ss106959

Last-modified: 2010-03-29 (月) 12:37:36

オレこれショート

1・SASANANA

「もうちょっとこう…」
「ふむ、それなら…」
廊下を歩いていたら、屋上へ続く階段の踊り場で、ちーすけと知らない人が話し込んでいるのが見えた。
「お、オレオいい所に…ちょっと混ざれ」
ちーすけが目敏く俺を見つけてちょいちょいと手招きをした。
「何やってんだ?」
階段を上りながら問いかけると
「いやー、今月ちょっと苦しくてな。お兄さんにバイト紹介してもらおうと思って」
「お兄さん?」
首をかしげながらちーすけの正面にいる男子生徒を見た。
「ろーかりんだ、よろしくな、オレオくん」
笑顔で右手を差し出してくる。まとめた髪に落ち着いた物腰。
なるほど、お兄さんといった感じの男だった。
「どうも…って、俺名乗りましたっけ?」
「知ってるさ。君もわりと有名人だ」
そんなやりとりを見ながら、ちーすけは意外そうに
「まだ会ったことなかったか?
 ろーかりん先輩は、情報屋まがいの事から、バイトの斡旋、金庫破りに犬の散歩に料理に掃除洗濯なんでもござれの
 まあ言わば何でも屋だな」
「そっちに夢中になりすぎて、目下二留年中。ついた渾名がお兄さんだ。
 ま、なんか困ったことがあったら相談に来てくれ」
「はあ…てニ留年!?」
今の三年生が一年生の頃から三年生なのか。
道理で大人びて見えるはずだ。
すごいのかすごくないのかわからん人だな。
「ああ、今じゃあんなにおっかない副会長なんかも、入学したての頃はこんなに…こんな…
 ……いや、あまり大きさは変わらなかったな」
「でしょうね」
「で、面子も揃ったところで、多少危険でも構わないんで、短時間でガッポリ稼げる仕事ないですかね」
ちーすけが問いかけると、お兄さんは手帳をぺらぺらとめくり、俺たちに見せた。
「そうだな。二人一組なら…」
「二人一組……俺入ってる!?」
「これなんかどうだろう。推進力と攻撃とエネルギーを兼ねた弾丸を吐き出すロボットを操作し、

様々な場所に散らばったエネルギーカプセルを回収する仕事だ。
ちなみにこのロボット、耐久力に少しばかり問題を抱えていてな。
海中のワカメに触れても爆散する」

「ワカメに触れたら爆散するように作る方が難しくないですかね!?」
お兄さんは俺のツッコミを意に介さずに沈痛な表情で続ける。
「命を賭ける事になるだろう…それでも行くというのか」
いや、命て。
しかしちーすけは憶することなく不敵に笑う。
「へっ、面白ぇじゃねぇか……そのカプセル、残らず回収してやるぜ。この俺とオレオがな」
「だから何で俺も入ってるんだっつーの!何でテンション上がってるんだっつーの!」
「ならば止めまい。…だが、お前らは俺の可愛い後輩だ…生きて帰ってこいよ」
「お兄さん…」
無言で見つめあう二人。
どうやら俺の言葉はもう届かないらしい。
今の内に逃げられないだろうか。
そーっと離れようとしたら、ちーすけに首根っこ掴まれた。
「行こうぜオレオ。ブラックホールの向こうまで。まぁ、無事に帰れたら飯でも奢るさ」
「そんなんに命賭けられるか!放せェーっ!」
「頑張れよー」

ちなみに海底面で諦めた。

2・

廊下を歩いていたら、正面からどよめきが聞こえたので目をこらしてみると
サンバのリズムと共に、なにやらきらびやかな物体が歩いてくるのが見えた。
あれは……よし、回避しよう。回れ右。
「やあ、オレオくんじゃないか!」
ダメだった。
「最高さん。……今日は随分刺激的な格好だな……。
 目のやりどころに困る」
今日の衣装は、サンバの音色に相応しく、金ぴかのビキニになんか色々わさわさしたものがついたアレである。
ていうか最高さんは手ぶらなんだが、どっから流れてんだサンバ。
「そう思うなら目を逸らす振りでもしたまえよ。
 ふふ、リオのカーニバルだ。前回私もまだまだ修行が足りないのがわかったからね。色々試している途中というわけさ。
 どうだいオレオくん。男心がくすぐられるかい?」
どや顔でポーズを決める最高さん。
ポーズってもいつものアレであり、特にセクシーポーズとかではない。
「悪くないな!…しかし最高さん、その衣装の完成には、一つ決定的に足りていないものがある」
それを聞いた最高さんの表情が不敵なものに変わる。
「いいね。そういうのが聞きたかったんだ。……して、それは?」
「一言でいうと恥じらいだな。こんな露出の高い格好をしているのに、ちょっとそれを恥ずかしがっている…
 一見あけすけな女性のように見えて、その実純粋な少女のような…そのギャップが時に男心を惑わすんだ」
「奥深いな…恥じらい…ギャップか…なるほど…」
うむむと唸り出す最高さん。
サンバは流れっ放しなのでどうも真面目にやってる気がしない。
しかし、最高さんに恥じらいというのも難しい話だ。ブラジル人にわびさびを教えるより難しいんじゃないのか。
「それはそうと…その格好でもマフラーは外さないんだなー。
 …ちょっとこう、取ってみたらどうだろう」
と提案してみると、最高さんは顔を赤くして目を逸らした。

「と、突然なにを言い出すんだ…今日のオレオくんは大胆だな…」
「それだ!それだよ最高さん!意味は全くわからねえけど!」

おわし