1.
――さて、今日は何食べようかなっと。………ん?
昼休み、学食へ向かう途中の廊下で何やら殺気立った光景を目にした
圧殺さんと……誰だろう?知らない子だ
一体何があったのかは分からないが、廊下の真ん中で二人の少女が睨み合う光景はあまり褒められたものでは無い
どうしよう、仲裁するべきか……?しかし、相手が相手だけにあまり関わりたくないというのが本音だ
そんなことを思いながら遠目に二人を眺めていると、程無くして二人に変化が訪れる
お互い通せんぼ状態であったのを避けるかのように、二人は目の前の邪魔者とすれ違おうとする
二人同時に、同じ方向に……
圧殺「……………」
???「……………」
はち合った二人が、またしても互いを睨む。怖い、超怖い
圧殺「……何なのアンタさっきから……。アタシの邪魔しないでくれる?」
???「邪魔してるのはそっちでしょう?そっちこそどいてくれない?」
漸く口を開いたかと思えば二人から紡がれた言葉は「アンタ邪魔。どいて」といった内容だった
……一体何時から睨み合ってるのか、今すぐにでも殴り合いに発展しそうな雰囲気だ
???「わわわ…!ね、姉さん!な、何してるんですかー!?」
突如、睨み合う二人に一人の少女が割って入る。あちらの見慣れない子とそっくりなお嬢さんだ。……双子、かな?
???「な、何よ双月…。私はただコイツが………」
双月「あーあー、聞こえなーい。さ、学食行きましょう姉さん。早くしないと席埋まっちゃいますよー」
???「え…あ……ちょ、引っ張らないでよ…!」
双月と呼ばれた少女が、姉の腕をぐいぐい引っ張ってその場を離れようとする
当然、先程まで一触即発寸前の睨み合いをしていた姉の方が反発する
双月「すみませーん。姉がご迷惑をおかけしたみたいで…。さ、姉さん行こ」
???「……ッ!あぁもう、分かったから!引っ張るのやーめーなーさーいぃぃ!」
呆気に取られている圧殺さんに軽く会釈して、双月ちゃんは姉を引っ張ってその場を後にする
姉の方は、すれ違いざまに圧殺さんを一瞥して、渋々といった形で妹に連れられていった
残された圧殺さんは、何か釈然としない様子でその場を後にした
……さて俺は……あの姉妹を追ってみるか。あの二人も学食に行くと言ってたから、行く先は一緒だし
2.
あの姉妹の後を追っていった先で、ちょっとした口論をしている二人を発見した
まぁ、口論というよりは妹の方がお姉さんを窘めている、といった感じか
双月「もう、姉さんったら……揉め事は起こさないでって言ったじゃないですか……」
???「いや…だって……アイツが道塞ぐから……」
双月「別に譲ってあげればいいじゃないですか…」
???「それは嫌」
双月「その心は?」
???「何か、負けた気がするから!」
双月「………姉さん……」
背後に「どーん!!」という煽り文字が目に浮かぶような堂々とした姉の物言いに、呆れた様子で溜め息を吐く双月ちゃん
双月「はぁ………とにかく、私達まだ転入したてなんですから、あんまり目立つ行動は控えて下さいね?」
???「そんな目くじら立てなくてもいいじゃない…。さ、もう行きましょ。早くしないと学食の席、埋まっちゃうんでしょ?」
双月「あ……姉さん!」
妹の小言もそこそこに、姉の方は話を切り上げて食堂に向かって歩き出す
双月「もう……新月姉さんは…!勝手なんだから!」
さっさと歩いていってしまった姉に、小走りで付いていく双月ちゃん
…そうか、姉は新月っていうのか
新月ちゃんと双月ちゃんか…。転入したてって言ってたけど……転入生なのかな?機会が有ったら話してみたいもんだなぁ
――っと、俺も学食に行く途中だった…
そのまま二人をまた追うような形で、俺は学食へと向かった
了