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Last-modified: 2007-07-12 (木) 17:01:01

D-霧隼翔

機械的に並べられた高層建築物の風に何度か目の銃声が乗った。しかし雑踏の音はやまない。誰も火薬の弾けた音を気にすることなく、一つの目標物へと捜索する。
「クソっ…!」
少年は吐き捨てて次弾を装填する。きりがない。上官だったスパイを撃ち殺してから、、すでに30分以上が経過している。軍本拠地に近いというのに、いまだ援軍は来ない。
再びライフルを構え、物陰から群れの中に鉛弾を撃ち込む。心をこもらせない銃弾は群れを構成する1体の、甲羅のような皮膚に当たって弾かれる。撃たれた生命体が衝撃でよろめくのを確認して少年は再び身を隠し、対策を練る。
ここに隠れていてもいつかは見つかったり、味方の飽和攻撃でやつらと一緒に人の形の炭となるのは時間の問題。だから脱出しなければならないのだが……
「弾が、効かない」
彼は忌々しそうにつぶやく。退路を確保しようにも撃退のしようがないのだ。手榴弾も1個しか残っておらず、この旧式のライフルで連射していてもすぐにジャムるのがオチだろう。
あのロケット設備は今どうなっているんだろうか。…おそらくは破壊されているだろう。
他に生存者はいるのだろうか。…外がこんな様子じゃその望みも薄い。だから焦っているのだ。
「死ぬのは、同じか」
手榴弾を手に取り、安全装置を外す。これが起こす程度の爆発で、どの程度道が開けるのだろうか。奴らの群れを再び覗く。その中に比較的人型に近いのを見つけたような、気がした。
……気のせいだろう。自分の上官だった人も、やつらと同じ――作られた人体、ホムンクルスだった。
爆撃部隊でもやってきたのか、ジェット機の爆音が建物に響いている。早く脱出しないと巻き込まれてしまう。
手榴弾を投擲。空中でピンが外れ、一回地面に当たる音、続いて爆発。不運にも爆心地となった一体が砕け、体を部位へと変化させながら跳ね上がる。
あちらへと奴らが気を使っているうちに彼は脱出を試みようと、体を通りへと飛び出させる。すばやく左右を確認。しかし身を隠せそうなものはすべて破壊されていた。
少年が希望をなくし、銃をこぼした。地面に落ちた銃は暴発して近くのホムンクルスの腹部を突き抜ける。その発砲でおよそすべてのホムンクルスが、少年へと向いた。

 
 

その時だ。
ドガン!
突然、目の前の地面がえぐれ、その周りにいたホムンクルスも砕け散った。
「え?」
誰…?
そう思っていると、目の前に何かが降り立った。
「大丈夫かい?」
機械の塊に見えなくもないその容貌。しかし四肢にある機械の隙間から、人間の体らしい部分がのぞいている。
腕の外側、脚の正面についた機械。背中にも大きなリュックのような機械を背負っている。頭にはヘッドマウントディスプレイ。それによって眼が隠れているのと、逆光なのとでその表情はわからない。大きな、バズーカのようなものを腕で抱えている。
「こちらD-1。都市部防衛小隊隊員と接触。保護しました。」
少年の声だ。
「あの…」
「大丈夫みたいだね。良かった。ここは僕たちが押さえるから、君は逃げて。」
振り返って、機械を身にまとった少年が微笑んだ。
「は…はい…」
立ち上がる少年兵。
「ディアン!なにボーっとしてんのよ!」
その時、少女の声が飛行機のエンジン音のような轟音とともに二人の耳に飛び込んできた。
「わかってるよ。アレス。」
「ほんとーに分かってんのぉ?」
ディアンと呼ばれた少年のすぐそばに降り立った、もう一人の機械に身を包んだ少女。
表情はディアンと一緒で、ヘッドマウントディスプレイに隠れてわからない。
機械のついている場所や形はディアンと全く一緒だが、その色は緑を基調としたディアンの色とは対照的に、赤い。右腕上腕下腕の機械部分に、もとのものと同じくらいの大きさのパーツが付いている。その右腕本体の先、本来手のあるべき場所は機械に覆われていて、代わりにそのうえについたパーツの部分に機械の手が付いていた。
「ま、なんだっていいけど……」
アレスが大きく右手を振りかぶった。
「ねっ!」
腕を真横でスイングさせると、パーツから、機械の手を先端とした刃のついた鎖が飛び出す。
それは手の先についた小型のブースターによって機動を修正しつつ、ホムンクルスの集団の周りを囲むように飛んでいく。ちょうど、先に重りのついた縄が、細いものに巻きつく時のように。
そして一周してきた手が、鎖をつかんだ。これで、ホムンクルスは鎖に巻き取られたことになる。
「うらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
アレスが叫ぶと、鎖が白熱し始めた。集団の外側にいたホムンクルスの鱗から、黒い煙が出はじめる。
アレスが、腕を引いた。
鎖が、ホムンクルスを焼き切る。
文字通り、焼き切った。切断面は焼かれ、ホムンクルス特有の青い血も出ない。
「う……あ……」
タンパク質が焼けるときの独特の臭いに顔をしかめる少年兵。
「まだいる!ラティ、しっかりやんなさいよ!」
黒い煙の向こうに人影を見て、アレスが叫ぶ。
[分かっているわ。貴方こそ、もう少し奇麗にできないの?]
アレスのバイザーから、透き通るような声がしてきた。
「なんですってー?!」
アレスが叫んだ次の瞬間。
斬!
アレスが焼き切った同胞を踏みつけ、こちらに侵攻してきていたホムンクルス達が、真っ二つになる。
飛び散った鱗や血がすべて地面に落ち、視界の晴れたその向こうに、身の丈よりも少し大きいくらいの剣を持った少女が現れた。
装甲の色は青。腰の左右にも、二本ずつ剣をさしている。
「ラティ、あんた人に奇麗にやれって言っておいて……」
綺麗、とはいえないが派手なラティという少女の登場に、頬を引きつらせるアレス。
「あなたのやりかた、臭いがひどいのよ。」
声の調子を変えず、、ラティが答える。
「あんたこそ、そんだけ自分のアーマーに返り血浴びといて気持ち悪くないの!?」
「悪臭で、助けた人の気分まで悪くさせるよりましだと思うわ。」
「なんですってぇぇぇぇ……」
アーマー越しに伝わってくる、アレスの殺気。
対して、それを全く気にしていないラティ。
ディアンは、脇で肩をくすめている。
その時、上で青年の声がした。
「喧嘩してどーすんだよ!」
そして、その声と同時に大量の弾丸が空から降ってきた。
穴だらけになるホムンクルスたち。
「セト!」
アレスが上を見て叫ぶ。
と同時に、白い塊が少年兵の視界を遮った。
機械の塊と錯覚するような巨体が、音もなく着地する。舞い上がる土煙。
逆光に立つ、神か、天使か。
はたまた造られし人間を狩る、四人の鬼神か。
セトと呼ばれた青年が、持っていたマシンガンを投げ捨て、腰のホルダーからナイフを引き抜いた。
走り出した先には、二体だけ取り残されたホムンクルス。
「らああああああああ!」
セトが、一体のホムンクルスの喉にナイフを突き立てた。
「ひとつ!」
ホムンクルスは両手でナイフを引き抜こうとしたが、途中で力尽きる。
もう一方のホムンクルスが、持っていた銃を構えた。
「ふたつ!」
ナイフから手を放し、セトが飛び上がる。
今度は肩からナイフを取り出した。
上から降りてきた勢いで、ホムンクルスの脳天にナイフを突き刺すセト。

Few days ago………
「………あなたたちには、これらのパワードスーツの実戦における機動テストをしてもらいます。」
スクリーンの光を後ろに、ウーマンスーツに身を包んだ女性が言った。
「グレイ中尉、それはつまり……」
グレイ中尉と呼ばれた女性の話を聞いていたうちの一人、セトが手を上げていった。
「身も蓋もない言い方をするならば、実験台になれということね。」
グレイが、セトのセリフを先取りしていう。
「今まで我々零の世界は、装甲車や大火力の爆雷などで物量作戦を仕掛けてくる壱の世界に対抗していました。が、市街地決戦や荒れ地での決戦においては汎用性の乏しさがあり、主力兵器と呼べるものではありませんでした。」
スクリーンに映し出される、荒野を前に立ち往生する装甲車や、市街地上空を旋回する爆撃機。
「そこで開発されたのが、この四種類のパワードスーツ、ってワケ?」
アレスが言う。
「ええ。ラズロフ財団の出資のおかげでね。」
再び、四つのパワードスーツがスクリーンに映し出される。
「改めて、あなた方を、汎用戦闘装甲兵器、Devilシリーズのテストパイロットに任命します。」

first wrote2007/6/19
  • ちょっと荒削りかなー。ま、編集が盛り上がれば。とりあえず、盛り上がれ! -- 霧隼翔 2007-06-19 (火) 23:13:00
  • 襲われている少年兵は[戦う意味]の工ルフェ?ん~でも武器が微妙に違う気が・・・ -- レト? 2007-06-21 (木) 19:00:18
  • いちおうエルフェのつもりで書きました。ので、武器変えます。 -- 霧隼? 2007-06-23 (土) 10:21:18
  • 自分はエルフェはあそこで死んだものかと思ってたのでそうですね・・・人造人間の中でもことさら人の形に近いやつらがスパイとしてまぎれていることを4人に知らせて、そこから物語り発展させれそうですね。泥沼になりそうですけど・・・ -- レト? 2007-06-26 (火) 18:15:50
  • エルフェの行動が軍人らしくなかったこととか気になる部分を修正。……特につなぎの部分誰かお願いしますorz -- レト? 2007-07-01 (日) 21:40:03