キハ40系JR西日本

Last-modified: 2017-03-05 (日) 23:10:30

車両概要

1977年(昭和52年)から1982年(昭和57年)にかけて計888両が製造され、日本全国の非電化路線に投入された。現在でもJR旅客鉄道各社に多数が在籍し、主に普通列車用として広く用いられている。電車に近い車体構造の大型気動車で、客室設備の改善や走行機器の刷新なども図られているものの、動力性能についてはほとんど向上していない。
区分としては、片引き戸のキハ40形(両運転台)、キハ48形(片運転台)と、両引き戸片運転台のキハ47形に大別される、投入線区の気候などに応じた仕様の違いや、便所の有無などによって番台区分されている。
近年では事故や災害、より高性能で維持費の低廉な新型気動車への置き換えにより、廃車や保留車が発生しておりなかでもJR東海では全廃となり、外国などへ譲渡された編成もある。
西日本旅客鉄道には、キハ40形63両(すべて2000番台)、キハ47形189両(0番台108両・500番台3両・1000番台75両・1500番台3両)、キハ48形5両(0番台3両・1000番台2両)の計257両が承継された。これはJR旅客鉄道会社の中で最大である。

車体

落成時期の関係から製造当初は全車が明るい朱色一色(首都圏色)で落成しており、従来の一般形気動車の標準塗装であった国鉄色で落成した編成は存在しない。
前頭部はキハ66系のものを踏襲したもので、踏切事故・衝突対策として高運転台化、運転室長さの拡大、前面の外板の強化、床下前面にスカートを装着している。運転台窓は運転席からの視認性に配慮した側面部に回り込んだパノラミックウィンドウを用い、前照灯は前面窓上にシールドビームが2灯、尾灯は在来形気動車よりも高い位置に2灯、それぞれ左右に振り分けて設置され、貫通路直上には列車種別表示器も設けられている。(列車種別表示機は手動であるものが多い)

車内

客室内壁の化粧板は、在来形気動車に比してやや明るい色調でまとめられている。初期に投入された車両は、薄茶色や淡緑色であるが、中期以降の車両はクリーム色に統一されている。座席はボックスシートを基本としてドア付近にのみロングシートを配したセミクロスシートとした。ボックスシートはシートピッチをキハ58系までの急行形車両と同等の1,470 mmとし、一般形気動車として初めて人間工学を採り入れた新形状のものとした。

扉はいずれもステップ付で半自動扉であるが、ドアエンジンは当初からの半自動式用ではなく、自動式用ドアエンジンの指令回路のみを変更して半自動動作に対応させており人力での開閉はやや重い。また、寒地・酷寒地形で使用されるものについては、客室と出入り台の間に仕切り扉を設けたデッキ付きとし、寒冷時の保温を図った。

暖房、冷房機器

暖房は温水暖房式であるが機関廃熱および機関予熱器での軽油燃焼による熱を使用して床下の熱交換器で温風を作り車内に循環させる方式を採用した。機関の冷却水を床下の熱交換器に通し、ここに外気および室内空気を循環させて暖める。なお、気温が低い時、下り勾配、停車時など、機関の廃熱だけでは冷却水温が上がらない場合には、機関始動用の機関予熱器を使用して補助的に加熱する。これは機器搭載に床下スペースを必要とするという難点があるものの、温水管を車体内に引き通す必要がなく、構造も単純であった。それに加えて運転室内には自動車用温水暖房装置が併設されている。
その反面、冷房装置は製造の段階では設置されず、準備工事の施工も見送られた。当時は地方路線の冷房化は時期尚早であると判断されたことに加え、連続定格出力150 - 180 PSと非力なエンジンが標準だったためである。

トイレ

便所は組み立て式で、キハ40形は出入り台側から内開き扉、キハ47形・キハ48形は側面の客室側引き戸から出入りする方式とし、水タンクは屋根上搭載の重力給水式としてポンプや空気配管を不要としている。汚物処理装置は搭載を考慮して機器搭載スペースを確保する準備工事が行われたが、地方路線の汚物処理施設整備がほとんど進んでいなかったため、全車が従来通りの垂れ流し式となった。

運転台

運転台は機器配置・座席形状とも人間工学に配慮した構造となっている。また、側面にタブレットキャッチャーとその防護板を設け、タブレット閉塞式での通過運転に対応した。

改造

継承後様々な改造が行われているが、形式と番台の変更を伴う改造は、キハ40形・キハ47形の座席のロングシート化による改番とキハ47形の両運転台化によるキハ41形への改形式、イベント用列車への改造に伴うもののみである。そのほかの改造の多くはワンマン運転対応化改造、体質改善工事が中心である。

ワンマン運転対応化改造

多くのローカル線を抱える事情から1989年度よりワンマン運転対応化改造が実施され、キハ40形の全車とキハ47形の大半に施行されている。

体質改善工事

1999年度からは、103系や113系、115系などの国鉄系電車と同様の延命工事が開始された。主な改造内容としては、車体外板腐食部張替え(キハ47形にある戸袋窓は全て埋められている)や、冷房用熱交換器の床下から屋根上への移設、通風器撤去、側窓取替え、化粧板張替え、ドアの半自動装置の電気指令式への変更などである。

運用・所属

金沢総合車両所富山支所所属

キハ40系

2000番台9両が配置されている。

キハ47系

0番台7両、1000番台8両、計15両が配置されている。

運用

キハ40系・47系ともに城端線・氷見線で運用され、ほとんどの車両がワンマン運転に対応している。

福知山電車区豊岡支所配置

キハ40系

2000番台3両が配置されている。

キハ41系

2000番台5両が配置されている。

キハ47系

0番台が7両、1000番台が4両の計11両がされている。

運用

キハ40系とキハ41系が播但線の非電化区間(寺前駅 - 和田山駅)、キハ47系は山陰本線(豊岡駅 - 鳥取駅)で運用されている。

その他

  • キハ40系、キハ41系はキハ47形と編成を組めば山陰本線運用にも入ることもある。
  • キハ47系は基本的に1000番台は豊岡側に連結されるが、0番台は鳥取側にも豊岡側にも連結される。
  • キハ47系は臨時快速の山陰海岸ジオライナーの豊岡を午前に出る便と、鳥取を午後にでる便にも使用されている。

岡山気動車区所属

キハ40系

2000番台10両とロングシート改造車の3000番台5両の計15両が所属している。全車がワンマン運転に対応しており、2000番台の一部と3000番台はエンジンが265PS仕様となっている。

キハ47系

0番台15両、1000番台7両、2000番台3両、3000番台1両の計26両が所属している。

運用

キハ40系で265PS仕様のエンジンを換装した車両は主に吉備線と津山線(法界院駅 - 岡山駅間)で運用、それ以外の車両は、津山線と姫新線(津山駅 - 新見駅間)、みまさかスローライフ列車として因美線(智頭駅 - 津山駅間)で運用される。
キハ47系はキハ47-99、170、2001、2003を除いてワンマン運転に対応おり、対応しているか対応していないかで運用が分かれる。まずワンマン対応車はキハ40系同様みまさかスローライフ列車で因美線(智頭駅 - 津山駅間)の他吉備線運用と津山線・姫新線運用があり、前者は吉備線と津山線(法界院駅 - 岡山駅間)で運用、後者は津山線と姫新線(津山駅 - 新見駅間)で運用されている。ワンマンに対応していない車両は、吉備線と津山線(法界院駅 - 岡山駅間)で運用されているが、ワンマン対応車の吉備線運用とは運用が別である。

後藤総合車両所運用検修センター配置

キハ40系

2000番台4両が配置されている。

キハ47系

0番台13両、1000番台6両、2000番台11両、3000番台10両が配置されている。

運用

キハ40系は境線と山陰本線(米子~西出雲駅間)、キハ47系は山陰本線(鳥取駅 - 益田駅)、境線、因美線(智頭駅 - 鳥取駅)、若桜鉄道にも乗り入れ原則普通列車として運転される。

その他

  • 全車がリニューアル工事を受け、なおかつキハ47系4両を除いてすべてがワンマン運転に対応している。
  • 2016年中にすべての車両の方向幕が路線記号とラインカラー付きのものにリニューアルされた。(対応していない区間や改装・試運転などについては対応しておらず、内容も全く変わっていない)
  • 車体塗装は民営化以降も変わらず「首都圏色」と呼ばれる朱塗り一色のものが原則的であったが、2009年に姫路鉄道部より転入した3両については、国鉄色のままであった。(しかし、全般検査などによって塗装変更が行われたため、首都圏色に塗り替えられた。)

後藤総合車両所鳥取鉄道部配置

キハ47系

0番台12両、1000番台が6両の計18両が所属しており、全車がリニューアル工事を受け、ワンマン運転に対応している。

運用

山陰本線城崎温泉駅 - 米子駅間、因美線鳥取駅 - 智頭駅・那岐駅間(那岐駅乗り入れは朝1往復のみ)の普通列車で運用されている。

その他

  • このうちの2両は国鉄時代から黄緑色をベースとして車体側面にしゃんしゃん傘踊りの傘やドウダンツツジ、前面貫通扉に因幡の白兎のイラストが描かれた、花笠塗装と呼ばれる姿となっており、この2両にのみ車体側面にJRマークが貼付されていた。 しかし、2012年3月の全般検査時に1両、2016年2月の全般検査時にもう1両が首都圏色に塗装変更されたため、現在は存在しない。
  • 浜田~益田駅間の当系列による運用は2017年春のダイヤ改正からである。これは、昼の1往復に充当される。

下関総合車両所新山口支所配置

キハ40系

2000番台31両が所属しており、全車両がワンマン運転に対応している。

キハ47系

0番台30両、1000番台18両、1500番台1両、2000番台8両、2500番台3両、3000番台8両、3500番台2両の計70両が所属しているが、ワンマン運転に対応しているものは一部車両のみである。

特記事項

  • キハ40系の全車両がワンマン運転に対応していると記載しているが、実際には後藤総合車両所に貸し出されていた1両が広島支社管内用のワンマン運転用の放送に対応しておらず、ワンマン運転用の運賃表が撤去されている。そのためキハ47系の非ワンマン車とペアを組んで2両で運行されている。
  • 芸備線で使用される場合は、検査周期の関係から毎日5両の入れ替えが行われ、上下各1往復の回送列車が広島~新山口間で運転されるようです。過去には客扱いを行っていたようですが、電車用ホームの為にステップ高さの問題が原因で回送列車となっている。

運用

まずキハ40系は、山陰本線(益田駅 - 下関駅)・山口線・岩徳線・芸備線(三次駅 - 広島駅間)で運用されているものの原則岩徳線とそれ以外の3路線とで運用が分けられている。
続いてキハ47系ワンマン対応車は山陰本線(益田駅 - 下関駅間)・山口線・岩徳線・芸備線(三次駅 - 広島駅間)で運用される。
最後にキハ47系非ワンマン車は山陰本線(小串駅 - 下関駅)・山口線(宮野駅 - 新山口駅)・芸備線(三次駅 - 広島駅)で運用され、キハ40系同様岩徳線とそれ以外の3路線とで運用が分けられている。

その他

  • 下関総合車両所配属の車両については側面中央上部にLED式の行先表示器の増設が行われており、これに伴って板式の行先標の使用を終了している。
  • 全車が一旦は広島色に塗り替えられたが、2009年12月以降首都圏色への再度塗り替えが進行しており、2017年現在ほぼすべてが塗り替えられたため、広島色は希少色となっている。広島色への塗り替え時に側面中央上部にLED式の行先表示器の増設が行われるなどの体質改善が終了している。

観光列車

花嫁のれん

キハ48系2両を改造した専用車両が使用されている。
改造工事は金沢総合車両所で行われ、車体前位側の客室扉の撤去と車体前面の貫通扉の埋め込み、前面上部の左右の前照灯と貫通扉上部の行先表示器の撤去が行われ、行先表示器があった部分の上部には、新たにLEDの前照灯が1つ設置されている。外装は北陸の伝統工芸である輪島塗り・加賀友禅・金沢金箔などの北陸の伝統工芸品をイメージしており、前面の貫通扉部分と側面の中間部分には加賀水引をイメージしたロゴマークが描かれており「和と美」を表現している。

瀬戸内マリンビュー

キハ47形2000・3000番台を改造したものであり、前面は表示装置や貫通扉が埋め込まれ、船を意識したオールとライフブイが飾られている。側面は運転室側の乗降扉が埋められ、ステップがかさ上げされ、海側の窓配置は大幅に変わった。指定席車となった側は山側の腰掛に海側を向いてソファーシートが採用されるなど、客室仕様も大幅に変更されている。一方で自由席車は乗降扉が一箇所となったほかは基本的に従来どおりである。リニューアル工事も含めた改造費用は8,000万円で、呉線沿線の4自治体(三原市・竹原市・東広島市・呉市)が全額を負担している。