ss107567

Last-modified: 2010-03-29 (月) 12:35:45

良い臭い…かどうかは人それぞれだと思う。
食物独特の空気が辺りに漂っていた。
ここは料理研究会活動場所。
家庭科室である。
楽しげに鼻歌を交えながら
ナニかを作るミルクティーちゃん。
一心不乱に納豆を交ぜ続ける納豆ちゃん。
犠牲ちゃんはだばぁしてしまったペヤングを見て項垂れている。
スティックサラダを活花の様にする野菜ちゃん。
なんとも纏まりの無い活動内容。
「……あのー。」
そんな空気の中一人ツッコミを入れようとしたのは
3年生のねぎ…私であった。
「あのぉ!」
各自熱心にそれぞれやりたい放題なのを見かねて
思わず大声を出してしまった。
その声に気付き全員が私の方を向く。
「ねぎさんが大声って珍しいね。」
「あら、どうしたのかしら?」
「ん、納豆欲しいの?」
「野菜いる?」
四者四様の声を上げる。
そんな反応もお構い無しに私は声を上げる。
「そうじゃなくて!もっとこう…何ていうのかな。
 みんなで一緒に何かを作るとかじゃないのかなー…って。」
少しの間を置いて
全員が「あっ」と言う顔をする。
……みんな自由なんだね。
「確かに言われてみれば…。」
「主体性は犠牲になったのだ…自由の犠牲にな…。」
「でも納豆おいしいよ?」
「野菜もイイヨ?」
うん、そうだね。野菜も納豆も体に良いよね。
「じゃなくてー!!」
普段私はこんなに大声を出したりしないものだから
自分でも自分の声に驚いてしまう。
他の人はもっと驚いた様子だった。
「えっとね…だからそのー…みんなの良い所を一つにして
 ちょっと難しい物を作ってみない?」
周囲の評判を気にしてるわけじゃない。
だけどやっぱりゲテモノばかり作ってる風に思われるのは
何となく悪印象でしかないと思うので、この辺で一つ
素敵な料理を作って他の人に食べてもらう。
そしておいしいと言ってもらって名誉挽回!と…思ったんだけど。
「難しい物…?何かあるかしら?」
ミルクティーちゃんが頬に手をあて首を傾げる。
え…悩む事?
「…納豆のソテー…とか?」
納豆ちゃんは納豆から離れよっか。
「や、野菜ステーキ…。」
うん、野菜は大事だけどメインを張るには
ちょっと役者不足かな。
「ペヤング…。」
犠牲になったのだ…。
「じゃあ、こうしましょう。子供も大人も大好きなハンバーグ!
 これなら野菜も使うし、工程も色々あるから、みんなで役割分担して
 誰かがヒマになることも無いと思うのよ。」
そう言うと、特に反論も無く簡単に纏まってしまった。
やっぱりタクトを振るう人って必要なのね…。
こうして料理研究会一丸となったハンバーグ製作が始まった。
「ところでねぎさん、作り方とか、材料は?」
「ふふ~、良くぞ聞いてくれました。じゃじゃーん♪」
冷蔵庫の扉を開くとそこには数人前が出来るであろう
ハンバーグの材料が入っていた。
事前に用意したんです。えっへん。
「ちゃんと作り方も本で調べてきたから大丈夫。
 これの通りにやれば失敗しないはずよ。」
「玉葱マシマシで!」
玉葱はあまり多すぎるとタネが柔らかくなって
ハンバーグの形が作り辛くなってしまう。
「うーん…玉葱マシマシは難しいかな?」
そう言うと野菜ちゃんはしょんぼりとしてしまった。
「で、でもでも!付け合せのマッシュポテトは
 ジャガイモマシマシよ!」
「…本当?」
「本当本当。」
「Yes!!」
一気にやる気を取り戻した野菜ちゃん。
そんなこんなで作業を開始した面々であった。
そう、レシピの通りに作ればなんら問題は無いはず。……だったのに。
数十分後―
「………。」
「………。」
「…犠牲に…」
「言わない!!」
どこをどう間違ったのか、そこに完成したのは
ハンバーグとはとてもではないが言えない
謎の肉の塊が鎮座していた。
「……えーっとー。」
「…野菜足りなかった?」
「そうじゃないと思うけどー…。」
「やっぱり納豆が入ってないから…。」
「それは無いわね。」
どう見ても失敗である。どうしてこんな事に…。
全員無言のまま少しの間を持って、突然野菜ちゃんが立ち上がった。
「誰かに食べてもらうまで成功か失敗かはわからない!」
そう言うと皿を手に取り外へと駆け出して行った。
「あ、野菜ちゃんどこへ!?」

続く