誰もいない部屋。
ひとり、かわいいものに囲まれて。
いつもはおちゃらけて、笑顔を作っているけれど、1人の時、熱が出てる時くらいは泣かせて欲しい。
布団を頭から被って、目を閉じる。
身長は男の子のままだから、女の子用の小さなベッドでは少し背を曲げないと全身がすっぽり入らない。でも、膝を抱えて、真っ暗の中じっとしていると、少し落ち着くような気がする。
自分の気持ちに正直になったら、きっとボクはサオちゃんのことを殺さないといけなくなる。でも、サオちゃんは捻れたボクのことを選んでくれた。だいすきなともだちを、殺したくは無い。
でも、頭をよぎる。
だいすきなさおちゃんが、ボクの理想の「お人形さん」になってくれたなら、どんなに綺麗なんだろう、と。
そうやって、自分の中にある欲が、ずっと戦っている。自分の中に巣食うそれが戦って、削れていって、こころがボコボコになる。最近は笑顔を取り繕うのさえ、つらくなってきた。
自分の思い通りにはならないんだ、ってわかってても、それでも「きっと」を妄想してしまう。
でもきっと、さおちゃんにとってボクってただの迷惑な仕事仲間なんだろうな、とも思う。
いつも自分の行動に制限がかけられない。ブレーキが壊れた自転車のような自分の体は、坂道を下るように加速していく。なにかにぶつかるまで、止められない。スピードのつきすぎたそれは、きっと誰かを壊してしまう。それが僕なのか、さおちゃんなのか、世界なのかは、知らないけれども。
ふとLINEを見ると、返信が来てた。2分前に送った、『オシゴト』お休みの連絡。
既読と一緒に、「前の仕事の時にはしゃいだからだバカ」「早くなおせ」のふた文。
すぐ帰ってきた返信に嬉しくなって、つれない返事に悲しくなって、頭の中の感情がぐちゃぐちゃになる。
__ねぇ、ボクたちの関係って、「おともだち」だって、信じていいんだよね?
「ね、ぼく、さおちゃんのこと……」
……その先は、意識が落ちるのと一緒に、記憶の奥底にしまっておくことにした。