民間R法

Last-modified: 2023-03-06 (月) 15:50:44

効果について

青木ほか(2007)は, 清拭の循環促進効果について評価する場合,乾いたウォッシュクロスを使用した研究が多いことを指摘し, 皮腐への摩擦抵抗がより小さいシルク生地製のミトンを用いた乾布清拭による末梢部マッサージ刺激が,抹消部皮腐循環反応に与える影響について検討した. 結果, 刺激中から刺激後まで末梢部皮腐の循環促進は認められなかった. 実際の温湯清拭で, より末梢循環促進効来を得るには,あらかじめ適切な温度(熱)に保たれたタオルなどで皮膚を温めておくことが大切だとする。

気管支喘息の発症予防について述べた森川(1992)は, 気道過敏性の獲得に関して自律神経が強く関与していることを指摘し, 乾布摩擦などの皮膚の鍜練を指導することが重要だと説く.
低線量放射線の健康への影響に関して講演した山岡聖典は, 適度の断続的ストレスは生体防御レベルを上げる良い効果があるとして, その例にワクチンや乾布摩擦を挙げている(古田.2011).

実施の歴史

第14回喘息児童の夏期教室では, 喘息発作に耐えられる体力作りを目的として乾布摩擦が行われた(高田,1987). 夏期教室には, 小学校2年~中学校2年生までの38名が参加し, 7月29日~8月2日の間, 毎日朝6時に起床してすぐ行われたようである.

重度・重複障害児の訪問教育に関する大庭・恵羅(2003)の研究では, 研究対象内の授業に乾布摩擦とストレッチがある. 養護学校小学部4年生の児童に対して, 教師の歌に合わせながら, 教師と母親が両側から腕・手・足の順に乾布摩擦を行い, 教師はさらに腹・背中に行っている。児童はその間, 仰臥位の姿勢である.

寝たきり重症心身障がい者の五感刺激を用いた覚醒機構への働きかけを調査した今里ほか(2018)では, 40歳代男性の皮膚感覚の刺激に乾布摩擦と爪もみを導入している.

熊澤(2007)は, 肉体面の健康法として乾布摩擦ではなく湿布摩擦を行っている. 毎日風呂に入った際, 石鹸を付けた手拭で, 足の裏, 首筋, 血管の通っている箇所を磨くという.

参考文献

・青木健・岩崎賢一・亀田真美・大久保祐子 真砂涼子・里光やよい・川上勝・松田たみ子(2007)「シルク乾布での上肢清拭刺激が末梢部皮膚循環反応に与える影響」『日本看護研究学会雑誌』30(3),p222.
・今里知世・山本秀美・熊谷あずみ(2018)「寝たきり重症心身障がい児(者)の五感刺激を用いた覚醒機構への働きかけ」『日本重症心身障害学会誌』43(2), p377.
・大庭重治・恵羅修吉(2003)「重度・重複障害児の訪問教育における授業事例と生理学的評価の試み」『上越教育大学障害児教育実践センター紀要』9, pp33-41.
・熊澤安正(2007)「私の健康法」, 『makoto』,p8.
・高田信江(1987)「第14回喘息児童の夏期教室へ参加して」『環境病態研報告』58, pp69-70.
・古田悦子(2011)「低線量放射線の健康への影響と医療・健康増進への応用の可能性について」『日本放射線安全管理学会誌』10 (1),p10.
・森川利夫(1992)「アレルギー診療の工夫 : 実地医家からの提言 (2) 小児科」『アレルギー』41(2-2), p241.