みなみけ三分類
一.はじめに
週刊ヤングマガジンで連載中の『みなみけ』という作品を御存知でしょうか。週間ヤングマガジン連載、桜場コハルによる作品です。単行本は既刊六巻、三回程アニメ化もされている人気作品です。御存知でない方、ここでこの文章を読むのをやめてしまわず、是非是非最後までお読みください。人生の役に立つ知識満載です。
『みなみけ』は南さんちの三姉妹を主人公として、様々なキャラクターが登場する作品です。この論稿では、その三姉妹を、人間を分類する手段として考えて見ます。みなみけ三姉妹が、分類学における優れたツールであることをみなさんにお伝えしたいのです。
二.三分類
「この世の全ての人間は、みなみけの三姉妹を用いて分類できる」というのがこの論稿の主題です。みなみけ三姉妹、すなわち長女ハルカ、次女カナ、三女チアキの三つのタイプに分類できるのです。
画像右からハルカ、カナ、チアキ
では、みなみけ三姉妹の特徴を軽く述べておきます。私の技量不足により、あまり適切な解説ができませんので、正確を期すためにもぜひ本編の『みなみけ』を御覧ください。
◎長女ハルカ:寛大・温厚・万能型
◎次女カナ :トラブルメーカー・ムードメーカー・滑稽
◎三女チアキ:辛辣・ドライ・天才肌
「本当にこんなので分類できるの?」と疑問の方もいらっしゃるかと思います。しかし、みなみけ三姉妹による分類は歴史的にみても正当性を有しているのです。
それを示す一例として、『若草物語』を取り上げてみましょう。一八六八年に発表された『若草物語』には四姉妹が主人公です。この四姉妹、病弱の三女を除いた三人、キャラ造形がみなみけ三姉妹そのものなのです。
『若草物語』のマーチ家四姉妹。
左上:長女マーガレット(メグ) =ハルカタイプ
右上:次女ジョーゼフィン(ジョー)=カナタイプ
中央:三女エリザベス(ベス)
左下:四女エイミー =チアキタイプ
長女はハルカタイプ、次女はカナタイプ、四女はチアキタイプです。
・メグ(ハルカ)とエイミー(チアキ)は明るい髪色、ジョー(カナ)は少し暗い髪色
・メグ(ハルカ)をエイミー(チアキ)は特に慕っている
・ジョー(カナ)とエイミー(チアキ)がよくぶつかる
・ジョー(カナ)に想いを寄せている男の子をエイミー(チアキ)が好きになる
などなど、みなみけとの類似性が多数指摘できます。
言うなれば、みなみけ三姉妹は百年以上前から存在するキャラ造形のテンプレを忠実に踏襲しているのです。みなみけ三姉妹のようなキャラ造形は、ストーリーを動かすのに向いているので、ここで挙げた『若草物語』以外にも多数の作品に登場する姉妹たちに用いられているのです。
三.実際に分類してみよう
では、みなみけ三分類を用いて、実際に身近な人々を分類してみましょう。しかし、ここで分類する際に絶対に守らなくてはいけない規則があります。
●規則その一 分類数を増やさないこと
実際の人物を分類していくと、なかなか三姉妹にあてはまりにくい人も出てきます。そんな人を分類するときに、他のみなみけの登場人物を用いて、「マコトタイプ」だの、「ハヤミ」タイプだの追加してはいけません。
次々とタイプを増やしていくのはいたずらに混乱を招くだけですし、分類数を三つにしぼるという「分類モデルの簡素化」により、適切な分類をすることができるのです。つまり、マコトタイプはカナタイプに、ハヤミタイプはハルカタイプに分類すれば良いのです。
●規則その二 パーセンテージで表さないこと
さて、今述べたように、明確に三姉妹に分類しにくい人が存在することは事実です。そんなときに、「あの人はハルカ70%のチアキ30%だ」などとパーセンテージを用いてはいけません。
これもまた、いたずらな煩雑化を生み出しますし、パーセンテージの組み合わせは無数にあるため、三分類による分かりやすさを殺してしまいます。
この二つが、みなみけ三分類において遵守せねばならない規則です。
なぜこの二つの規則を守らなければならないかはもう述べましたが、より分かりやすく理解するために「血液型分類」を思い浮かべてみてください。
血液型による性格分類は、分類数は四つです。Rhマイナスとかプラスとかでわけたり、HLA型による分類を組み合わせたりせずに、単純なABO分類が用いられます。これは「規則一」と共通するところです。
規則二に関して言うと、血液型分類は個々人が何型た明白なため、パーセンテージ分類を用いることが難しいです。まれに、「あなたはA型70%で、B型30%の性格」などと分類するものもありますが、血液型分類全体から見ると、浸透してるとは言い難いです。
ただ、ここで注意点。血液型による分類は、みなみけ三分類と違って科学的、学術的な正統性があるものではありません。「血液型を決定する物質は性格には影響しない」などといった批判も寄せられています。
みなさんも、血液型分類を始めとした、怪しげな分類に惑わされないように御注意下さい。それらの分類を信じるか、みなみけ三分類を信じるかは、皆さん次第です。
四.組織論としてのみなみけ三分類
みなみけ三分類を実際に身近な人に試してみて下さい。すると、ハルカタイプが多く、カナ、チアキタイプは少ないことに気付くでしょう。これはあなたの周りの人が偏っているのではなく、極めて自然なことです。
概算ですがハルカタイプ65%、カナタイプ15%、チアキタイプ25%くらいが平均値でしょうか。「もっとハルカタイプが多い」という主張も、近年、識者の間で有力になっています。
ここから、健全な組織構成のために、みなみけ三分類を用いるというプランへと発展していきます。
例えば政治家。正直、カナタイプの人に政治を任せたくないですね。幸か不幸か筆者はカナタイプです。政治家でカナタイプの人間、近年では小泉純一郎元首相が、カナタイプではないかという主張が一部識者の間から出されました。
ここでは例として、ナチスの幹部をとりあげてみましょう。先の節で触れた血液型分類の大元を生み出したのはナチ党ですし、ナチ党分類との関わりが深いのです。ここでナチ党をとりあげるのは極めて自然です。決して筆者の専攻だからではありません。
下の分類表を見て下さい。ここではナチ政権幹部の中でも、
ナチ党寄りの人物を中心(経済省シャハトや法相ギュルトナーは党から遠いので除外)にとりあげています。
ナチ党幹部分類表
役職 | 名前 | みなみけタイプ |
---|---|---|
総統 | ヒトラー | カナ |
総統代理 | ヘス | カナ |
空軍大臣・国家元帥 | ゲーリング | カナ(注) |
宣伝大臣 | ゲッベルス | カナ |
党官房長 | ボルマン | ハルカ |
外務大臣 | リッベントロップ | カナ |
親衛隊全国指導者 | ヒムラー | ハルカ |
国家保安本部長官 | ハイドリヒ | チアキ |
(注)ゲーリングがカナタイプかについては識者の間にも議論があり、筆者のようなゲーリングの行政能力を高く評価するものはハルカタイプであるとするが、ここでは通説に従う。
まず目に付くのが、驚異的なカナタイプの多さです。先程「政治を任せたくない」と述べたカナタイプの多いこと。一般的な比率を遥かに越えています。
ヒトラーがカナタイプであり、小泉元首相がカナタイプでないかという議論の存在を合わせて考えると、「煽動政治家」とみなされることのある政治家ははカナタイプに分類されることがあるといえるかもしれません。
こうしたカナタイプのあまりの多さがナチ政権崩壊に繋がったと言えるのではないでしょうか。F.ノイマンがナチ政権を「ビヒモス」という怪物であると評したような、システム不在のいびつな多頭的支配体制は、物事の中心に立ちたがるカナタイプの多さによって引き起こされていたのです。
物事の中心に立ちたがるカナ達の図
五.終わりに
みなみけ三分類のアイデアを考え付いたのは私ではなく、私の友人K(『こころ』を意識したわけではありません)です。もちろん、肉付けの部分では私も積極的に関わっています。友人Kに、この場を借りて御礼申し上げます。
友人Kと身の回りの人を次々と分類していったのですが、どうも優秀な人はハルカタイプに分類され、滑稽な振る舞いの多い人はカナタイプに分類される傾向があるような気がしてきたのです。先にも触れましたが私はカナタイプに分類され、友人Kはハルカタイプです。不本意ながら、我々2人の分類は満場一致でこの結果であり、当人としても妥当なものだと考えています。
友人Kに「駄目な人をカナタイプに分類しようとしているのではないか」と問いただすと、「そんなことはない。ポル・ポトはハルカタイプだけど駄目だ」という回答でした。
よくある相性診断のように、三タイプ間の相性も設定されています。原作である『みなみけ』に忠実に、チアキタイプはハルカタイプに弱く、カナタイプはチアキタイプに弱く、ハルカタイプはカナタイプに強いというものです。「ハルカは他二タイプに強く、カナは他二タイプに弱い」という原作に忠実とは言え、カナタイプの私にとって見れば悲しい相性設定です。
このことも友人Kへ「やはりカナタイプを貶めようとしていないか」と尋ねたところ、「そんなことはない。スターリンはハルカタイプだけど駄目だ」という回答が得られました。
ちなみに、当研究会では平均よりチアキタイプが多いです。みなさんも身の回りの人をみなみけ三部類により分類することで、あらたな地平が開けるでしょう。
※画像権利者様へ
著作権的に問題があるようでしたらhedrounion☆gmail.comまでお願いいたします。(☆を@に変えてください)早急に対応致します。