場合によっては文字が旧字体だったり異体字だったり略字だったりするが、略字と異体字は原型で表記し、旧字体はそのまま表記する。
また、歴史的仮名遣で書かれているものもそのまま表記する。
また、誤字と見られる物もそのまま表記する。
(作者と作品:オノ・ヨーコ、MoMAのオノ・ヨーコのページ)
メリーの肖像一
Aのキャンバスの任意の点に円をくりぬく。
Bのキャンバスの任意の点に数字、またはローマ字、またはカタカナ、を一字置く。
A、B、兩方のキャンバスを合せる。くりぬいた円内に下の字が出る。また、出なくてもよい。
メリーの肖像三(彼女の沢山の瞳)
任意の国のメリー宛にキャンバスを送りそのメリーの写真を貼ってもらひ、更に次の任意の国のメリーにそのキャンバスを回送して同じことをしてもらふ。写真は全部切手大のこと。キャンバスがメリーの写真で一杯になったら最初の差出人のところへ送り返してもらふ。また送り返されなくてもいゝ。メリーでないほかの名前でもよい。その場合は、その名前の人間が見つかる迄諸国を回送すること。貼ってもらふのは写真でなくて数字でもいゝ。また昆虫を貼ってもらってもいゝ。
メリーの肖像四(部屋の中を見る絵)
キャンバスの真中に針で目に見えない位の小さな穴をあけそこから部屋の中を見る。
メリーの肖像五(拡大してみる絵)
任意の電話番号を五百 自分の掌の大きさ位の面積のところへ書き込む。一つの番号の上に別な番号を重ねて書いてもかまはない。また全部同じ番号でもかまはない。それをけんびきょう、虫目鏡、望遠鏡なぞで拡大してみる。また写真にとって好きな大きさに拡大する。
メリーの肖像六(空を見るための絵)
任意の二点に穴をあける。
空の見える処にかける。
メリーの肖像七(夕日を通す絵)
キャンバスの後にお酒の入った、または水の入った、または蠅か、こほろぎか蟻の入ったビンをつるし、西日のあたる或る時間だけ、ビンのかげがキャンバスにうつる様にしておく。
またうつらなくてもよい。
メリーの肖像八(風のための絵)
任意の種を入れた袋に穴をあけ、風の吹くところにおく。
三楽章の絵
キャンバスに煙草で小さな穴をあけ、しめった綿を入れた袋に種を入れキャンバスの後につるし、毎日水をやる。
一楽章
キャンバスがつたにおほわれる迄。
二楽章
つたが枯れるまで。
三楽章
キャンバスが燃されて灰になる迄。
楽章の終りごとに写真をとっておく。
埋葬のための絵
満月時、夜中の一時から夜明迄 キャンバスを庭に出して眺める。キャンバスが朝日でバラ色によく染まったら、こまぎれにするか、または枠と布を別々にするか、または二つ折りにして埋葬する。
埋葬の方法
庭に埋めて番号のついた墓標を立てる。
屑屋に賣る。
ゴミために捨てる。
煙のための絵
キャンバスに任意の時間にマッチで火をつけ、煙の動きをみる。
大理石までの絵
自分の好きな絵、デザイン、または写真、または文章をキャンバス大に切って掛け、訪問者に好きな部分を切りとって行ってもらふ。
たとへば、赤い色の好きな訪問者には、赤い色の部分を全部切りとってもらふ。何人かにたのんだ後、何ものこらなくなったら止める。また、切りとるかはりに白または黑または灰色にぬりつぶして行ってもらってもいゝ。さいごに灰色または黑または白が好きな者がいたら、今度はほかの色でぬりつぶして作品をつゞけるか、キャンバスごとあげてしまって作品を終りにする。
握手をする絵
任意の点に穴をあけ、そこから手を出す。愛想笑ひをしてしまうものは お客が来た時 そこから握手をし、手に依って会話をする。
長い絵
小さなビンに水を入れ、密封し、底に穴をあけ、任意の地点にぶらさげておく。下に石をおき、その石に水滴で穴がうがたれる迄の作品。
毎日水をかへること。またビンの底の穴の大きさで水滴の落ちる早さを自分の好みに應じて変へてよい。
また水と石、のかはりに次のコンビネーションでもしてよい。
ワインと靴─靴がなくなる迄
ペンキと古いタイプライター─タイプライターがペンキで埋まってしまふ迄
墨と洋裁の人型─適当な時迄
血とシーツ─適当な時迄
お茶とプログラム─適当な時迄
また隨意なコンビネーションを自分で考へる。
A+Bの絵
キャンバスの仁意の一点を自分以外の人間に切り取ってもらひ、それをBのキャンバスの同位点に張る。
釘を打つための絵 その一
鏡、ガラス、キャンバス、板、銅板等任意につかふ。
毎朝一本釘をうち、また髪をとかす時に落ちた髪の毛を一本づつ隨意にまいておく。(鏡・ガラスなぞは釘で傷をつけただけでもいゝ。画面が釘で一杯になったら終る。
頭の中で組みたてる絵 その一
四角:
キャンバスが円になる迄頭の中で変形して行く。その過程に於けるあるところで止め、その形から想起した色、音、にほひ、或ひは物体をキャンバスに張って置く。
頭の中で組みたてる絵 その二
キャンバスを廿の色々な形にしきることを想定し、その一つ一つの破牛の正確な模型を作り、廿の任意の住所に送る。キャンバスの裏に廿の住所をそこに送った破牛の形をかきとめておく。
頭の中で組みたてる絵 その三
ガラスの真中に釘を打ちつけ、入ったひゞによってわかれた部分の一つ一つを任意の別々な住所に送ることを想定し、住所とその送るべき破牛の形をメモしておく。
頭の中で組みたてる絵 その四
電話帳を初めから終り迄丁寧に見て、そのすぐあとで憶えている数字の組合せを憶えているだけ書きつらねる。
頭の中で組みたてる絵 その五
三つの絵をよく見、それを頭の中でかきまぜ、記憶にのこっている形、または部分を集合し、それから連想した数字をキャンバスに書きつける。これは写真でも出来る。
こわれたミシンのための絵
こわれたミシンをその十倍若しくは廿倍位のガラスの水槽に入れて一年に一ぺん、雪の晩に広場に出してみんなで石をなげる。