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Last-modified: 2014-12-13 (土) 21:29:01

体育の時間、ふとした弾みで足を挫いてしまった私は、自分が連れて行くと言ってきかない苗木君に背負われ、保健室を目指していた。
冷やかしていたクラスメート達には後ほど個別に制裁を加えるとして、当面の問題は――

 

「苗木君、その……重くない?」
「な……!そんな訳ないよ!霧切さん一人くらいなら軽いもんだよ。心配しないで」
「そう……」

 

彼はそう言い、私を安心させるように笑う。
本当はそんな訳ない。
彼より私の方が身長が高いのだし、彼もそんなに体力に自信があるタイプではない。
その証拠に、私を支える腕は痙攣し、足取りも時折ふらついている。
……それでも、彼が私を落とすことは決してないだろう。
そう信じられるだけの力強さを、その背と両腕に感じていた。

 

「……苗木君は、いいお父さんになるわね」

 

彼に負ぶられる子供は、きっと安心してその背に身を任せることが出来るだろう。
――遠い昔、既に記憶にも定かでない、私を乗せる広い背中を思い、そんな事を言っていた。

 

「この歳でお父さんっていうのは複雑だけど……でも、そうなれたらいい、かな」

 

苗木君はそう言って笑う。
きっといつもの子供のような……でも人の心を穏やかにさせてくれる笑顔を見せているのだろう。

 

「…………」

 

私は眼を閉じると、彼の華奢な身体を抱くようにそっと手を回す。

 

「き、霧切さん!?」
「どうかした?」
「う、ううん。別に……」

 

背中から見える、彼のうなじと耳が真っ赤になっているのがわかる。
少し意地悪だったかもしれない。
……私らしくないことをしているのはわかる。
それでも今は、何も考えずこの背中に身を任せていたかった。

 

「苗木君」
「うん?」

 

――ありがとう
言葉の代わりに、こつんと額を背中に当てる。
少しだけ――ほんの少しだけ、子供の頃に戻ったような、そんな気分に浸りながら。