讃歌

Last-modified: 2014-10-29 (水) 09:52:05

戦場に立つ事を生とし、戦果を誉れとしてきた。
散る瞬間を美徳としてきたのだ、私は。



Meowritrap / 讃歌



粉塵の中感じるものは、いつも同じものだ。
硝煙と血の匂い、始まりと終わりを告げる発砲音。
自らを奮い立たせる為か、命乞いかも分からない叫び声。
唯一の道標、それは私が抱く義、私が私を動かす規律。



「ありがとう」



ハッとすると、其処は平和な街の公園だった。
自然と笑顔に溢れた、人々から愛される憩いの場。
そう、私は母国を離れ、この街の騎士団に入隊したのだ。
過去も遠く感じる、それ程に穏やかで、愛に満たされている。
街を歩けば、感謝の言葉も、再会の挨拶も、ごく当たり前のように聞こえてくる。
この街に来て、私も「有難う」と言い合えるようになった。



「硝煙の匂い」



街を巡回していると、ふと思う時がある。
私は自分の義に忠実に生きていた。
戦場ではそれこそが絶対、だが今はどうだ。
今、私は仲間と笑い合う日常を「日常」と認識している。
私の標は今、何処にあり、何処へ向いている?



答えはもう出ている筈なのだ。
この街の平和を願い、人々の笑顔を守る。
それが誉れであり、私の動く規律。
平和である今こそ、誇りに思うべきなのだ。
しかし、安寧に飲まれて行く私の心は藻掻く。



讃歌