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Last-modified: 2013-11-06 (水) 22:41:18

381 :紋章町大飢饉:2010/11/14(日) 20:36:45 ID:0SYvk5vd

お腹が空きました………………

お給料が底をついて早三日…いろんな人たちに食べ物を分けて貰ってしのいできましたが…そろそろ限界です……

私はイレース。グレイル工務店勤めの事務員です。
人並みのお給料は貰っていますが…お給料前はいつもこう…
工務店の人たちは親切でごはんやおかずをわけてくれますけど……全然足りません…
アイクさんは少し分けてくれますけどあの人もいっぱい食べるからちょっと心苦しいです。
ミストちゃんやお友達のワユも何故か苦笑いしながらわけてくれますけど…
それと…ええっと…誰でしたっけ…
名前が出てきませんけどアーマーの人なんてお弁当丸ごとくれた上に牛丼12人前奢ってくれたのに…
なんだか最後の方はお財布を覗いて泣いてた気がしますけど多分気のせいです。
毎月親切な人です…えっと…なんていったかな…
とにかくその人すらお金が尽きてもうご馳走は無理だそうです…

お腹が空きました…このままでは餓死してしまいます…
食べ物を求めて町を彷徨っていると…何やら美味しそうな香りが……
力ない足取りで香りのする方へ行ってみますと…黒い羽の人がポリバケツをひっくり返したりゴミ袋を破ったりしてました。

ネサラ「飽食時代に警鐘を鳴らすそれがこの俺ネサラ様!
    おうおうちょっとカビ生えてるけどまだこのパン食えるじゃないか。
    この骨にもまだチキンのカスが付いてるもったいないもったいない」

………お腹が空いてる私にとって…それはまるで宝石のように貴重に見えました………

イレース「あの…」
ネサラ「ん? やらねえぞ!これは俺んだ!」

つ ワープ カァー!

黒い羽の人はどこかに行きました。
それじゃ…いただきます……

?????「ちょっと待ちなよ」

382 :紋章町大飢饉:2010/11/14(日) 20:39:15 ID:0SYvk5vd

………?

ご馳走にありつこうとした私に声をかけた男の人…
さっぱりした顔立ちの…うん…町ですれ違ったなら…女の子なら5人中4人は振り返りそうな綺麗な男の人です。

ツイハーク「…事情は知らないが…そんなものを食べたらお腹を壊すよ?」
イレース「私のお腹…丈夫だから平気です…」
ツイハーク「いやしかしな…とにかくゴミなんて食べるものじゃない。
      これをあげるからゴミはよしたほうがいい」

そういってその人は腰の袋から干し肉を出してくれました。
私は喜んで一口で平らげます。

イレース「…ごちそうさまでした」
ツイハーク「一瞬で食べたのか…すごいな」
…?
何故かその人は目を丸くして驚いてます…どうしたのでしょうか?
イレース「あの……よければもう一つ…」
ツイハーク「ああすまない。これは一つしか無いんだ。さ、食べたら片付けようか」
イレース「あ…はい」

そして私たちは散らかったゴミ捨て場を掃除しました…
つい捨ててあったパンを食べそうになる私をその人は引き止めます。

そうして掃除を終えた私達…ですが体力を使ってお腹が空きました…
ツイハーク「ふぅ綺麗になった…あぁ俺はツイハーク。君はもしかして…イレースって名前じゃないか?」
イレース「え…どうしてわかったんですか?」
ツイハーク「町の男連中の間じゃ有名だからな……可愛い顔につられて高いメシを奢らされるって」
イレース「そうなんですか?」
ツイハーク「そうなんです」
イレース「それはそうと…お腹…空きませんか?」

私は両手を胸の前で組むとツイハークさんを上目遣いに見上げます…
これをやると…何故か皆さん奢ってくれるので…どうしてかはよくわかりませんけど…

ツイハーク「いや…別に?」
イレース「!?」

…びっくりです…
いつもならそれじゃあ何か食べに行こうか…となる所なんですけど…
ツイハーク「それじゃあ俺はそろそろ行くよ。もうゴミ箱なんか荒らしちゃダメだぞ?」
イレース「あ……」

行っちゃいました…ツイハークさん…ツイハークさん…
私にご飯を奢ってくれなかった初めての男の人…どうしてでしょう…そうなると…ちょっと意地が湧いてきます…
私はツイハークさんにご飯を奢らすべく…お腹が空きました…意識が…

ぐきゅるるるるるるるるるるるるるるるるる…パタリ…

383 :紋章町大飢饉:2010/11/14(日) 20:40:00 ID:0SYvk5vd

あ…なんでしょうか…いい香りがします…意識が…広がって…世界が白く…

イレース「はっ…」

目が覚めると…そこは川原でした…

ツイハーク「……」パタパタパタ………
七輪で…ツイハークさんがお魚を焼いてます…

ツイハーク「ああ気が付いたか。驚いたよ」
イレース「…あぅ…」
ツイハーク「背後で盛大な腹の音が聞こえたと思うと君が倒れてたもんだから」
イレース「////////」
…あぅ…さすがに恥ずかしいです……
串にさしたお魚をツイハークさんが渡してくれます。
3秒で完食します。

イレース「…ごちそうさまでした…」
ツイハーク「ああ、美味く焼けてたかい?」
イレース「はい…とっても…」

な~…

よく見ると…周囲にはぬこさんが集まっています…
イレース「あの…これは…」
ツイハーク「ああ……俺の釣る魚を狙ってるんだろうね」
冗談めかしてぬこさんの背中を撫でるツイハークさんの瞳はとても優しいものでした…
ツイハーク「時間のある時はここで釣りをしてるんだ。そしたらいつのまにか集まってくるようになってね」
イレース「そうですか…ぬこさん…」
ツイハーク「食べりゃだめだぞ?」
イレース「…食べません…むぅ…冗談でも酷いです」
ツイハーク「はははは悪かった」

なんだか…麗らかな日差しとお魚の香りで…まったりとした雰囲気が漂っています。
ちょっと居心地がよくて…フワフワします…

イレース「また…ここにくれば会えますか?」
ツイハーク「ああ、日曜は大抵ここにいるよ。高いメシは奢ってやれないが魚くらいならご馳走しよう。
      腹が減ったらおいで」
イレース「はい…お腹が空いたら……それじゃ私が食べることばっかりみたいです…」

抗議しようと思ったら…
ぐきゅるるるるるるるるるるるるるるるるる……
盛大にお腹が鳴りました…/////////

川原はぬこの鳴き声と思わず噴出したツイハークさんの笑い声。
慌てて取り繕う私の声で賑やかさに満たされていました…

終わり