日本の植生帯

Last-modified: 2022-06-07 (火) 14:11:12

特色

植生成立と分布を支配する環境因子=気候。気候要素の中では、
①温度(緯度に平行する温度傾度)
②乾湿度(乾燥地中心を取り巻く同心円状の乾湿度傾度)
の二つが重要。

アジア大陸東縁部は温度傾度に支配された植生が配列する唯一の地域。日本列島の植生→湿潤・南北に長い・山地多い→植物相が多様性に帯びる。温暖湿潤→面積当たりの植物相の収容力↑+植物生産量↑。生長力は美しい植物景観を造る。

分布と特徴

日本の植生帯の分布に重要な環境因子=気候。以下の6区分は吉良竜夫に従う。

  • 亜熱帯降雨林帯(亜熱帯)
  • 照葉樹林帯(温暖帯)
  • 暖帯落葉樹林帯(冷温帯)
  • 温帯落葉樹林帯(冷温帯)
  • 常緑針葉樹林帯(亜寒帯)
  • 高山帯(寒帯)

①亜熱帯降雨林帯(亜熱帯)

南西諸島と小笠原諸島。北限は屋久島と奄美大島の間。南西諸島は総観的に照葉樹林と大差がないが、亜熱帯の植物が含まれ、入江には小規模なマングローブ林が見られる。小笠原諸島の亜熱帯林→多くはインド・マレー系、一部はポリネシア系、ごく少数はミクロネシア系や日本本土。木本植物99種中、固有種67種で西太平洋の島嶼で最大。草本植物も80種のうち、40種は固有種。

②照葉樹林帯(温暖帯)

常緑広葉樹林・暖帯林・温暖帯林と同じ。関東地方・北陸地方より西南の地方に分布。西南日本にあって、開発の歴史が古い地域を占める→社寺林・丘陵地斜面・尾根の一部にしか残存しない。垂直分布の上限がカシ林→下部にシイ林→海岸にタブ林。内陸地は沿岸に比べて少ない(暖かくても寒いなら無理)。

③暖帯落葉樹林帯(冷温帯)

温帯林を代表するブナと照葉樹林帯の間に発達する。中部地方~東北地方の内陸部に広い面積を占める。日本の著しい特徴→モミとツガが照葉樹林帯~温帯落葉樹林帯につながる推移帯を構成し、広く分布する。

④温帯落葉樹林帯(冷温帯)

ブナが代表樹種で、ブナ帯と呼ばれるが、次に多いのはミズナラ。地域によっては尾根に立地する針葉樹林が優勢だったり、ブナと針葉樹林の混合林を構成したりすることもある。本州のブナ林は日本海沿岸(典型的なブナ林)と太平洋沿岸(ブナは少ない)で組成に違いがある。四国・近畿地方の高山山頂部→針葉樹林だが、九州地方は温帯落葉樹林が成立する。

⑤常緑針葉樹林帯(亜寒帯)

エゾマツ・シラベが主要樹種で、北半球の周極と一致するが、北海道のエゾマツ・トドマツはシベリアのタイガ構成種とは異なる。ユーラシア大陸亜寒帯のカラマツ類・ヨーロッパアカマツが見られない→著しい特徴。本州の構成樹種と北海道のものは区別されている。本州の常緑針葉樹林帯は中部地方の高山地域に分布しているが、太平洋斜面と日本海斜面では異なる。もう一つの特徴=ササ型の林床植生をもつ(3つの要因で!)。エゾマツ・トドマツ林内の密な樹冠→酸性土壌→亜寒帯性常緑針葉樹林と熱帯系タケ類の組み合わせが成立。

⑥高山帯(寒帯)

森林限界以上に出現。ハイマツ低木林が代表。気象・地形・土壌要因でハイマツが×→他の群落。3低木→ハイマツ低木林の林縁近くで混ざり、林床は地衣類。風衝地→常緑性の小型低木+乾性の落葉小型低木。尾根・岩峰の周辺→高山風衝草原をつくる。風背地・残雪周辺+土壌乾性→雪田群落。高山の岩礫地→高山荒原。構造土→5。