ss74520

Last-modified: 2009-02-11 (水) 21:24:12

ss74124のつづき

 
 

雷影様「マジ許す!」

 

審判の声が道場の中に響く
声を聞いた俺はすぐさま前へ出る
最底辺の話が真実なら俺と⑨まだ先輩との実力の差は天と地ほど・・・は大げさか
少なくとも俺が仙人チャクラでも練れる様にならないと勝負にもならないのは明白である
だからこそ、俺は前進することを選んだ
無策の猪突猛進と言われようと構わない、今はこれが最善だと判断した
実力の差があるのなら小細工は無用、余計なことに神経を磨り減らす余裕なんてない
相手を見据え、全力で間合いを詰める・・・攻撃こそ最大の防御
あとは最低限相手の動きに注意さえすれば、一発TKOだけは避けられるはずだ

 

左足で床を蹴り前へ出る
その勢いに乗り竹刀を持った腕を伸ばして振る
動作はほぼ一瞬

 

最底「―――速いっ!!」

 

素人にしては上等すぎる一撃
普通の相手・・・他の剣道部員達が相手であればまず間違いなく勝てる一撃
触れれば勝ちという今回のルール上、例え攻撃が当たらなくても
鍔迫り合いに持ち込むことができれば条件は満たす事ができる
更にこちら側は戦闘不能になるまで何度でも攻撃を貰うことができる
ならばこそ、この判断は正解といえる

 

――勝った!!

 

声には出なくとも、この瞬間俺は己の勝利を確信した
剣道自体、基本練習を付き合いでやった程度の経験しかないものの、
身体の動かし方だけは今でも身体が覚えていてくれたようだ
それに、練習の様子だけは何度も見ていたのだから、様にはならなくても真似くらいはできる
そう思って仕掛けた面、渾身の一撃だ
竹刀の先が⑨まだ先輩の身体に迫る
この刹那、この場にいた誰もがとしあきの勝利の勝利を確信した・・・ただ一人を除いて

 

としあきの竹刀が空を切る
それどころか⑨まだ先輩の姿が視界から消失していた

 

――「―ぇ?」

 

思考が停止する
予想外の事態に残心は無く、その場で足も止めてしまっていた

 

KING「としあきー!後ろ後ろー!!」

 

ッッパァァァァァァン!!

 

道場の中を軽快な音が鳴り響く
・・・一体何が起きたのかよく分からない
初撃の奇襲に失敗したらしく呆然としてた所、KINGの声のままに振り向いたその時だった
頭に軽い衝撃が走った
痛みはほとんど無かった・・・残ったのは攻撃を受けたらしいという認識だけ
それまでカラッポになっていた頭の中がかえってクリアになっていく

 

ここでようやく何が起きたのか理解する
⑨まだ先輩は初撃の面を身体を捻ることで回避、俺の側面へ移動
すかさず死角に入り、KINGの声で振り向く俺に向かって一撃を入れたのだ

 

??「い、いっぽ・・・ぁ」

 

普通の試合であれば間違いなく一本を取られていたのだろう
それこそ、今のように審判役でない剣道部員がつい口にしてしまう程、綺麗に
振り向いた先、5m前方に引き面の残心姿の⑨まだ先輩があった
肩口まで伸びた、少しウェーブ掛かった髪が流れるようかすかに揺れる
すごく綺麗だった、見惚れてしまいそうだった

 

――「すごいですね、正直こんな強いとは思ってもみなかったです」
 ⑨「それは、一体どっちの意味で言ってるのかな?」
――「さぁ、どちらでしょうね・・・素直に褒めたかもしれないし、甘く見てたからかもしれない」
 ⑨「じゃあ褒め言葉として受け取っておくわね、ありがとう」

 

俺は⑨まだ先輩を正面に捕らえ竹刀を中段に構え、まだ勝負を続行する意思を示す

 

 ⑨「いいわ、いくらでも来なさい」

 

⑨まだ先輩も竹刀を構え直す
お互い構えたまま膠着状態となり、道場の中が再び静寂に包まれた

 

KING「すごーい、何か格ゲーみたい・・・」
最底「文字通り『蝶のように舞い、蜂のように刺す』この動き・・・これが噂の⑨流」
KING「し、しっているのか、雷電!?」
最底「え?(誰だよ雷電って・・・)う、うん、前に噂で聞いただけなんだけど・・・
   ⑨流はその変幻自在な動きで相手の翻弄し、攻撃時の隙を突く。
   その動きはまさに針を持った蝶が舞っているようだ、とかなんとか
   今じゃもう使い手もほとんどいないそうだけど」
KING「つ、つまりどういうことだってばよ!」
最底「(話聞いてたのかな・・・)つ、つまり相手にまとわり付いて隙を突く戦い方なんだよ」
KING「ふぅん、文字に起こしてみるとなんかやらしいよね、えろいね」
最底「・・・(えろいんだ・・・)」

 

最底辺とKINGが何か話しているのが耳に入る
相変わらず余裕は無いが、有益そうな情報かどうかくらいは判別できる

 

――「⑨流・・・?」
 ⑨「あら、知ってたの?」
――「今しがた、最底辺から聞きました。
   こんな流派があるなんて知らなかったですよ」
 ⑨「マイナーですもの、仕方ないわ。
   それに門下生とかいてもその・・・私そういうのは放任主義だから・・・」

 

そう言って頬を紅潮させていた、これが自爆というやつか

 

 ⑨「ぅん、おしゃべりはここまでにしましょう」

 

互いに竹刀を構え、二合目に備える
再び道場の中が緊張に包まれた

 

先に仕掛けたのは俺の方だった
今度は敢えて振りを大きくして攻める

 

――ほんのちょっと引っ掛けるだけでいいんだ、ほんのちょっと・・・!!

 

初撃はコンパクトすぎたのだ・・・今回は有効打を取る必要はない
なら振りを大きくすることで当たりやすくなるはずだと考えたのだ
それに、さっきの面が上出来すぎたのだ・・・あれをもう一度やってみろと言われても再現できる自信は無かった
上段気味に構え左足で床を力強く蹴る
⑨まだ先輩との間を詰め、竹刀の射程内に収める
どうせ避けられるのならカスるだけでいい・・・そう思い容赦なく全力で振り下ろす

 

パァァァァァァァン!!

 

全力の面はカスることなくかわされる
面をかわしつつの抜き胴、乾いた音が大きく響いた
鋭い衝撃が固い胴越しの腹へと響く・・・正直あまりもらいたくは無い、そう思わせる痛みがあった
痛みを割り切り、攻めの思考を維持する

 

――抜き胴を決めた⑨まだ先輩は俺の後ろだ・・・逃げる時間を与えずに攻めれば!

 

即座に振り返り⑨まだ先輩を追う
一足でトップスピード、すぐさま籠手を狙う
俺の竹刀が籠手部位へ迫る
しかしそこまでだった・・・急に⑨まだ先輩の竹刀がクンッ、と動く
自分の手元を見ると、そこには何もなかった・・・竹刀が"消えた"
少し間をおいて竹刀の落ちる音がした
そこでようやく何をされのか理解した・・・⑨まだ先輩は竹刀の先で徐々に大きな円を描くように2回ほど回したのだ
ただそれだけ、俺の竹刀は⑨まだ先輩の竹刀に巻き取られ上へ飛ばされたのだ

 

 ⑨「竹刀の握りが甘いですよ、としあきくん?」

 

これはアドバイスだろうか、それとも余裕の表れか・・・
俺は落ちた竹刀を拾い上げ再び構えをとる

 

――「俺はしつこいですから、ちゃんと最後まで付き合ってくださいよ・・・!」

 
 

・・・一体何度打ち込まれただろうか、体中が悲鳴を上げている
まだいけるにはいけるのだが、あまり持ちそうにない
これが勝負でなければとっくに悲鳴を上げてギブアップしているところだ

 

だが、まだまだ余裕のありそうな⑨まだ先輩の表情には焦りが浮かぶ
動きに変化は無いものの表情からそう読み取れた

 

――何で焦って・・・そうか!

 

すっかり忘れていたが、そろそろ時間的にテケちゃんが戻ってくる頃合なのだろう・・・なのに俺がまだ倒れる気配はないのだ
勝負が始まってからもう数え切れないくらいクリーンヒットを貰ってはいたがまだいけると感じた
⑨まだ先輩の攻撃はその殆どがピンポイントに狙ってくる鋭い打撃で構成されている
単純にパワー不足なのだ
急所とか、痺れやすい箇所を狙っているのだろう・・・それを成せるからこその強さ
だが今の俺は防具を身に着けているおかげか、被害は最小限に抑えられているようだ

 

このままテケちゃんが来れば俺の勝ちといってもいいだろう
だがそれでは俺のプライドが許さない、どうせならキチンとした勝ちが欲しい
そこでここが好機とばかりに俺は賭けに出ることにした

 

――「どうしました?時間が気になりますか?」
 ⑨「・・・」

 

返事は沈黙、肯定だ

 

――「どうです?次で決着をつけませんか?時間も惜しいでしょうし」
 ⑨「・・・」

 

再び沈黙、承諾だ

 

――「別に俺はこのまま続けてもいいですよ、まだ体力は残ってますから」
 ⑨「・・・」
――「さ、テケちゃんが戻ってくるまでのんびりやりましょうか」

 

いわゆる口撃の類だ
なに、強敵とのタイマンイベント戦闘で補助魔法とか補助アイテムを使ってもゲームオーバーにはならないさ
・・・まぁ、一応例外はあったんだがな
ともかく罰は当たらんだろう

 

 ⑨「・・・わかったわ、次で決着をつけましょう」
――「さすが⑨まだ先輩、話がわかりますね!」

 

手段はともかく、これで⑨まだ先輩をこちらのペースに引っ張り込む事ができた
次で決着をつけるということはすなわち、俺が⑨まだ先輩に触るか攻撃に耐えるかすればいいのだ
当然勝つアテがあるからこそ、この提案を持ちかけたのだ
最後の一瞬に備え、息を整える
防具をしているので自分の頬を叩いて渇を入れることができない・・・いや、それでよかった
無意味にテンションを引き上げても勢いは増すものの反応が鈍ってしまう
俺はもう一度深呼吸をして、昂ぶる自身を落ち着かせる・・・

 

互いに床に円を描くように隙を伺う
これまでカウンター主体であった⑨まだ先輩が初めて、攻めの意思を見せる
おそらく決着は一瞬・・・この場にいる誰もが一部始終を見届けようと沈黙を守る

 

――「・・・」
 ⑨「・・・」

 

先ほどの会話から何分経っただろうか・・・いや、まだ数秒しか経っていないかもしれない
時間の感覚さえ狂ってしまいそうな緊張感が場を支配する
あらゆるものが静止する道場の中で、唐突に変化が起きた
剣道部員の誰かが触れたのだろう・・・壁に立てかけてあった竹刀がバランスを崩し倒れようとしていた
普段ならば一秒もかからず倒れるだろう・・・今に限ってはその何倍もの時間をかけてゆっくり倒れていく
ガシャン、と竹刀が床へ倒れる音が響く
連鎖するように、道場内で更なる変化が起きた

 

 ⑨「ヤアアアァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
――「だああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

竹刀の音を皮切りに両者が動いた
己を奮い立たせるように、お互いほぼ同時に雄叫びを上げこちらへ向かってくる
ほんの少し遅れて俺も前へ出る
一番最初に取ったものと同じ行動だ
さっきは⑨まだ先輩がどう動くかまったくわからなかったから動きに対処できなかったが、今回は違う
相手の行動を一点読みで動く
⑨まだ先輩が鋭い"突き"を繰り出す
初動からの軌道はほぼ最短
おそらく今の⑨まだ先輩にとって今最も決定力のあるカードだろう・・・しかしそこに勝機がある

 

――読み通り"突き"できた!!

 

読みは的中!
しかしもう回避が間に合わない・・・いや、これでいいのだ・・・!

 

ガッッッ!!!!

 

――「ングッ!?」
KING「あぁっ!」
最底「としあき!!」

 

⑨まだ先輩の突きが防具の喉の辺りに突き刺さる
だが読みは当たったのだ、予め肩から顎にかけて力を入れておいたおかげで被害は最小限に抑える事ができた

 

――「・・・ッ! ぁぁぁぁああああああああああ!!」
 ⑨「!?」

 

一瞬飛びかけた意識を引き戻す
俺は声を上げ、己を奮い立たせながら左足に力を込めその場で踏ん張る
面の中から⑨まだ先輩をじっと見据える
突きの姿勢のまま動かず、竹刀を持つ腕は伸びきっている
俺は最後の力を振り絞り、突きを食らって反れた身体を起こす
さっきまで死んだかのように静かだったギャラリーが息を吹き返す

 

 ⑨「・・・ぁっ!?」

 

最後の最後、まさかの事態に思考がフリーズしていた⑨先輩が周囲のざわめきで我に返る
それと同時に腕に力を込め、このまま俺を押し切ろうとする

 

 ⑨「んぅぅぅぅ・・・っ!!」

 

既に伸びきっていた腕に俺を押し倒せる力はない
いや、そもそも一度勢いの止まった状態で俺を押し倒せるほどのパワーは⑨先輩にはない
だからこそ、この突きの一点読みに全てを賭けたのだ!

 

――「だぁぁぁらっしゃああああああああ!!」
 ⑨「きゃぁっ!!」

 

下っ腹に力を込め、身体全体を使って竹刀を一気に押し返す
力負けした⑨まだ先輩の竹刀が自身の元へ押し戻される

 

ブツッ!!

 

何かの千切れるような音
その後に竹刀がガシャァンと音を立てて床に転がる音がした
⑨先輩の竹刀を吹っ飛ばしたのだ

 

――つまり今の⑨まだ先輩は丸腰・・・"お出掛け権"頂きだ!!

 

勝利を確信し感慨に耽ることおよそ1秒

 

――・・・おかしい、周りが静か過ぎる
  ⑨まだ先輩の突きを力技で跳ね返したんだぞ、もっと歓声とか、そういうのを上げるべき展開だろう

 

心の中で叫びをあげる俺
それでも道場の中は静寂を保っていた

 

 ⑨「あぁぅ、いたたた・・・」

 

⑨まだ先輩の声がしたので咄嗟に前を見る
どうやら押し戻された勢いで尻餅をついてしまったようで床の上に転がっている
ブラウスにスカート、ソックスは脱いだので裸足、といった格好である
しかもさっきまで激しく動き回っていたため、汗に濡れたブラウスからブラが透けて見えていた
さらに言えば転んだ拍子にスカートの裾が捲くりあがってパンツが丸見えである

 

淡い、ピンク色だった

 

――「うむ、眼福眼福」

 

ギャラリー諸君も同じ事を思っていたのだろう
ほぼ全員が同時に頷く

 

 ⑨「ぇ、いやあっ!」

 

自分のあられもない姿を大勢に視姦されて恥かしくならないはずがない
スカートの裾を抑えるようにぺたん、と座り込んでしまった
両腕が⑨まだ先輩の豊かな胸をさらに強調するように挟み込む
さながら、パンツ隠して乳隠さずといったところか
勿論周囲の視線はそこへ集中し始める
男の目というものは常に獲物を狙う獣の目なのだ

 

最底「ちょ、ちょっと皆待―っ!?」
KING「あー、ちょっとごめんね」

 

最底辺がとっさに、観戦の対象から視姦の対象と成り代わってしまった⑨先輩のフォローに回ろうとした
しかしすぐ横にいたKINGが最底辺を羽交い絞めにして制止する

 

最底「き、KING!邪魔するなよ!」
KING「いやいや、空気を読めていないのは君の方だよ、最底辺?」
最底「ぐうっ!!(駄目だこいつ腐ってやがる!)」

 

その光景を見ていた俺はKINGに向かって腕を突き出し親指をグッ、と立てる
KINGが最底辺を羽交い絞めにしながらもそれを返す
俺とKINGとの間に新たな友情が芽生えた瞬間であった
そこで俺は足元に転がる何かに気づいた・・・ボタンが数個ほど転がっていた

 

――どこか見覚えのあるボタンだな・・・ん、ボタン?

 

俺は⑨先輩の方へと視線を移すと、⑨まだ先輩のブラウスのボタンがなくなっているのか肌が露出していた
しかも、よりによって胸元である
さらに言えば両腕で押し出された胸が・・・ブラが見えているではないか!

 

  「うおおおおおおおっっ!!」

 

剣道場に♂共の雄たけびが上がる!

 

 ⑨「ぇぅ・・・いやぁ・・・」

 

あまりの威圧感に⑨まだ先輩は気圧されたのか怯えてしまっている
あれではもう竹刀を拾って追い払うなんてできなさそうだ

 

 zip「せんぱい! い、今助けにいきま・・・ひゃああぁぁぁぁぁ・・・」

 

zipちゃんが⑨まだ先輩のフォローに回ろうとするも部員達という壁に阻まれ中に入ることができない
むしろ飲み込まれていったようにもみえた・・・それ以降彼女の声は聞こえてこなかった
・・・じりじりと、包囲網の輪が幅を狭めていく
座り込んだままの⑨まだ先輩は少しずつ後ろへ逃げていく・・・が、いかんせん遅すぎる
包囲網が⑨まだ先輩との距離を確実に縮めていく

 

 ⑨「あぅっ!」

 

ついに壁に背が付いてしまった
と、その拍子につぼみが花開くようにブラが外れ・・・隠れていた乳房を露わにする

 

――「!?」

 

最後の突きを跳ね返した時、⑨まだ先輩の持っていた竹刀がブラウスのボタンを引きちぎってしまったのだが・・・
どうやらその時からホックが外れかかっていたのだろう
最終的に、壁に背を付けた拍子で残りが外れてしまったようだ
フロントホック型の宿命か、ブラが押さえつけていた豊かな胸が一気に解き放たれ微かに揺れる
大きく開いたブラウスから見え隠れする乳首がとても扇情的に映った

 

 ⑨「いやああぁぁぁあああああああ!!」
――「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

咄嗟に露わになった胸を両腕で隠す⑨まだ先輩
しかし時既に遅し、盛りの付いた男子部員達はさらにヒートアップする
時に暑い・臭い・汚いと言われる剣道部である、部員の多くがどんな境遇かは想像に難くない

 

 ⑨「いやぁ・・・見ないでぇ・・・おねがい・・・」

 

ゴクリ、と生唾を飲む

 

――あの⑨まだ先輩が・・・こんな格好で・・・

 

いやいかん、周りの空気に流されるな俺・・・KOOLだ、KOOLになれ
しかしこれはチャンスだ、まだ決着はついていない

 

――「⑨まだ先輩・・・確か"触れば"勝ちなんですよね・・・」
 ⑨「え?・・・た、確かにそうだけどい、今は・・・その・・・」

 

目前の肢体に触れようと手を伸ばす

 

――この勝負、俺の勝ち・・・でも・・・

 

本当にこんな決着の仕方でいいのだろうか、と躊躇し手が止まる

 

 ⑨「とし・・・あきく・・・ん?」
――「あーもう、何やってんだよ俺は!」

 

一度は伸ばした手を戻す
迷いを払うように腕を払い、体の向きを180度反転
動けない⑨まだ先輩を庇う様に剣道部員達と対峙する
正直劣情に流された自分が恥ずかしい・・・誠意は態度で示す
頼れる武器は一振りの竹刀のみ・・・これで暴走中の部員達を相手にするのは心許ないが・・・

 

ふと視界の隅に明らかに剣道部員とは別の人影が見えた

 

――あれは審判の人・・・って、あれ理事長じゃねえか!

 

理事長・・・雷影様が俺の視線に気づく
俺の置かれている状況をジッ、と見据え・・・

 

雷影様「マジ許す!」
――「止めに入るとか、他の先生呼ぶとかしろよ!!」

 

思わずツッコミを入れてしまう
雷影様は微動だにする気配がない

 

――しかしこの人、この状況でさえマジ許すしか言ってないぞ・・・もうやだこの学園

 

頭をブンブンと振り、気持ちを切り替える
現実逃避してもこの状況は変わらない

 

――「ああもう、やるしかないってか? なるようになれだ!」
  「ォォォォォォオオオオオ」

 

俺達を取り囲む人の波が
一斉に押し寄せてくる

 

竹刀をさらに強く覚悟をきめる・・・!!

 

ガラッ!
 ⑨「きゃっ!」

 

波が崩れようとした刹那、⑨先輩の背後の壁が―否、道場入口の引き戸だ・・・それが突然音を立てて開いた
引き戸に背を預けていた⑨先輩は開いた空間へ倒れこんでしまう

 

――「⑨まだ先輩!?」

 

後ろが気になって振り向こうとする・・・が、戸が開いてから道場が完全に凍りついたかのように唐突に静かになった
まるでザ・ワールドでも使ったのだろうか、と思うほどだ
何事かと周囲の部員達を見る

 

全員表情はそのまま、真っ青な顔をして固まっていた
脂汗を大量に流している者もいる・・・一体何が彼らを・・・

 

??「・・・誰なのだ?」

 

凍った空間の中に幼いものの、芯の通った声が静かに響く
聞き覚えのある声だ・・・6時の方向、俺の真後ろだ
声の主を確認するべく振り返る

 

テケ「一体、誰が、こんなことをしたのだ?」

 

声の主は、着替えを終えて⑨先輩を迎えに戻ってきたテケちゃんだった
表情や声色にはいつもと変わらないものの、何処かしら怒気を感じられる

 

 ⑨「うぁぁぁぁ、テケちゃぁぁん!!」
テケ「主様はテケが守るのだ。悪い虫を追い払ってくるので少しだけ待ってて欲しいのだ」
 ⑨「ぅん・・・」

 

テケちゃんが着ていたブレザーを⑨まだ先輩の肩に掛ける
サイズが違うので隠したいところがあまり隠せてはいないが・・・⑨まだ先輩を落ち着かせる効果はあったようだ
その様子を見て安心した表情を浮かべるテケちゃんは・・・

 

テケ「さぁ、正直に言うのだ・・・今ならじょうじょうしゃくりょうのよちがあるのだ」

 

一瞬にして修羅と化した
いや、表情自体はいつもとあまり変わらないのだが・・・いや、眉がちょっと釣り上がっている
いかん、こういう時のテケちゃんは本気で怒ってる時だ
この状況しか知らない今のテケちゃんに、俺の無実を証明できるとは到底思えない
しかし下手に逃げ出そうとすれば確実に斬られる・・・成敗されてしまうのは必至だ

 

――考えろ・・・何か、何かいい案があるはずだ!

 

考える
あらゆる可能性を考慮し、俺が生還するためのストーリーを思い描く
しかしどの結末も最終的にはテケちゃんに成敗されしまった・・・まだ、何か方法があるはずだ
普段使わない頭をフル回転させているがどうにも天井が騒がしい、集中ができない

 

―――うん?天井・・・?

 

ふと天井を見上げると何か大きな塊が落ちてきた

 

??「⑨まだ先輩をレイプできると聞いて・・・!歩いてやってきました!!」

 

謎の声と共にシュタッ、と天井から人影が降ってくる

 

――「!? おまえ・・・ちーすけ!」

 

道場の天井裏から降ってきたのはちーすけだった
学園一のレイパーオブレイパーとして悪名高い我が友である

 

ちー「よう、としあき。 俺がレイプについていろいろとレクチャーしてやろうか?」

 

訳の分からないタイミングで訳の分からない所から現れて何をのたまうのか、この男は
そもそも何処で嗅ぎ付けてきたかすら不明である

 

テケ「・・・この人は」

 

テケちゃんがちーすけを見てピクッ、と反応した
そういえばちーすけは、前々から何度か⑨まだ先輩をレイプしようと仕掛けたことがあったはず・・・話によれば全て失敗している
その失敗の原因がテケちゃんであるとすれば、この反応も合点がいく
そこに俺は一筋の光明を見出した
善は急げだ、ちーすけが余計な事をしないよう即座に行動に移す

 

――「テケちゃん、こいつが犯人だ!」
ちー「おいおいとしあき、レイプの相手くらい自分で決めさせてくれよ」

 

ちーすけの頭を両手で鷲づかみにし、テケちゃんの近くまで持っていく
ちーすけとテケちゃんの顔が向き合う・・・徐々にちーすけの顔に汗が浮かびだす

 

ちー「・・・うん? 相手っていうのはテケ・・・ちゃんなのか?」
テケ「主様、わかったのだ。 この人は悪い人なのだ、悪い虫は追い払うのだ」

 

テケちゃんが傍に置いてあった竹刀を手に取る
日頃の行いが仇となったのか、問答無用でちーすけが犯人であると認識されたようだ

 

――「すまん、あとで何か奢ってやるから・・・許せ」
ちー「おい、としあき! くそ、なんだかよくわからんが俺は帰るぞ!」
テケ「悪い虫・・・覚悟するのだ」

 

直後、その場にいた全員がそれぞれ別の方向へと動く
逃げだしたちーすけをテケちゃんが追いかける
⑨まだ先輩を取り囲んでいた剣道部員達も蜘蛛の子を散らすように逃げていく・・・何人かはとばっちりを受けて吹っ飛んでいた

 

――「よし、⑨まだ先輩! こっち!」
 ⑨「ちょ、ちょっと待・・・きゃっ!?」

 

道場内は今パニックに陥っている
この隙に乗じて俺は⑨まだ先輩を連れて安全な場所へ避難することにした
俺は⑨まだ先輩を抱きかかえ、道場の離れにある更衣室へ向かって全力で走った

 
 

――「その・・・今日はすみませんでした」

 

夕日の光が差す更衣室の中俺は入り口のドアの方を向いたまま謝罪する
部屋の奥では⑨まだ先輩が着替えをしている
女の子の着替えに同席は不味いので更衣室を出ようとしたが、『お願い、ここにいて』とお願いされてしまった
流石に気まずいので俺はドアの方を向いて更衣室内のベンチに腰を下ろしていた

 

 ⑨「なんで、謝るの?」
――「いや、⑨まだ先輩のブラウス・・・ボタン飛ばしちゃったの俺じゃないですか。それに・・・」
 ⑨「・・・ううん、あれは事故。誰も悪くないわ」

 

ギシッ、とベンチが鳴る・・・着替えを終えたらしく俺の後ろへ座ったようだ

 

――「でも、結果的に⑨まだ先輩をあんな目に遭わせちゃったのは俺があんなことを・・・」

 

後ろへ振り返りつつそう言い掛ける
俺の口元に⑨まだ先輩の人差し指が当てられ、言葉は途中で遮られる

 

 ⑨「いいの、私が無いって言ったのなら無いの。何も無かったの、わかった?」

 

当の被害者にこうまで言われてしまってはこれ以上言うだけ無駄である
素直に頷くことにする

 

 ⑨「うむ、よろしい!」

 

俺の口元から人差し指が離される、どうやら発言権は返ってきたようだ
そこで今まで忘れていたあることを思い出した

 

――「ところで⑨まだ先輩・・・勝負の結果、ってどうなるんでしょう?」

 

結局穿り返してるような気もするが、この辺ハッキリさせておいたほうがいいと判断した
いろいろあって尻すぼみとなってしまったが、やっぱり俺の負けと言っておいた方が・・・

 

 ⑨「あら、私の負けじゃないのかしら?」 
――「はえ?」

 

あっさりと負けを認められてしまった
思わず情けない声が出てしまった・・・少し恥ずかしい

 

――「いやいや、俺の負けでいいですよ! 言いだしっぺは俺なんですから」
 ⑨「でもそれはルールに基づいてないわ。それに私・・・ここまで抱きかかえられて来た訳だもの」

 

きゃー、と顔を赤らめ恥ずかしがる⑨まだ先輩
そうだ、非常時とはいえ許しも得ずに女の子を抱きかかえて連れてきてしまったのだった
確かに触ったには触ったのだが・・・納得がいかない

 

 ⑨「あら? 納得いかないっていう顔してるわね・・・うーん」

 

そう言って何か考え込んでしまった
何か長くなりそうだから今のうちに外の様子でも見に行くことにする
ここは女子更衣室だ、長居はできない

 

――「そ、それじゃあ、俺は外の様子でも見てきますね」
 ⑨「あ、ちょっと待って!」

 

呼び止められ振り向く
頬に何かがやわらかいものが触れた

 

 ⑨「はい、これで私の負け。テケちゃんはまだ・・・"迎え"には来てないでしょう?」

 

頬を紅潮させ、照れ顔の⑨まだ先輩がそう言った

 

――今の感触・・・⑨まだ先輩の唇?

 

俺はつい先程、キスされたらしき頬に手を当て呆然としていた
自分の顔が熱くなってるのがわかる・・・きっと耳まで真っ赤なのだろう

 

 ⑨「としあきくん、動けなかった私を守ってくれたでしょう? そ、そのお礼・・・よ?」

 

心臓の動悸が速度を上げていく

 

――なんだろうな、この気持ち・・・初めてテケちゃんを見た時に似てる気が・・・あれ?

 

 ⑨「さ、さぁ! この部屋暑いし、皆も心配だし外へ出ましょ!」
――「あ、あぁ! そうしましょう、そうしましょう!」

 

あからさま過ぎる照れ隠しをする⑨まだ先輩
丁度俺も同じことを言おうとしてたので冷やかしの言葉は言わないことにする・・・むしろ言えるものか
でも、何だかいい気分だ・・・今なら死んでもいいとさえ思える・・・

 

⑨まだ先輩が外へ出ようと更衣室のドアノブに手をかけようとする
すると突然、すごい勢いでドアが開いた

 

テケ「主様、大丈夫なのです!?」

 

テケちゃんだった

 

テケ「む、不届き者がいるのだ!」
――「グアアアアアアアア!!」

 

直後、俺の身体は宙を舞っていた・・・
そう、ここは女子更衣室・・・男子がいていいはずもない

 

テケ「不届き者は成敗したのだ。・・・としあき、何でこんな所で寝てるのだ?」
 ⑨「テ、テケちゃん!?」
テケ「! 主様、もう日が暮れてしまうのだ。早くテケとお出掛けするのだ!」
 ⑨「え、えぇ・・・荷物取ってくるからテケちゃんは先に校門で待ってて?」
テケ「わかったのだ! 校門で待ってるのだ!」

 

⑨まだ先輩の言う通りに校門へ走っていくテケちゃん
切伏せた相手がとしあきであってももはや我関せず状態で・・・それほどお出掛けが楽しみだったのだろう
⑨まだ先輩がボロ雑巾のようになった俺の元へ駆け寄ってくる

 

 ⑨「ご、ごめんなさいね、としあきくん」
――「い・・・いえ、わ、悪いのは俺なん・・・で・・・」
 ⑨「勝負は私の負けだったからとしあきくんも一緒に、と思ったのだけど・・・」
――「すみません・・・多分、テケちゃんが許してくれない・・・と思います・・・」

 

薄れいく意識の中で⑨まだ先輩の姿を見る
・・・この角度はちょうどパンツが見える・・・しかし視界が霞んでよく見えない

 

 ⑨「次は私の方から説得してみるから・・・今回はこれで我慢してね」

 

頬にまたあのやわらかい感触
⑨まだ先輩の顔が離れていく

 

 ⑨「それじゃあ、テケちゃん待たせちゃってるから・・・ごめんなさいね」

 

そう言って小走りで走り去る⑨まだ先輩のパンツはもう、霞んで見えなかった・・・

 
 

なお、今回の騒動に加担したとして剣道部員と俺は一人残らず、いつもの先生にこっぴどく絞られたのであった

 
 

                                      おわり