……お前達も、ついにそういうことを意識する年頃か……
      うんうん、お前達がしっかり育ってくれて、兄さんは非常に嬉しいぞ」
マルス  「えーと、それはどうも……」
シグルド 「しかし、あまりあからさまに聞くのは感心しないな……
      人によってはそういうことを過度に気にしていることもあるからな」
マルス  (……どうしよう、なんか普通に説教される流れになってるんだけど)
ロイ   (そりゃそうだよ……だからもう少し質問の仕方を考えろとあれほど)
シグルド 「とりあえず、わたしに関しては安心してもいいぞ二人とも。
      何せ愛しいディアドラがいるからな、お前達が『おじさん』と呼ばれる日もそう遠くはない! ……はずだ」
ロイ   (微妙に自信がないんだな……)
マルス  (ディアドラさんが赤毛の紳士との間を行ったり来たりだからね……)
ロイ   (と言うか、別におじさんなんて呼ばれたい訳じゃないんだけど……)
シグルド 「まあともかくだ、お前達も運命の人を見つけられるように誠実な生き方を」

 

 プルルルルル、プルルルルル……

 

シグルド 「おや電話だ。……はい、もしもし……なんですって、ディアドラが!?」
ロイ   (あ、なんか……)
マルス  (既見感を覚える光景……)
シグルド 「……分かりました、今すぐに行きます。……二人とも、すまないが」
マルス  「ディアドラさんがさらわれたんだね、また」
シグルド 「今回はエーディンも一緒だ。助けに行ってくる」
ロイ   「気をつけてね」
シグルド 「うむ。では、行ってくる!」

 

マルス  「……むしろ、毎回あんなドラマチックな展開を経ているのに、なんでまだなのかが不思議だね」
ロイ   「うーん、ディアドラさんの方も案外奥手なんじゃないかなあ……?」
マルス  「いや、やっぱりあれは悪女だよ、ビッチだビッチ」
ロイ   「将来義理の姉さんになるかもしれない人に対してその言い方はないよ、兄さん……」

 

マルス  「……という訳で、ウチの兄弟が皆チェリーだったことが確認できた訳だ。実に有意義な一日だったね、ロイ」
ロイ   「無駄に気疲れしただけのような気がする……でも、皆なんだかんだで理由は違ったね」
マルス  「まあね。ああ、一番早くチェリーを捨てるのは誰なんだろう。今から楽しみだよ」
ロイ   「……そう言えば、マルス兄さんはどうなの?」
マルス  「僕? ははは、何を言うかと思えば。まだに決まってるじゃないか」
ロイ   「そうなの?」
マルス  「当たり前じゃないか。商売女で捨てるなんてお金がもったいないし、
      欲に任せて突っ走った挙句に子供が出来ちゃったりしたら、社会的にも経済的にも危うすぎるからね」
ロイ   「……そこまで冷静なのもなんか嫌だなあ」
マルス  「ま、僕の場合はシーダと結ばれるのは確定的だから、いちいち焦る必要もないからね。
      まずはしっかりと生活基盤を固めて、安定したゴールインを目指すのさ」
ロイ   「さすが、マルス兄さんは計画的なことで……」
マルス  「ははは、この兄を見習いたまえよ」
ロイ   (……じゃあ、別に兄さん達に先を越されていないか焦ったって訳でもないんだな……
      どうしてマルス兄さんはあんなことを聞いて回ったんだろう……?)
マルス  「……さて、それじゃ、次に行こうか」
ロイ   「……え? まだ聞いてない人なんていたっけ?」
マルス  「違うよ、男性陣に聞いたんだから、今度は……」
ロイ   「……姉さんたち!? ちょ、いくらなんでもそれは危なすぎ……」
マルス  「止めてくれるな弟よ」
リン   「ただいまーっ」
マルス  「あ、いいところに……リン姉さーんっ!」
ロイ   (し、しかも真っ先に核地雷に突進したーっ!?)

 

リン   「なに、マルス?」
マルス  「リン姉さんってさ」
リン   「ええ」
マルス  「ラスさんとはもう寝たの?」
リン   「……」
ロイ   (あああああああ……怖い、すぐには怒らないのが怖すぎますよリン姉さん!)
リン   「……マルス」
マルス  「はい?」
リン   「その質問はつまり、『思う存分僕を殴ってくださいお姉様』っていう意味と解釈していいのよね?」
マルス  「……えーと……」
リン   「くたばれこのエロガキがぁぁぁぁぁぁっ!」
マルス  「ギャ―――――ッ!!」

 

ロイ   「……」
マルス  「……ううう……きょ、今日のリン姉さんは本気で容赦がなかった……」
ロイ   「当たり前だよ……さすがにさっきのは僕もどうかと思ったなあ」
マルス  「……ふ、ふふ……でも、あれだけ怒ったということは、やはりまだか……」
ロイ   「だろうね、リン姉さんだって真面目な人なんだし……」
マルス  「それでも確認しておきたかったんだよ……ああ、だけどこれで、体を張った甲斐は、あっ……た……」
ロイ   「……あ、ミカヤ姉さん。ちょっとマルス兄さんの傷の治療してくれない?」
ミカヤ  「あらら、今日はまた随分と派手ね……どうしたの?」
ロイ   「うん、実は、かくかくしかじか……」
ミカヤ  「……なるほどねえ……もう、この子も本当に素直じゃないんだから」
ロイ   「って言うと?」
ミカヤ  「大好きなリン姉さんが、他の人のものになってないか心配だったんでしょう?
      ほら、最近よく草原に出かけてるから、リン……」
ロイ   「……じゃあ、あの『チェリー』って聞いて回ってたのは壮大な前フリだったのか……」
ミカヤ  「でしょうね。その証拠に……ほら見なさい、このマルスの充実感と安堵に満ちた顔を」
ロイ   「面倒くさい人だなあ……」

 

 おしまい