ss73466

Last-modified: 2009-05-09 (土) 12:14:54

イベント名「心霊研究部の特に何でもない放課後」
 
 
――失礼しまーっす
 
少し立て付けの悪いドアを開けて部屋に入る。俺のお目当ての人は居らず、一人の少女が文庫本を読みながらパイプ椅子に座っていた
 
圧殺「おや、部員でも無いのにくたちゃん目当てでここに入り浸るとしあきじゃない」
――…刺々しい出迎えに俺の心は深い悲しみに包まれた…
圧殺「そう。…座ったら?もうすぐコーヒー沸くから」
 
そう言って少女――圧殺さんは俺に席に着くよう促した。近すぎず離れすぎずの場所に俺は座る
圧殺さんの手前にはフラスコに入った茶黒い液体が、アルコールランプに熱せられてコポコポと音を立てていた
 
圧殺「砂糖幾つだっけ?」
――あー、一個で…
圧殺「百個ね」
――…俺を糖尿病にでもする気ですか?
圧殺「冗談よ」
 
冗談に聞こえない、というのは言わない方がいいのだろう。というか何故俺は下級生に敬語で話しているのだろう…?
会った時からこんな感じなので今更なのだが
 
圧殺「ハイ、どうぞ」
 
どうでもいい物思いにふけっていると淹れたてのコーヒーが俺の目の前に置かれる。…ビーカーに、砂糖をかき混ぜるための温度計と共に
心霊研究部の部室は科学準備室を使っている。此処にコーヒーカップとか気の利いた物は無い。気になるなら持参しろ、という事なのだ
正規の部員でもないし、別にやかましく言うことでもないので特に何も言わないが
 
???「チャオ~!科学準備室よ!私は帰ってキター!」
 
突然テンションの高い声と共にドアが開け放たれた。何事かと思いドアの方へ向き直ると、心霊研究部の部員の一人であるちろさんが入ってきた
ちなみに科学準備室のドアの立て付けが悪いのはこの人がいつも勢い良く開けすぎる所為でもある
 
圧殺「ちゃお、ちろさん」
ちろ「チャオチャオ~。あ、あーちゃん私にもコーヒー淹れてねー」
圧殺「アイアイサー」
 
言いながらぱたぱたと小走りで部屋に入ってくるちろさん。元気な人だ
 
ちろ「およ?としあき君も居たのね」
――如何にもオマケみたいに言わないで下さい…
ちろ「だってとしあき君部員じゃないしねー」
――それを言われるとツライ…。というか、心霊研究部ってどんな活動してるんですか?
ちろ「…」
圧殺「…」
――うん、何でそこで黙るかなぁ、二人共
ちろ「えーと、適当に集まってー」
圧殺「適当にお茶飲んだり、喋ったりして終わり?」
 
…ダメだこの人達…早く何とかしないと…
 
ちろ「だってねー、具体的に何をしろっていうのよ。休日返上して街に不思議探しにでも出かければいいの?」
 
ちろさんがコーヒーを啜りながら言う。何処のS○S団だ
 
圧殺「としあきが眼球抉らせてくれれば何の問題も無い。今なら要石で圧殺のサービスも付いて来る」
――そんなサービス要りません。眼球も抉らせません
圧殺「チッ」
――露骨に舌打ちしない!
 
畜生早く来てくれ、くたくたさん!
そんな愛とか悲しみに打ちひしがれそうな俺に助け舟を出すかのように準備室のドアが開く。キャークタクタサーン
 
くたくた「……ちゃお……?」
 
ドアを半開きにして控えめに挨拶して入ってくるくたくたさん。可愛いのぅ
 
くたくた「……掃除当番で遅くなっちゃった……」
 
そう言いながら皆の所に歩いてくるくたくたさん
 
ちろ「あー、気にしない気にしない。いつも通りにしてただけだから」
圧殺「コーヒー、淹れるね」
くたくた「……うん、お願い……」
 
まだ熱いままのコーヒーをくたくたさん専用のマグカップに淹れる圧殺さん。俺との扱いに露骨な差がある気がするのは気のせいか
そんな様子を見つめていた俺に気付いたのか、くたくたさんが静かに口を開く
 
くたくた「……としあき、また来たの……?」
――うっ…迷惑でしたか…?
くたくた「……別にそんなことない……」
 
照れくさそうにプイっとそっぽ向くくたくたさん、可愛いなぁもう。思わず頬が綻ぶぜ
そんな俺をニヤニヤしながら見つめる二つの視線。畜生悪いかコノヤロウ
 
圧殺「さて、私はそろそろバイトの時間だから、行くね。としあき、洗い物宜しく」
――何で俺が……
圧殺「オマエの眼球、抉っちゃうゾ?」
――すいませんごめんなさいやらせて頂きます
圧殺「最初からそう言ってればいいのよ。じゃあね、くたちゃん、ちろさん」
ちろ「んー、あーちゃんばいばーい」
くたくた「……また、来世……」
 
スタスタと足早に去っていく圧殺さん。…ん?もしかして気を使ってくれた?
 
ちろ「あー、私も用事思い出したわー。という訳でゆっくりしていってね!ご両人!」
 
若干棒読み気味でこれまた足早に去っていくちろさん。こっちは絶対気を使ってくれたな、うん
 
――…二人とも行っちゃいましたね
くたくた「……そうね……」
 
しまった、気を使ってくれたのは有難いが間が持たねぇ!どうする、俺!?
 
――…えーと…
くたくた「………」
――あ、洗い物でもしますね
 
別に言いつけを忠実に守りたい訳じゃないが、息苦しさから解放されたいがために行動することを選ぶ。くそぅ、情けないなぁ
くたくた「……としあき……」
 
――…?な、何ですか?
 
そそくさと洗い物を始める俺に、くたくたさんが静かに口を開く
 
くたくた「……その……来てくれてありがとう……。洗い物終わったら……一緒に……帰る?」
 
その言葉を聞いた瞬間、俺の思考が停止した。そしてすぐに有頂天になった
 
――かかか帰りますよ!えぇ!一緒に帰りましょう!
 
その後別れるまで俺の心が有頂天に登りっぱなしだったのは言うまでもない