「時代は今、軽音ブームなのよ!!」
永遠ちゃんがいきなり声を上げた。
「ど、どうしたの永遠ちゃん?」
「川蝉ちゃん、聞いて!この前テレビ着けたらね!ね!」
酷く興奮した様子で永遠ちゃんがにじり寄ってくる。
「よ、よくわかんないけど落ち着いて…話なら聞けるから、ね?」
「あー…コホン。ごめんごめん、ちょっと取り乱した。」
ちょっと?
「それでね、テレビ見たの、テレビ。そしたらさー。」
「Please don't say "You are lazy"だって本当はcrazy…♪」
.exeさんがいつもの調子でぼそぼそと口ずさむと
永遠ちゃんがものすごい反応をした。
「そう、それ!それなのよ!見ちゃったのよ私!」
私には何の事かさっぱり分からないけど
永遠ちゃんと.exeさんはどうやら通じているようだった。
「えっと…どゆこと?」
「つーまーりー。アニメやってたのよ、軽音部の!!」
「へぇー…。」
「反応うっすいなー川蝉ちゃん。」
そうは言われてもあんまりアニメとか見ないから…。
「とにかくすごい人気なんだって、そのアニメ!
だからつまり、軽音が大人気って事で!
このビッグウェーブに乗らない手は無いじゃない?目指せ地味キャラ脱却!!」
永遠ちゃんが今までに見た事無いくらい燃えている…。
「そ、そうだね…。でも具体的にどうするの?」
勢いだけで話が出来上がるならそれこそ楽な事は無い。
しかし物事は順序立てなければ上手く行くわけも無い。
「どうしよっかー?それを今から部員みんなでかんがえよー!」
あぁ、やっぱり…。
「はぁ…。話は分かったよ。
でも部員みんなでって…まだプロAさんと@さんが…。」
「話は聞かせてもらったよ。」
「!?」
部室の戸を足で開け、プロAさんが格好良く登場した。
絶対タイミング狙ってましたよね、今。
「プロAさん!待ってました!!」
永遠ちゃんもよくわからないテンションで応える。
軽音部より演劇部の方が適任じゃ…とは言わないでおく事にしよう。
「つまりとにかく大きいことをして印象を塗り替えたいんだろ?」
「…コスプレライブ…とか。」
プロAさんの言葉に続けて.exeさんが提案する。
コス…プレ…だと?
「む、無理だよ、そんな恥ずかしい事!それに.exeさんだって恥ずかしがりだし…。」
「成せば成る、成さねば成らぬ何事も!鐘が鳴るなり法隆寺!」
「永遠ちゃん、そこの続きは成らぬは人の為さぬなりけり…だよ?」
「細かい事はどうでも良いの!」
永遠ちゃんのテンションは止められそうにも無い。
ここは大人しく話しに乗っておこう…。
どうでも良いけど本当は
「為せば成る、為さねば成らぬ何事も。成らぬは人の為さぬなりけり」
願いの達成って言うのは勝手にやってくるものじゃなく
自分から作り上げる物であって、思い通り事が進まないのは
自分の不実に因る所である、って意味なんだって。
…私は誰に説明してるんだろう?
「コスプレかー、悪くないと思うよ
萌えだっけ?今そーいうの流行ってるんだよね?」
プロAさんが気楽に言う。
確かにそういうのが受けは良いけど衣装とか色々問題が…。
「じゃあ決定!今度のライブはコスプレで!」
「えーっ!?」
「よっしゃ!」
「…了解。」
なんで私以外満場一致なの!?
うぅ…あ、そうだ!
「あ、まだ@さんが来てないし、@さんの意見も聞いてから決めたほうが…。」
「善は急げ、って言うじゃない?」
「プロAさんの言う通り!何かを待ってたらどんどん時間は過ぎちゃうわ。
こういうのはぱっぱと決めていかないと、地味子に逆戻りよ?」
「はぅ~……。」
もうどうしようもなさそうだ。
コスプレなんてやった事無いのに……。
私が項垂れていると部室の戸が開いた。
「あ、@さーん!」
「あらあら、もうみんな集まってたのねぇ。」
暢気な@さんを捉えた永遠ちゃんが
何時の間に用意したのかホワイトボードを叩く。
そこには「コスプレライブ決行!」の文字が。
「@さん、今度これやるわ!良いわよね?」
是非を言わせるつもりも無さそうな勢いで永遠ちゃんは@さんに問い掛ける。
「そうねぇ~…。」
まじまじとその文字を読み上げて@さんは唸る。
…これはもしや?
「どう、どう?」
@さんの返事を待ちきれない様子で
永遠ちゃんは返答を促す。
「う~ん……。」
ドキドキ……。
「そうね。とりあえず…お腹が空いたわ。」
その場に居た全員が
ドリフばりのズッコケをする。
「あははは…@さん…、えぇーと、一応異論は無し?」
にこにこと相変わらず暢気な表情のままの@さん。
「とりあえず腹ごなしをしてから考えましょうか?
腹が減っては戦はできぬ、よ♪」
「…はぁ、しょうがないですね。
でも今ここに食料らしきものはー…。」
丁度タイミング良く
私の言葉を遮るように部室のドアが三度開いた。
続く