激痛をお借りしました

Last-modified: 2025-10-20 (月) 15:59:06

『激痛をお借りしました』(げきつうをおかりしました)は、日本のテレビドラマである。主演は稲原史明が務めた。

                       概要
ミステリードラマの代表格。連続ドラマシリーズとして放送され、稲原史明を始めとする俳優たちの、出世作にもなった。布川マサミの同名小説を原作に、「ミス・ドラマ」枠で放送された。史明はこの作品を、「夢に出てくるほど気に入っている」と語った。

                      あらすじ
「朝起きたら、目の前に、女性が立っているんです」

電話越しに聞こえる声は、あまりにも不安そうで、パニックを起こしているように聞こえる。「女性」は一体なぜ、依頼者の目の前にいるのか。

その真相は、誰も予想できない、とても恐ろしいものだった。

                幼少期編(1998年~1999年放送)
少年・北倉雄二は、小学3年生が始まってから、夏休みを迎えようとしていた。祖母にも会えるので、本当に楽しみだった。雄二は両親と共に、祖母の住む屋敷に入った。しかし、そこに祖母の姿はなかった。その僅か2分後、雄二たちは屋敷の庭で、倒れている祖母・美代子の姿を発見した。

美代子の死は、まだ幼い雄二の心に衝撃を与えた。美代子の死因は「不慮の事故」。しかし、美代子の死には不可解な点があったのだ。

まず、美代子の遺体についていた深い傷。これは事故によってついたものとされたが、何者かに刺された可能性が現れた。当時、美代子が住む地域では、連続殺人事件が発生していた。罪のない高齢者の女性が、たびたび殺害されていたのである。その犯人の名前は軽川仁(かるがわ ひとし)。

仁は以前、妻に暴力を振るった罪で起訴され、逮捕された過去があった。そして出所後、再び別の事件を起こし、美代子の住む町で連続殺人事件を起こしたそうだ。

雄二は、美代子の死因が「他殺」だった場合、もしかして犯人は軽川仁ではないか。そう思っていた。

                中年期編(1999年~2000年放送)   
その後雄二は高校を卒業し、恋人同士だった女性・石宮由紀と結婚。由紀との間には、2人の娘が生まれた。しかし心のどこかで、美代子の死を忘れられない気持ちが残っていた。まだ事件は謎のままだが、もうそろそろ真相を知りたい、雄二はそう思っていた。

そんな中、事態は急展開する。雄二はコンビニの帰り、夕方の道を車で走っていた。すると高速道路に、いきなり男が飛び出してきたのだ。急ブレーキしたが、間に合うことなく男を轢いてしまう。雄二は、素直に警察に申し出ようと思った。が、轢き殺した男の顔を見てそれをやめた。

そう。雄二が轢いたのは、美代子を殺したと思われる殺人犯・軽川仁だったのである。雄二は仁が飛び出してきた方向を見渡すと、人があまりいない住宅街だった。さらに奥を見ると、小さな一軒家が見えた。雄二は嫌な予感がして、車を住宅街へと走らせた。

一軒家の近くに行くと、そこには広い庭がある。おそらく、この家の主人の庭だろう。なんとその庭で、年をとった女性が倒れていた。

                老年期編(2000年~2001年放送)
女性はこの家の住人と見られる。もしかして仁は、この家に侵入して女性を殺害し、その場から逃走したのではなかろうか。そんな中雄二は、逃走していた仁を轢き殺してしまった。そう考えれば辻褄が合う。一方その頃、雄二が仁を轢いた高速道路に、警察たちが集まっていた。

雄二は家に帰って、心臓の動悸がしていた。そして大好きな妻の由紀と、可愛い娘たちに癒やしてもらうことで、動悸を落ち着けようとした・・・はずだった。

「あなた、離婚しましょう」ーーーーそう由紀に告げられたのだ。一体どうして?雄二は考えられなかった。気づけば由紀と娘は、雄二の視界から消えていった。話によれば、由紀は雄二の轢き逃げを目撃していた。

由紀は轢き逃げを目の当たりにし、すぐ警察に通報する。「うちの夫が人を殺しました」と。何時間経っても、雄二が警察に出頭しなかったので、由紀は恐ろしくなり離婚を決意。もうこれ以上、危ない雄二と暮らすのは、精神的に無理だったのだ。

                    エピローグ
雄二は轢き逃げの罪で、翌日に逮捕された。一方で、あの日仁が殺した高齢女性は、無事に家族葬で葬儀が行われたという。女性には孫がいたらしく、孫たちは深く悲しんでいた。それから19年後、雄二は出所した。そして現在は家を買い、そこで暮らしているという。

しかし、雄二が一人暮らしを始めてから、異変が起こり始める。雄二の部屋に、「女性」が現れるのだ。

「女性」はおそらく、雄二の元妻・由紀である。由紀は刃物を持っており、雄二を強く睨んでいる。雄二は警察に電話をかけた。「朝起きたら、目の前に女性が立っているんです」と。

由紀は「ねえ、あなた・・・。どうして出所してきたのよ・・・。私はもう、あなたに会いたくない。あなた無しの生活がいい。なのに、出所なんかして・・・。絶対に許さないから」と、雄二に向かって刃物を振り下ろした。

雄二の叫び声が、朝の柔らかな空気を、一瞬にして壊していた。まるで激痛を借りるように。〈おわり〉