ヴィクトリア湖の「ナイルパーチ」

Last-modified: 2010-03-01 (月) 22:46:58

ヴィクトリア湖とは

 ヴィクトリア湖(英語:Lake Victoria)は、ケニア、ウガンダ、タンザニアに囲まれたアフリカ最大(68,800平方キロメートル)の国際湖です。
 その大きさを例えるとすると、東京ドーム約1,473,233個分。あまりにもでか過ぎて全く想像できませんね!
 もう少しまともな例えだと琵琶湖だと約100個分。北海道人にはチョットまだ想像しにくいですね。
 北海道の湖に例えると、日本最大の人造湖・朱鞠内湖約2867個分支笏湖だと約877個分、北海道最大のサロマ湖でも約459個分、北海道の面積が約77,982平方キロメートルなので、どれだけ大きいか想像できるでしょうか。九州なら2個は収まってしまう大きさです。
 これでもまだ湖水面積世界第3位なのだから世界は広いですね。ちなみに第一位は有名なカスピ海(374,000平方キロメートル)。半端じゃなく大きいけど塩湖なので釣りのジャンルで言えば名前の通り(ソルトウォーター)扱いなので別物とすると、第2位のアメリカ五大湖のひとつスペリオル湖(82,200平方キロメートル・淡水)がカスピ海とは突き放されているけど、淡水湖世界最大ということになります。これも想像を絶する大きさ。 
 まず、この巨大さを頭に入れて置いてください。これだけ大きければどれだけ魚がいるか想像を絶することになります。

ヴィクトリア湖の歴史(引用・Wikipedia)

 ヴィクトリア湖に関する最初の記録は、アフリカ内陸部に金や象牙などの交易路を持っていたアラブ人交易商たちによるものであるとされていて、1160年頃の地図にすでにヴィクトリア湖の詳細な表現がなされていて、ナイル川の水源であることも示されていたそうです。
 名前の由来は、ヨーロッパ人がナイル川の水源を探して辿り着き、当時のイギリス女王ヴィクトリアの名を取って、ヴィクトリア湖と命名したそうです。実際はナイル川の主流の一つ、白ナイル川の源流です。
 また、世界中で20ほどしかない古代湖のひとつで、古代湖とはおよそ十万年以上存続している湖の呼び名です。普通の湖の寿命は数千年から数万年と言われていて、主な死因は流入する河川からの堆積物で湖が埋め立てられるためだそうです。
 そんな古代湖では水域が長期間に渡って存在するため、固有種と呼ばれるその湖に適応して独自の進化を遂げた生物による豊かな生態系が見られます。

古代湖

 以下が古代湖といわれているもののリストです。

  1. オーリッド湖(バルカン半島)
  2. プレスパ湖(バルカン半島)
  3. ガリラヤ湖(イスラエル)
  4. カスピ海(中央アジア)
  5. アラル海(カザフスタン-ウズベキスタン)
  6. イシク・クル(キルギスタン)
  7. バイカル湖(ロシア)
  8. フブスグル湖(モンゴル)
  9. 雲南省の湖沼群(中国)
  10. 琵琶湖(日本)
  11. ラナオ湖(フィリピン)
  12. タホ湖(アメリカ合衆国)
  13. マラカイボ湖(ベネズエラ)
  14. チチカカ湖(ペルー-ボリビア)
  15. ボスムトゥイ湖(アフリカ)
  16. タンガニーカ湖(アフリカ)
  17. ヴィクトリア湖(アフリカ)
  18. エーア湖(オーストラリア)
  19. ボストーク湖(南極大陸)
     日本の琵琶湖も古代湖なんですね。琵琶湖には固有種ビワマスがいます。巨大なヴィクトリア湖には400種近くの固有種がいたといわれています。
     

「ナイルパーチ」とは

 ナイルパーチは、スズキ目アカメ科に属する魚。スズキといえばシーバス。肉食性で、小魚やエビなどの甲殻類を丸呑みにする大きな口を持っています。さらに最大で体長2m、体重200kgという大型の魚です。
 こいつは食べるととてもおいしい魚で、日本でもレストランや給食に出るほどメジャーなものです。その時はナイルパーチではなく、「スズキ」や「白スズキ」と呼ばれます。
 

ヴィクトリア湖の悲劇

 今まで湖の話をしてきて、突然ナイルパーチの話を出してきて何なんだ?と思ったかもしれませんが、1954年の英国植民地時代にヴィクトリア湖で魚を取りすぎて漁獲が減ったために、ナイルパーチが食用として放流されました。
 しばらくの間は、食用としての漁獲高も上がり、ゲームフィッシングとしても観光客を集めうまくいっているように見えていたのですが、もともとヴィクトリア湖に住んでいた魚のほとんどは草食性で、ナイルパーチは生態系の最上位に当たる物となっていました。
 結果的には、固有種は200種程度まで減り、絶滅していなくても絶滅の危機に瀕している魚も多くいます。さらに、水草を食べていた魚が激減したことで藻類が大量繁殖してしまい酸欠状態から更なる絶滅を引き起こしているというのです。これまでにハプロクロミス亜科のシクリッド数百種が姿を消し、そのうちの多くは絶滅したと考えられています。また、「ンゲゲ」(ngege)と呼ばれる固有種のティラピアも絶滅しました。ナイルパーチによる生態系の破壊とその輸出で支えられている近郊の社会の貧困と荒廃は、ドキュメンタリー映画『ダーウィンの悪夢』で取り扱われています。
 

そして日本では

 今までのことをおさらいしましょう。

  • 九州の倍はある湖に、1種類の外来種を入れただけで固有種は半分近く絶滅かそれに近い状況に追い込まれた。
     
     それなのに、こんな狭い日本にはブラックバスブルーギルといった外来種が持ち込まれています。
    しかし、命あるものに変わりはありません。

 

極悪魚ブルーギル

 ブルーギルは体長40センチほどまで成長するが、日本では25センチ程度のものが多い。湖や池など、水の流れがあまりない淡水域に生息していて雑食性。水生昆虫、甲殻類、貝類、小魚や魚卵などいろいろな小動物を捕食するが、餌料生物が少ないときには水草も食べるらしい。
 ブルーギルの繁殖力と生命力、捕食力は日本の池や湖の生態系には十分脅威で、生態系維持と漁業の観点から日本中の湖沼でその存在数はかなりの問題とされています。しかし、このような主張を過剰反応と考える見解もあります。
 簡単に釣れるが、魚体の大きさから引きは弱いため面白みに欠き食材として利用することもほとんどないため釣り人からの人気はない上に、他の魚の卵を食べることで在来種の減少または絶滅が危惧され、網にかかったブルーギルを取る際に背びれが手に刺さるため、漁業従事者からも大変嫌われています。
 追い撃ちで、国などからは釣り上げた際に再放流しないことが推奨されている。国家を挙げて抹殺命令が出ているのです。しかし、投棄するとブルーギルはその場で腐り、烏などの餌になってカラスを増やす原因になったり、夏は異臭や害虫を増やす結果になり周辺環境を悪化させるという、ただでは死なない根っからの極悪魚なのです。琵琶湖には回収ボックスが設置されているほどだが、ブルーギルの数や繁殖力をみれば微々たるものであるかもしれません。