いつもの先生「ではここをー…としちゃん」
――「先生、授業中までとしちゃんって呼ぶのはやめてください」
いつもの先生「えー、としちゃんの方が可愛くていいのに…」
――「そういう問題じゃありませんって…」
いつもの先生「はいはい、それよりここ読んで~」
――「はーい。我輩は猫である―――」
朗読を始める
途中で終わりのチャイムが鳴った
いつもの先生「はーい、そこまでー。次のテストはここから問題を出しますから、よく勉強しておいてくださいね」
生徒A「起立!例!」
今日の授業が終わったが、
先生に聞きたい事があった俺は後を追いかける
――「先生~、少し良いですか?」
いつもの先生「ん?としちゃんなぁに?」
――「この前の敵を知り己を知ればってやつ、詳しく聞かせてもらえませんか」
いつもの先生「あ、アレねー。アレは正しくは、
知彼知己者 百戦不殆
不知彼而知己 一勝一敗
不知彼不知己 毎戦必殆
って書くの」
――「あれで終わりじゃなかったんですね」
いつもの先生「そうよ。本当はもっと長いんだけど
ちなみに最初の部分は、敵を知り己を知れば百戦危うからず。
次の部分は、敵を知らず己を知れば一勝一敗す」
最後の部分は、敵を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず敗れるって書いてあるのね」
――「思ったんですけど、それって実際そうなんですか?」
いつもの先生「完全にその通りとは行かないけど、大体そうよ。相手の事を良く知っていれば、自分に有利に運べる
自分の実力や癖を知っていれば、無理な戦い方をせずに済むし癖を逆に利用したりもできるわ
そもそも勝てそうに無ければ、戦わずに逃げてしまうのも手よ」
――「つまり、知る事は何においても最も重要であるって事ですか?」
いつもの先生「言ってしまえばそう言う事になるわね」
ゆあ先生「お、いつもの先生また何か難しい話してるの?」
横からゆあ姉先生が割り込んでくる
いつもの先生「うん、としちゃんが聞きたい事があるって言うからちょっとね」
ゆあ先生「まぁ立ち話もなんだし、職員室でしないかい?私もいつもの先生の話聞いてみたいし」
いつもの先生「それじゃとしちゃん、いきましょう」
――「あ、はい」
職員室に移動する3人
――「失礼しまーす」
いつもの先生の机を中心に3人集まる
いつもの先生「ところでとしちゃんは、何でこんな事を聞こうと思ったのかしら?」
――「実は、今度テケちゃんと勝負する事になってまして、先生色々知ってそうだから」
ゆあ先生「それでアドバイス貰おうと思ったんだね」
――「そう言う事です」
いつもの先生「それじゃ、試合で役に立ちそうなのを少し教えちゃおうかな。テケちゃんって事は剣道だよね?」
――「あ、はい」
いつもの先生「こんなのどうかしら。不可勝者守也 可勝者攻也
勝つベからざるは守るなり、勝つべきは攻むるなり」
ゆあ先生「…どういう意味よそれ」
――「…さっぱりわかりません」
いつもの先生「つまり、勝てる状況になければ守りを固めて、勝てる条件が揃った時に攻めなさいって事ね」
――「あ、それならわかりやすいです」
ゆあ先生「確かに下手に攻めても逆撃被るだけだしねぇ」
いつもの先生「でも守りを固めるからって攻めるぞーって気配を見せて牽制するのは重要よね」
――「難しい所ですね」
いつもの先生「そうだ、ゆあ先生、後で少し手合わせてしてあげてはどうです?」
ゆあ先生「へ?私が?」
いつもの先生「はいっ」
――「そういえばゆあ先生って強いんですか?」
いつもの先生「そうねぇ、テケちゃんやめかぶちゃんほどじゃないけど、強いわよー」
ゆあ先生「ねぇ、私剣道出来ないんだけど」
いつもの先生「だからそれ含めてちょうど良いかな?って」
――「…マジデスカ」
ここの先生たちは化け物か!とシャ○の声が聞こえた気がする
いつもの先生「おや、としちゃん乗り気でない?」
――「いや…なんで皆そんなに強いんだろうって」
ゆあ先生「練習量の差かねぇ?」
――「練習量…ですか」
いつもの先生「そ、練習量。地道な努力が強さを生み出すのね。ところでゆあ先生、剣道のルールわかります?」
ゆあ先生「よくわからないけど、兎に角叩かれないようにしながら竹刀で引っ叩けば良いんでしょ」
いつもの先生「まぁ、そうね」
――「引っ叩くって…」
ゆあ先生「言い方の問題だから気にするなって」
いつもの先生「それじゃ早速やりましょうか」
――「やりましょうかって、道具がありませんよ」
テケちゃん「としあき、話は聞いたのだ」
いつの間にかテケちゃんが居る
――「いやいや、いつの間に居たんですか」
テケちゃん「ゆあ先生と手合わせの話が出た辺りからなのだ」
いつもの先生「テケちゃん、道場と道具、少し貸してもらえるかしら」
テケちゃん「としあきが強くなるためならしょうがないのだ」
ゆあ先生「それじゃ早速行こうかねぇ」
皆で道場に移動する
俺とゆあ先生は準備をする
準備していると、テケちゃんが話しかけてきた
テケちゃん「としあき、強くなりたいならボクに言ってくれれば良かったのだ」
――「そうしようかと思ったけど、俺にも色々事情があるんです」
テケちゃん「今度からはこう言う事はボクに相談してほしいのだ」
――「…わかったよ」
テケちゃんは何となく寂しそうだった
もしかしてテケちゃんは俺の事…と一瞬期待したが冷静に考えるとそれは無いなという結論はすぐに出た
そして…
いつもの先生「二人とも、準備できましたねー」
――「いつでもいけますよ」
ゆあ先生「これ以外と動きづらいわねぇ」
いつもの先生「ルールは簡単、としちゃんがゆあ先生から1本取るまで続けます」
…マジか
――「…1本取る前に倒れちゃいそうです」
テケちゃん「としあき頑張るのだ」
いつもの先生「それじゃ、始めー!」
ゆあ先生が早速仕掛けてくる
――(は、早い!)
バシィッ
何とか何とか受ける事が出来たが、その重さは半端ではない
即座に2発目が来る
バシィッ
これも何とか受ける事が出来た
バシィッ バシィッ バシィッ
反撃する暇が無い、防御で手一杯だ
ゆあ先生「もらうよっ!」
ゆあ先生がそう言ったかと思うと俺竹刀は叩き落され胴体に一撃が叩き込まれた
テケちゃん「としあきの負けなのだ」
――「…ゆあ先生から1本取るなんて無理っすよ」
いつもの先生「あら、としちゃんは私から聞いた事をもう忘れたのかしら?」
――「聞いた事?…あっ…」
いつもの先生「思い出したみたいね。さ、頑張るのよ」
バシィッ バシイッ バシイッ
――(受けてるだけじゃどうしようもない…何とか隙を作らないと…)
ゆあ先生の竹刀が振り下ろされる
俺はそれを弾く
――(今だ!)
バシィッ
………
テケちゃん「としあきの負けなのだ」
ゆあ先生「危ない危ない、いきなり弾かれたからびっくりしたよ」
俺の竹刀がゆあ先生を捕らえるようり先に
ゆあ先生の竹刀が俺の胴体を捕らえていた
いつもの先生「としちゃんおしいっ」
――「くそー」
いつもの先生「でもいけそうだったじゃない。頑張ってっ」
その後
バシィッ バシィッ バシィッ
バシィッ バシィッ バシィッ
―――――数時間後
俺は相変わらず攻撃が出来ず、ひたすら受け続ける
けど…
――(少しわかってきた気がする…ゆあ先生の攻撃は凄く直線的だ…やってみるか)
ゆあ先生の竹刀が振り下ろされる
――(やれるかっ!)
その竹刀の勢いを逸らすように受け流すと、ゆあ先生の竹刀は勢い余って地面を打ち付ける
――(今だ!)
バシィッ
テケちゃん「としあきの勝ちなのだ」
いつもの先生「としちゃん凄い!凄い!」
ゆあ先生「いやぁ、参ったね」
――「…勝った?」
テケちゃん「としあき、よく気づいたのだ」
――「テケちゃんは俺より先に気づいてたのか…」
テケちゃん「ボクは君が最初に負けた時点で、先生は君が弾いた辺りで気づいてたのだ」
ゆあ先生「でも彼、剣道初めてまだそんなに経ってないんだよね?凄いじゃないか?」
テケちゃん「としあきは才能あるのだ」
いつもの先生「そうね、今日中に勝てるとは思って無かったわ」
――「いや…俺自身が一番びっくりですよ」
テケちゃん「この調子で精進するのだ」
ゆあ先生「私なんかでよけりゃ、また相手するよ」
いつもの先生「それじゃ、今日はこの辺でお仕舞いかしらね」
――「テケちゃんも先生も、ありがとうございました」
ゆあ先生「いいって事さ」
いつもの先生「また相談があったらいつでも言ってちょうだいね」
テケちゃん「としあき、今日はゆっくり休むのだ」
――「はいっ!」
皆で片づけをし、そしてテケちゃん、ゆあ先生と別れる
いつもの先生「そうだ、最後に、もう二つ言っておくわね
能なるもこれに不能を示せ。出来るのに出来ないふりをしなさいって事ね
今までの試合で出来てない事を本番で突然やられると、相手は少なからず動揺するし対応もし辛いわ
それと、勝兵はまず勝ちて後に戦いを求め、敗兵はまず戦いて後に勝ちを求む
十分に準備してから戦うものが勝ち、戦い始めてから勝とうとすると負けるっていう意味
よく練習して、当日の調子は万全に整えておけば勝てますよって言う事ね」
――「はい、肝に銘じておきます」
いつもの先生「よろしい。それじゃ、試合頑張ってね」
――「はい、ありがとうございましたー」
いつもの先生と別れて家路についた
続かない