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Last-modified: 2013-11-06 (水) 22:34:23

347 :ヤン→デレ 番外編1:2010/11/13(土) 01:53:34 ID:zLERsWDL

エイリークを笑顔で見送った後、リノアンはすっかり冷めたカップの紅茶に口をつける。

部屋には美貌の生徒会長がただひとり。いや、もうひとり。

リノアン「今の話、聞いていた?」
???「はっ。失礼とは思いましたが……」

併設されている資料室から声が聞こえた。
音もなくドアが開かれ入ってきたのは、竜騎士見習いのエダ。

リノアン「今の話、どう思った?」
エダ「そういうことだったのか……と、得心しました。
    昔は、私のせいでリノアン様と兄の関係に傷がつくことだけはあってはならないと、兄を何度も説得したものです。
    それが、ある時期を境にぴたりと問題が出なくなったのには、そのようなことがあったのか、と」

いまや主従を越え、家族同然となったふたりだが、
それでもこの生真面目な女性は、年下の主に対して敬語で接する。
リノアンにとってはそのようなエダが微笑ましくもあり、同時にじれったさも覚えていた。

エダ「そこまで兄のことを想っていただけて、妹としてとても嬉しく、誇らしく思います」
リノアン「私も、フリージ家との揉め事であなた達が私の護衛について以降、
       あなた達にどれだけ助けられ、勇気づけられたか……感謝しています、エダ」
エダ「もったいないお言葉です。さてリノアン様、雨が本降りになる前に帰宅いたしましょう。
    兄もトラキアでの職務を終えてターラの屋敷に向かっているとのことです」
リノアン「それは重畳。では、私達で何か美味しいものでも作りましょうか」
エダ「ご心配なく。すでに料理人を手配しております」
リノアン「んもぅ。手回しがいいのは良いことだけど、あまり良過ぎてはつまらないわ」
エダ「申し訳ありません」

こうまで有能な護衛を間近にすると、なんとなくからかいたくなってしまう。
幼い頃から貴族として振舞い、学校でも常に頼られ、敬われる立場にあったリノアンは、
周囲から大人であることを求められていた。
その反動からか、身内や親しい者に対しては時々子供っぽい言動をすることがある。

リノアン「そういえばエダ、将来私とディーンが結婚すれば、私はあなたの『姉』になるわけよね?」
エダ「え? いえしかし、原作的にはリノアン様は独身で……」
リノアン「メタな話は自重してちょうだい。このスレッドでくらい夢を見てもいいじゃない」
エダ「わ、わかりました。たしかに法律的にはそういうことになりますね」
リノアン「よろしい。ではそうなったときは、エダは私のことを『姉上』と呼んでね?」
エダ「は!? ええっ!?」

想像していなかったのか、意外にも大きくうろたえるエダ。
これは使える……とリノアンの瞳が怪しく輝き、いぢりモードのスイッチが入った。

リノアン「あ、待って待って。ここはルネス女学院の伝統に則って『お姉様』というのもいいわね。
       ううんそれとも、ここはかわいく『お姉ちゃん』というのはどうかしら。
       ねえエダ、言ってみてくれない?」
エダ「は、あ、え、いや、その、あの」

348 :ヤン→デレ 番外編1:2010/11/13(土) 01:55:32 ID:zLERsWDL

いやたしかに法的にはそうだが、年齢的、倫理的におかしいんじゃないか!?

常識人の部類に入るエダだったので、何とか上手くこの場を切り抜けようと、
口をパクパクさせながら頭を回転させるエダ。
だがいくら回転させても、脳内の歯車が噛み合わず、妙な熱だけこもっていく。
もう一押し、とばかりにリノアンは切り札を切った。

リノアン「ね、エダお姉ちゃん……お・ね・が・い」
エダ「ぐはっ!」

妹系に(←ここ重要)両腕を胸の前で組まれて、上目遣いでお願いされると、エダは弱い。
常識人の名が泣くぞ。

エダ「わ、わかりました……ではその……姉上……」(←消え入りそうな声で)
リノアン「『お姉ちゃん』!」
エダ「いや、しかしそれはさすがに……」
リノアン「……ダメ?」

妹系に両腕を胸の前で組まれて(以下略)、結局承諾せざるを得なくなったエダ。
逃げ場がない。
『助けてエイリーク!』と叫んだ実はいい人も、きっとこんな気持ちだったのだろう。
ええいままよ! と、マレハウト山岳から転がり落ちる覚悟で言葉を搾り出す。

エダ「……ッ~~リノアン……お姉ちゃん……」(←超消え入りそうな声で)
リノアン「聞こえないわ。もう一度」
エダ「リノアンお姉ちゃんッ!」(←ヤケクソ)
リノアン「……っ……素晴らしいわ。ディーンと結婚すれば、
       エダにお姉ちゃんと呼んでもらえるおまけまでついてくるのね。
       ああ……早くその日が来ないかしら」

いぢりモードから恋する乙女モードに切り替わってディーンに思いを馳せるリノアン。
長い付き合いになるが、このつかみ所のなさには翻弄されっぱなしのエダであった。

エダ「ごほっごほん。リノアン様、お戯れはこのくらいにして、出発いたしましょう」
リノアン「そうね。十分楽しんだし、そろそろ行きましょうか」
エダ「あの、リノアン様……今のことは、ここだけの秘密ということで……」
リノアン「えー? せっかくあんなにかわいかったのに。私、ときめいてしまったわ。
       秘密にするなんてもったいないじゃない。ディーンにも教えてあげないと」
エダ「リ、リノアン様~~」
リノアン「うふふ、ほら、つかまえてごらんなさーい」

じゃれあいながら、エダの騎竜であるケイトにふたりでまたがる。
本降りにならないうちに屋敷に着くように、普段以上にスピードを出すというので、
リノアンは振り落とされないようにしっかりとエダに抱きついた。
ディーンと同じくらい大切で大好きな『姉』の胸の中に、安らぎと幸せを感じながら。

聖ルネス女学院の生徒会長リノアン。
彼女は優雅で気品があり、才色兼備の佳人であり、年上趣味で、
少しSっ気があって人をいぢるのが好きで、さらにお姉ちゃんっ子でもある。

ヤン→デレ 結 に続く