TIPS/LinuxKernel/moduleの作成方法

Last-modified: 2007-03-05 (月) 21:14:00
LinuxのLoadable Kernel Moduleの作り方のHowTo。対象のカーネルバージョンは2.6。

1. SourceとMakefile

カーネルにLoad/Unloadできるだけの小モジュールを作ってみる。何処か適当なディレクトリに以下のようにソースとMakefileを作る。ソースとMakefileの中身は以下を参照。.tar.gzにまとめたファイルはこちらから。

xxxxxx/

    Makefile   - Makefile
    small.c    - モジュールのソース

1.1 Source

モジュールのソースコードのサンプルを以下に示す。

最低限必要なのは、モジュールがLoadされた時に呼び出される初期化ルーチン(smallmod_init_module())とモジュールが Unloadされる時に呼び出される後処理用ルーチン(smallmod_init_module())。これらのルーチンは、それぞれ module_init(),module_exit()マクロで指定する。

初期化ルーチンの返り値はint型で、正常に処理が終了した場合は0を返す。

インクルードファイルはmodule_init,exit()用にmodule.hが必要。あと、カーネルのconfigが必要な場合はconfig.h をインクルードする。以下ではprintk()でメッセージを出力しているのでkernel.hもインクルードしている。

MODULE_DESCRIPTION,MODULE_AUTHOR,MODULE_LICENSEもちゃんと書いておくとよい。これらの情報はモジュール(*.ko)の.modinfoセクションに書き込まれる。

small.c

#include(): Usage: (a-page-name-you-want-to-include[,title|,notitle])
#include(): Usage: (a-page-name-you-want-to-include[,title|,notitle])
#include(): Usage: (a-page-name-you-want-to-include[,title|,notitle])

MODULE_DESCRIPTION("Small Test Module");
MODULE_AUTHOR("kztomita");
MODULE_LICENSE("GPL");

/* Moduleがロードされた時に呼び出される初期化ルーチン */
static int smallmod_init_module(void)
{

       int error = 0;
       /*
        * 初期化処理を行なう
        */
       printk("smallmod is loaded.\n");
       /* エラーの場合 */
       if (error)
               return  -ENODEV;
       return 0;

}

/* Moduleがアンロードされたる時に呼び出される後処理 */
static void smallmod_cleanup_module(void)
{

       printk("smallmod is unloaded.\n");

}

module_init(smallmod_init_module);
module_exit(smallmod_cleanup_module);

1.2 Makefile

Makefileのサンプルを以下に示す。このMakefileはsmall.cをコンパイルしてモジュールsmallmod.koを作成する。コンパイルは本Makefile単体では行なえず、カーネルソースツリーにあるMakefileを呼び出してカーネルモジュールコンパイルのルールを利用する。

obj-mには作成したいモジュールのファイル名を書く。拡張子は*.koではなく*.oなので注意。ここで指定したファイルが最終的にモジュール(*.ko)に変換される。

次にモジュールを構成するオブジェクトを指定する。指定するTarget名は<モジュール名>-obj。今回はobj-mに smallmod.oを指定しているのでモジュール名はsmallmod。よって、smallmod-objにコンパイルするオブジェクト名を並べる。今回はソースがsmall.cだけなのでオブジェクトはsmall.oだけとなる。複数のソースをコンパイルする場合は、ここにオブジェクトを並べればよい。

今回のようにファイルが1つだけなら<モジュール名>-objのTargetは指定しなくてもよい。指定しなかった場合は、デフォルトの Suffix Ruleに従いsmallmod.cをコンパイルしに行く。今回例を示すためソースファイルをsmall.cに名前を変えている。

実際にコンパイルを行なう時はカーネルソースツリーのMakefileを使用する。引数に以下のものを指定する。

   * -C Option: カーネルソースツリーのパスを指定する。実際にLoadingさせたいカーネルと同じバージョンのツリーである必要があるので注意。(*1)
   * SUBDIRS:モジュールのソースがあるディレクトリを指定する。
   * KBUILD_VERBOSE:コンパイル時のメッセージ出力を制御する。コンパイル時の実行コマンドをそのまま表示したい場合は1にすればよい。
   * コンパイルTarget:modulesを指定する。

(*1) コンパイル時に使用したソースツリーのカーネルバージョンや一部のConfig(SMP,Preempt等)の情報がモジュールのvermagicに埋めこまれて、Loading時にチェックされるため。これがカーネルはvermagicが不一致だとLoadingを受けつけない。vermagicには Config情報も入るので、厳密にはバージョンだけでなくSMP,Preemptなど一部のConfigも合わせておかないといけない。

Makefile

KERNELSRCDIR = /usr/src/linux
BUILD_DIR := $(shell pwd)
VERBOSE = 0

モジュール名

obj-m := smallmod.o

<モジュール名>-objs にモジュールを構成するオブジェクトの一覧を列挙する

smallmod-objs := small.o

all:

       make -C $(KERNELSRCDIR) SUBDIRS=$(BUILD_DIR) KBUILD_VERBOSE=$(VERBOSE) modules

clean:

       rm -f *.o
       rm -f *.ko
       rm -f *.mod.c
       rm -f *~

2. コンパイル

ファイルのあるディレクトリでmakeを実行すればコンパイルできる。

モジュールのファイルはsmallmod.koファイル(Kernel 2.6のモジュールは拡張子がkoになる)。一緒に作成されているsmallmod.mod.cは、モジュールにカーネルバージョンなどを埋めこむ為のファイル。カーネルソースツリーのmake処理で勝手に生成される。

SourceでMODULE_DESCRIPTION()などで書き込んだ情報は以下のようにして確認できる。

#objdump

smallmod.ko: ファイル形式 elf32-i386

セクション .modinfo の内容:

0000 64657363 72697074 696f6e3d 536d616c  description=Smal
0010 6c205465 7374204d 6f64756c 65006175  l Test Module.au
0020 74686f72 3d6b7a74 6f6d6974 61006c69  thor=kztomita.li
0030 63656e73 653d4750 4c000000 00000000  cense=GPL.......
0040 7665726d 61676963 3d322e36 2e31342e  vermagic=2.6.14.
0050 3320534d 50205045 4e544955 4d342067  3 SMP PENTIUM4 g
0060 63632d33 2e340064 6570656e 64733d00  cc-3.4.depends=.

3. Load/Unload
3.1 Load

モジュールをLoadする。(root権限で行なうこと)

/sbin/insmod smallmod.ko

lsmodでモジュールがLoadされていることを確認できる。

/sbin/lsmod

Module Size Used by
smallmod 2176 0
ppp_deflate 5760 0
zlib_deflate 22552 1 ppp_deflate

   <略>

dmesgでモジュールの初期化ルーチンのprintk()のメッセージが出力されているのが確認できる。

dmesg
 <略>

PPP generic driver version 2.4.2
PPP Deflate Compression module registered
smallmod is loaded.

3.2 Unload
モジュールのUnload。

/sbin/rmmod smallmod

モジュールが消えているのが確認できる。

/sbin/lsmod

Module Size Used by
ppp_deflate 5760 0
zlib_deflate 22552 1 ppp_deflate

dmesgで後処理ルーチンのメッセージが出力されているのが確認できる。

#dmesg

  <略>

PPP generic driver version 2.4.2
PPP Deflate Compression module registered
smallmod is loaded.
smallmod is unloaded.