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Last-modified: 2013-11-06 (水) 20:18:07

634 :私のお兄ちゃん!!:2010/10/22(金) 02:32:17 ID:LtEnVku4

「おうミスト、そっちの道具箱こっちに持ってきてくれ」

「はーい!これだね、よいしょ……っと」

わたしはミスト
ここ紋章町のグレイル工務店で、従業員兼看板娘をやってます
あ、自分でいうのもなんだけど、それなりに可愛いんだからね!!

……一番見てほしい人には見向きもしてもらえないけど、さ

「はい、お父さん」
「おう、助かるぜ。
 そろそろ他の連中も来るだろうから、出迎えでもしてやってくれや」

いま話してるのは私のお父さん
この工務店で一番偉くて、しかもとっても強いんだよ!
でも、最近はお兄ちゃんにちょっと押され気味かな?

え?そのお兄ちゃんというのは誰の事かって?
それは――

ガラッ
「失礼する」
「おうアイクか、今日は早いな」
「ああ、今日は運ぶ材木がたった5tしかなかったから……」
「お兄ちゃん、おはようっ!!」
ガシッ

――今私が抱きついた、この人
いつも私を助けてくれる、私にとってヒーローみたいな人

635 :私のお兄ちゃん!!:2010/10/22(金) 02:39:15 ID:LtEnVku4

あ、お兄ちゃんっていってるけど、血の繋がりはないよ

ただ昔から一緒にいて、そう呼ばれてるだけ
なのにシグルドさんは毎回妙に絡んでくるんだよね……って話が逸れちゃった

ともかく、私はこのお兄ちゃんのことが好き
……もちろん、異性としての意味で
でも、肝心のお兄ちゃんの方はというと………

「ああ、おはようミスト。
 それといい加減離れてくれ、動きにくいぞ」

………この通り
年頃の女の子が抱きついてるのにこのリアクションをとることから分かってもらえたと思うけど、
泣く娘も黙る紋章町一のフラグクラッシャーなんだなー、これが

お兄ちゃんは確かにかっこいいし性格もいいし力持ちだし、女の子にもてるのも当たり前だと思う
だから当然、あたしにとってのライバルも多い

「お早う大将!ミスト!」
「……ワユか、というか何故お前も抱きついてくる?」

今お兄ちゃんに抱きついてきた同僚のワユもその一人
といっても皆進展がなさ過ぎて、最近はお兄ちゃん攻略同盟みたいになってるんだけどね

恋愛において、ライバルに魅力があり過ぎるという理由ならまだしも、
そもそも好きな人が女性に興味がないって場合はどうしたらいいんだろう…………はぁ

636 :私のお兄ちゃん!!:2010/10/22(金) 02:42:57 ID:LtEnVku4

……………

………

「お兄ちゃん、何してるの?」
「見ての通り、素振りだ。
 仕事も一段落したし、身体を動かしておかないと落ち着かん。
 特に今日は動き足りないと思ってたからな」

毎回思うのだけれど、お兄ちゃんには男性の本能というものが本当にあるのかなって思っちゃう
毎回のことながら、思わず呆れちゃった

「お兄ちゃんは本当に訓練が好きだね……
 大丈夫だと思うけど、怪我したらちゃんと言ってね?」
「ああ、頼りにしている」

………そこでその笑顔は反則だよお兄ちゃん

「しかし………」
「?」
「お前も立派になったものだ。
 ほんの数年前まで、かすり傷も碌に治せなかったのにな」
「えへへ、これでも努力してるんだよ?
 ……怪我ばっかりする人が近くにいるから」

一応、お兄ちゃんのことを指していったつもりなんだけど、
やっぱりスルーするんだねお兄ちゃん……

「そうか………
 これが成長した妹を見る兄の心境というやつなのやもしれんな……」

「………!」

637 :私のお兄ちゃん!!:2010/10/22(金) 02:45:50 ID:LtEnVku4

「……お兄ちゃんは」

「?」
「私の事、妹みたいだと思ってるの?」

「ああ、昔からいつも面倒みてたからな。
 妹みたいなものだと思ってるが……嫌だったか?」
「……ううんっ、そんなことないよ!」

………嘘
本当は、一人の女の子として私を見てほしい
妹としてじゃなく、恋人として傍にいたい

「そうか。
 じゃあ少し離れててくれるか?
 そろそろ訓練を再開したい」
「うん、素振り頑張ってね!!」
 
そう言いながら小走りにその場から抜け出した
笑顔を取り繕うのが、これ以上耐えられなかったから

―――ねえお兄ちゃん
   私は本当の妹じゃないんだよ?
   普通の女の子のミストなんだよ?―――

妹としての期間が長すぎたのか
私が女としての魅力に欠けているのか

それは分からない

638 :私のお兄ちゃん!!:2010/10/22(金) 02:47:42 ID:LtEnVku4

他のライバル達からは、昔のお兄ちゃんを知ってて有利みたいに思われてるけど……

近すぎて、辛いことだってある
現に今、彼の無意識の一言だけで、こんなにも私は動揺している

少し前までは、妹で満足していた自分
今でもそれは変わらない、変わってないはずだった
けど実際の自分はこんなに我儘で、浅ましくて

―――ねぇお兄ちゃん、私欲張りなのかな
        妹じゃなくて、ミストとして接してもらいたいっていうのは贅沢なのかな―――

分かってる

今はまだ、お兄ちゃんが私を女として見ることはないってことが

「……ん?
 どうしたミスト、忘れ物か?」
「ううん、ただお兄ちゃんの傍にいたかったの!」
「やれやれ、兄弟は家だけで間に合ってるんだがな……」

「お兄ちゃん一人だと心配だから、妹として傍にいてあげるんだよ?
 もっと喜んでよー」
「分かってるさ。
 お前は、良くできた妹だってこと位な」

そうだ、今はこれだけでいい
この笑顔を妹として私に向けてくれる、ただそれだけで

「……でも」
「何か言ったか?」
「ううん、別に!!」

でも、きっといつか、私だけのお兄ちゃんになってね?
それまでは、妹で我慢してあげるから

約束だよ?私のお兄ちゃん………

639 :私のお兄ちゃん!!:2010/10/22(金) 02:55:55 ID:LtEnVku4

ふぅ……

この間からイレースといいミストといい、
恋愛モノの短編ばかりで長編の筆が進まねぇ

この流れ、やっぱりこのスレは最高だなww