ss109275

Last-modified: 2010-05-25 (火) 21:33:47

ちーすけ「いよぅとしあき、最近桜が綺麗だなぁ」

 やけに上機嫌な顔でちーすけが話しかけてきた。
 確かに最近桜も綺麗で何ともいえない春の陽気が心地良いと言えないことも無い。
 ない、がちーすけが上機嫌なのが正直不気味だ。

ちーすけ「何だよその顔? せっかくいい話を持ってきてやったのにさ」
――いい話?
ちーすけ「そそ、今週末、花見でもどうよ? 今相棒と一緒に手分けして誘ってるわけよ」
――相棒……? ああ、巫女巫女先輩か。

 週末は別に予定なんかは無かったはずだな。
 まあ別にいいか。

――いいぜ、場所は?
ちーすけ「おっけぃ。んじゃ旅館跡地裏の西行妖前、昼に現地集合な」
――何ももっていかなくて良いのか?
ちーすけ「ああ、別にいいよ。花見といえば祭りみたいなもんだ。その辺は俺らで用意しておくさ」

 やけに準備が……まあ巫女巫女先輩が関わってるなら準備は大丈夫だろう。

ちーすけ「んじゃ、週末にな」
――おーぅ

 そして三日後、恐るべき事態に……
 かどうかは知らないが桜の舞う旅館跡地裏にやってきたわけだ。

――へぇ……すごいな。校庭にちらばる花はここから流れてきてたのか。
???「ふ、としあきクン、今更ご到着かね?」
――ん? その声は!
最高「ハッハッハ! どこを見ている!? 私はここだ!」

 木の裏に周り、上を見上げると人差し指を天にかざし、長いマフラーを風に靡かせ、たたずむ最高さん。

――何やってるんです?
最高「高いところから登場した方がかっこいいだろう?」
――……パンツ見えてますよ
最高「見ないでくれたまえ」
――ごめんなさい

 気にするなら上るなよ!
 しかし桜吹雪に包まれた最高さんに、幻想的な美しさを感じたのも認める。

――最高さん一人でずっと?
最高「他の皆はすでに私のコレクションを味わってくれていると思うよ。君ももう少し先に行ってみるといい」

 そういってクイッと、これまたどこから出したのかワイングラスを傾ける。
 うむ、もはや何も言うまい。

最高「おっと、勘違いしないでくれたまえ、悪の大ボスはワイングラスを傾けながら登場するものだから持っていただけさ」
――何も言ってませんよ?
最高「は、しまった!登場時の台詞が……よくここまで来たな! 褒めてやろう!」
――……どうも

 何だか疲れてきたので俺はさっさと先に行くことにした。

最高「あれ? ちょっと、反応が薄いよ? おーい」
――先に行ってますね。
最高「ボクがここに上るのにどれだけ苦労したと思ってるの? 待ってー!」

 可愛いところもあるんだな最高さん……
 というかなんだ、さっきのワインで酔っ払ったんじゃないだろうな。
 通りかかる人皆にやってるんだろうか……あれ。

――――――――――――――

のまのま「いらっしゃーい。遅かったねぇ。にゃははははは」

 会場はすでに盛り上がってというか出来上がってというか……

巫女巫女「遅かったなー、何かあったのかと心配になったぜ」
――あれ? 昼に集合って聞いてたんですけど?
ちーすけ「ん? すまん、変更になったんだが言ってなかったか……?」
――聞いてねぇよ!
鮭「まあ細かいことは気にすんな。な? まあ飲めよ」
――お、おう……

 紙コップに並々と注がれた透明な液体に何ともいえない不安がよぎる。
 これ、酒じゃないだろうな……

――ん……うまいな。こんなジュース売ってたっけ。
鮭「何を言ってるんだ。ただのアクエリアスじゃねーか」
――こんな味だったか……? しばらく飲んでないから分からなかったぜ
ちーすけ「ははっまあ稀によくあるな!」

 どっちだよ。
 あたりを見回すと色々な人が来ている。

 ん?あんなところに……

――いつもの先生?

 いつもの先生がぐったりした様子で倒れていた。
 握手先生が傍について水を飲ませたり何とも仲のよい姉妹っぷりを見せ付けている。

握手「ああ、としあき君か。よく来たね」
――これは一体……ってまあ言われずとも分かりますが。
握手「最初の一杯で怪しいとは思ってたんだけどねぇ。その後の飲みっぷりがあまりによかったんで皆囃し立てちゃったからね」
――……
握手「まあ僕らのことは気にしないでいいよ。今更この学園の方針に異を唱えても仕方ないしね」

 それは教育者としてどうなんでしょうね?
 何だか無気力教師の手本のようなことを言っているけど二人の顔が結構幸せそうなので俺は何もいえなかった。

いつもの「うーん……としちゃん?」
――はい、いつもの先生、大丈夫ですか?
いつもの「うーん……」

 どうやらそれだけ言うのが精一杯のようだ。

握手「行っておいで。こんな風に騒げるのも今のうちだけだよ」
――はぁ……じゃあ、すいませんがよろしくお願いします
握手「うん」

 握手先生には申し訳ないが妹が姉を看病してるようにしか見えない。
 これで『おねえちゃん、がんばって』とか言おうものならその手の人達が黙ってませんね……

ゆむ「ほら、キーちゃん、もう一杯飲んで飲んで」
万歳「あら、ありがとうございます、ゆむさん」
天子ちゃん「ししょー、こっちのジュースも飲んで飲んでー」
万歳「あん、ちょっと待って、そんなに一度に飲めないわよぉ」
ゆむ「最初は私のジュース飲んでくれるわよね? ね?」

 むぅ……

ちーすけ「ふぅ、やっぱり花見はいいなぁ」
巫女巫女「そうだな、たまにはこうやって羽を伸ばすのも悪くないな」

 ちーすけの奴、あのゾーンに目を合わせてないな……
 最近は追いかけられていないようだが変なトラウマでも持っちゃったかな。
 まあおかげで最近のちーすけはだいぶおとなしくなったようだし、いい薬だったか。

葱「焼き鳥追加ー」
納豆「オードブル作ってきたよー」
野菜「サラダ持ってきたわー」

 お?
 料理研究会の面々が料理を持ってきた……のか。

ぐるぐる「うわ、何これ? ちょっとハメ外しすぎじゃないの?」
犠牲「お母さん、ちょっと重いよぉ……手伝ってよ……」

 後からひょこひょこと重そうな荷物を持って犠牲ちゃんとぐるぐる先生か。
 これは食べるものには困らなさそうだ。

――ぐるぐる先生
ぐるぐる「ん? 何だとしあきか」
――酔い覚ましとか、持ってませんか?
ぐるぐる「あー……ちょっと待って、調合は専門外だけどやってみるから」
――え? いや、普通の市販の奴で……
ぐるぐる「一度やってみたかったのよねー調合」

 だ、ダメだこいつ……早く何とかしないと。

犠牲「としあきさん、お母さんはああ見えて頑固ですから……それよりちょっと荷物を持ってもらいたいんですけど……」
――ん? ああ、ごめん、ってこれは随分重そうな……二人でもきつくない?

 よくこんなに抱えて歩いてきたものだ。
 ここは結構な高台だから苦しかったろうに。

――巫女巫女先輩とか呼んでこようか
烏なべ「であえーであえー」
もみもみ「せんぱーい、待ってくださいー!」
平らM「お姉さまぁぁ! 速すぎですー」

 と思ったらちょうどいいところに。
 これだけいれば十分だな。

――へーい、そこ行く新聞部のお嬢様方、ちょっといいかい?
もみもみ「ふぇ?」
平らM「あら?」

 なべ先輩は……行ってしまったか。

もみもみ「あ、犠牲ちゃん、こんにちはー」
犠牲「あ、もまれちゃん、来てたの?」
もみもみ「うん、今来たとこー」

 和やかな挨拶を交わす二人の間に割ってはいるのは気が引けるが仕方ない。

――ちょっと荷物を持ってくれないかな?
もみもみ「あ、いいですよー」
平らM「その荷物、犠牲ちゃんの?」
犠牲「うん、皆で食べようと思って持ってきたの」
――というわけでもうすぐそこだけど、持ってくれないかな。

 怪しい調合キットを広げてブツブツ言ってるぐるぐる先生を尻目に俺たちは宴会の輪に戻っていった。

――――――――――――

べぇ「それでぇ、私は言ったのよぉー『とっとと失せろ、ベイビー!』ってさ! 痺れるでしょぉー!」

 宴会場はもうかなりの盛り上がりだ。
 あのべぇさんは誰だろう……いくべぇ様かぱちゅべぇさんか……

しかねぇ「失せろ、じゃ生ぬるいっス! 爆発しろ、とか砕けろ、がいいっス」
くたくた「……それじゃ語呂が悪すぎる……百点満点中二点」
しかねぇ「んぬああぁぁ! このクソウサギっ! こんなところまで……! ここで会ったが百年目っス」
くたくた「……勝負するの……? 私の勝ちは揺るがない」

 二人とも揺れるほど無いじゃない。
 と思ったが口に出すのは怖いので成り行きを見守るしかないなぁ。

べぇ「話は聞かせてもらったわ! ここは宴会場だし、やっぱりどっちが多く飲めるか勝負!」
しかねぇ「一番きついの持ってこいっス! ヒィヒィ言わせてやるっス!」
くたくた「……下品」

 歓声が上がり、のまのまさんのとっておきとやらが注がれる。
 うわ、酒くせぇ。
 教師陣止めてくださいよぉー! と思ったらいつもの先生は握手先生の膝枕でおねむですか。
 ぐるぐる先生は……期待するだけ無駄でした。

――ん?

 この騒ぎの中隅の木陰で一人の人影

――壁さん?
壁「としあきか」
――来てたんですね。てっきり騒がしいのは苦手だと思ってました。

 壁さんはあまり騒がしいのは好まないイメージがあったのに……
 正直ちょっと意外だ。

壁「たまにはこういうのに来てみたくもなるわ。それに、誘ってくれる人がいるのに、無下に断るのも悪いしね……」
――誰に誘われたんです?
壁「イトミっているでしょ? ソフトボール部の。あの子」

 ほぅ……イトミちゃんなら誘うかもな……

――でも、壁さんが来てくれて良かったです。
壁「ん? 何で?」
――だって、壁さんいつも誰かがピンチの時に助けてあげてるでしょ?
壁「……何で知ってるわけ」
――あ、やっぱり壁さんだったんですね

 そこまで言うと壁さんは恥ずかしそうな、それでいてしまったといった表情になる。
 ちゃんと話をしてくれると結構可愛いじゃないか。

壁「……」
――壁さんも一緒に飲みましょうよ。向こう、盛り上がってますよ。
壁「知らない。一人で行けばいい」

 あぁ、怒らせちゃったかな。
 でも意外な一面が見られたから俺はちょっと嬉しい。

――じゃあ、先に行って待ってますね。
壁「…………」

 返事は無かったがきっと来てくれるだろう。
 そんな気がして宴会場に足を向けた。

――――――――

 段々と日が落ちて、辺りが薄暗くなってきた。
 それでもまだこの宴は続くようだ。

さとり「としあきさん、こんばんは」
――ん、こんばんは
さとり「今日は剣道部の……球体さんとは一緒じゃないんですね」
――いや、テケちゃんは今日は来てないかと……それより今日はくるるさんは?
さとり「あら? さっき向こうで見かけましたよ? くるるんはぐるぐる先生と一緒に調合訓練ですって」

 まだ調合してるのか。
 市販の酔い覚ましでいいのになぁ。

――来てたんですか。それじゃちょっと探してみようかなぁ
さとり「うふふ、頑張ってくださいね」
――は、はぁ、別に何を頑張るってわけじゃないですけどね……

 さとりさんは可愛いけど時々妙に鋭い気がする。
 なんとなく心の中が見られているようで、恥ずかしくなった。
 少し、テケちゃんを探してみようか。

最高「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」

 と思った矢先、背後から最高さんの絶叫が。
 直後、ド派手な爆発が起こって最高さんの姿を華麗にライトアップ。

ちーすけ「ぐるぐる先生が爆発したぁぁぁぁぁ!」
巫女巫女「芸術だ……」
烏なべ「これはいいネタになりそうなのー」
さとり「……くるるちゃん!?」

 皆様々な表情で爆発のあった方向を見つめている。
 爆発があったって結構一大事なのに何とも緊張感がないなぁ。

ぐるぐる「……ケホッ」
くるる「にんっさんの薬液、濃度が濃すぎるんじゃないですか……」
にんっ「い、いや、今のは……どちらかというと淫乱さんのせいじゃ……」
淫乱「うぅ……で、でも薬はできました……よ」

 爆発の中心にいたであろう連中が無事なんだからきっと大丈夫だろう。
 こういう時に頼るべき生徒会の鬼の副会長も酔っ払って笑ってるし、会長もいないし。

最高「ふふ、この桜吹雪こそ、私を彩る最高のスポットライトだと思わないかね、諸君?」

 お、今の爆発ですごい桜が。

いつもの「ん……」
握手「綺麗ですねぇ」
ちーすけ「いいなぁ、春だなぁ」
巫女巫女「こんなことしたらすぐに花が散っちゃうんじゃね?」
鮭「まあ、いいじゃないか」
ゆむ「ふぁ、んん……」
万歳「ゆむさん、桜が綺麗ですよ」
天子ちゃん「うおー!すげぇ!」
壁「…………」
べぇ「ほぅ……」
しかねぇ「桜が綺麗っスよ、クソウサギ、ちょっと見るといいっス」
くたくた「……うん」
テケ「綺麗なのだ……」
ぐるぐる「うーん、何がいけなかったんだろう」
淫乱「まあいいじゃないですか、それより桜がすごいですよ」
にんっ「私たちのおかげで、ね」
くるる「ところで何の薬だったんだろう……とりあえず栄養になりそうなの入れたけど……」
さとり「くるるん、無事だったんだ……よかった」
烏なべ「ほほぉぅ、これはいい写真になりそうなのー」
もみもみ「明日と明後日で編集して……週明けには記事にできますね」
平らM「……ヒック」
のまのま「にゃははははは! にゃははははははは!」
葱「ああん、料理に花びらが……」
納豆「春の味覚……ってことで」
野菜「せめて洗ってから……」
犠牲「お母さん? 大丈夫なの?」
――あ、いたいた、テケちゃん、桜が……って何も言うことは無いみたいだね
最高「あれ? 誰も私にはコメントが無いのかい? つれないなぁ」

 全員が舞散る桜を見ている。
 あれほどばらばらに騒いでいた皆が、黙って桜を見上げていた。
 やがて、降り注ぐ桜の勢いが弱まると、ちーすけや巫女巫女先輩が全員のコップに飲み物を注いでいった。

ちーすけ「今日は来てくれてありがとう!」
巫女巫女「ま、かなり遅れたが、これからの学園に、そしてこの桜に……乾杯!」
全員「かんぱーい!」

 くたちゃんとしかねえさんが、ゆむさんとなべ先輩が、さっきまで一人でいた壁さんが。
 皆が笑顔で杯を交わす。
 なんだか心の中まで暖かくなるようだ。

テケ「としあき、楽しんでるのだ?」
――うん、さっきの桜、凄かったね。
テケ「うん、見ようと思ってもなかなか見られるものではないのだ」

 すっかり暗くなってきたけれど、宴はまだまだ続くようだ。
 俺はもう少しだけ、この暖かさに身を任せていようと思った。