1
ある日、風邪で高熱を出して学校を休んだ俺
誰か見舞いに来てくれるかと思ったけどそんなことは無かったぜ!
深い悲しみに包まれつつ大人しく寝て身体を回復させた俺は、その翌日元気に登校した
そして、各所で休む前日まで見ることの無かった光景を目にする
圧殺「じゃあ今回はミコミコフォームで勝負」
なのか「宜しくなのだー」
と言って緋想天ファイトを始めようとしているのは圧殺さんとそーなのかーちゃん
そこだけ見れば見慣れた光景だが、二人の手にはカメラのような小さな機械と、一枚のカード
二人がその機械にカードをセットすると、
<<<トウホウライドゥ>>>
<<<ハクレイレイムゥ>>>
という電子音声が響き、二人の手に御幣とお札が現れた
なのか「ではでは行くのかー。緋想天ふぁいと~」
圧殺「レディ……ゴー!」
なのか「ごー!なのかー」
そのまま緋想天ファイトを始める二人。何だ………?あのみょうちくりんな機械は……?
考えても解らないので、バトルを続ける二人を尻目に、俺はその場を去った
その後も、先程と同じようなやりとりが色んなところで、色んな人達の手で行われていた
例えば、
あるる「さて、スキマシステムの新機能。試してみましょうか」
ゆむ「お試しだからって手加減はしないよ?あるる」
あるる「こっちこそ」
<<<トウホウライドゥ>>>
<<<アリス・マーガトロイドゥ>>>
<<<トウホウライドゥ>>>
<<<レミリア・スカーレットゥ>>>
圧殺さん達と同じように機械にカードをセットし、電子音声を響かせるあるる先輩とゆむ先輩
あるる「さぁ、人形裁判と逝きましょうか!ゆむ!」
ゆむ「ハッ……!人形供養してやるよ!あるる!」
一触即発な二人。あるる先輩の周りには無数の人形が何処からともなく姿を現し、まるで軍隊のよう立ち並ぶ
対するゆむ先輩は徒手空拳。だが禍々しいオーラが立ち込め、その背中にはうっすらと悪魔の羽のような翼が見える
程無くして、二人は緋想天ファイトを始めた
くたくた「今日こそ汚らしい魚介類の余裕に満ちた顔を屈辱と絶望に歪ませることが出来そう……」
しかねぇ「今日こそ恥知らずなクソ兎が恐怖と絶望で命乞いをする無様な姿を見られそうッス」
次に、相変わらず物騒なことを互いに言いながら、先の二組と同じ動作を行うくたくたさんとしかねぇを見つけた
<<<トウホウライドゥ>>>
<<<ウドンゲェ>>>
<<<トウホウライドゥ>>>
<<<キャーイクサーン>>>
電子音声を響かせ、すぐさま戦い始める二人。無数の銃弾と、激しい稲光が辺りに木霊した
皆一様に、ファイト前にあのカメラのような機械にカードを読み込ませていた
何だろう?昨日俺が休んだ時に何かあったと考えるのが妥当だが……
――………いつもの先生辺りに聞いてみるか
2
いつもの「…あぁ、それはスキマドライバーとライドカードですね」
――………?何ですか、それ?
職員室でくつろいでいたいつもの先生に今朝から見掛けた光景のことを聞くと、聞きなれない言葉が返ってきた
いつもの「あれー?昨日の朝礼で婚約先生から説明があったハズですけど……?」
――俺、昨日風邪で学校休んでて……
いつもの「あぁ……成る程。そういうことでしたか。なら仕方ないですね
んー、折角ですし、婚約先生直々に説明してもらいましょうか」
…という訳で俺は訳も解らない内に、いつもの先生に婚約先生の元へと連れて行かれた
婚約先生といえば人妻で、少し胡散臭い空気を出しつつもその美貌の虜になっている生徒も多い
そして……半仮想現実空間構築システム『スキマシステム』の管理人の一人でもある
いつもの「婚約せんせー、居ますかー?」
婚約「んー?あら、いつもの先生。どうかしましたか?」
艶かしい声を出しながら、スキマシステムの管理室に入ってきた俺といつもの先生を迎える婚約先生。どうでもいいが無駄にエロい
いつもの「いえ、としあき君が昨日欠席してたみたいで……スキマドライバーのことを知らないんですよ
なので説明してあげてもらえますか?」
婚約「あぁ、そういうことでしたか……。構いませんよ。システムの動作確認作業で、退屈していたところですし……」
口元に手を当て、うふふと笑いながら答える婚約先生。モニターには、現在緋想天ファイト中であろう生徒の姿が映し出されていた
婚約「システム安定率98.87%……。ふふ、上々ね。……あぁ、スキマドライバーに関して、でしたね」
モニター越しに戦っている生徒達を見て満足気に微笑むと、婚約先生は改めて俺の方へと向き直った
婚約「昨日より、兼ねてから予定されていたスキマシステムの新機能を導入したのです。それがこの『スキマドライバー』ですわ」
そう言って俺の前にスッと一つの機械を差し出す婚約先生
それは、今日見掛けた生徒が皆持っていた、あのカメラに似た機械だった
婚約「このスキマドライバーに、この生徒達のファイティングスタイルデータを記憶させた『ライドカード』を読み込ませることによって、
より視覚的にも感覚的にもシステム同調率を高めることに成功した……それがスキマシステムの新機能です」
――はぁ……
婚約「まぁそれだけでは解らないでしょうね
例えばこのカード。これは私のライドカードです。これには私の戦闘スタイルのデータが入っています。………ここまではいいですね?」
――は、はい
婚約「これを、スキマドライバーにセットし、起動させます」
<<<トウホウライドゥ>>>
<<<ヤクモユカリィ>>>
婚約「これで緋想天ファイトの準備が整いました。ほら、私の手に傘と扇子が現れたでしょう?」
ほらね?と手を上げる婚約先生の手には、彼女の言う通り傘と扇子が収まっている
婚約「ちなみにスキマドライバーはファイト中の間、自身の体であれば何処にでも「貼り付けて」おくことが出来ます
文字通り、「貼り付き」ます。手が塞がらなくて楽チンですね」
――はぁ……。そうですね
婚約「更に!」
――ま、まだあるんですか?
婚約「実はこのスキマドライバー、こうやって開きます」
言いながら、スキマドライバーを弁当箱でも開ける感覚でパカっと開く婚約先生」
婚約「何かカードが見えますね?」
――あ…はい。何ですか?これ
婚約「これもライドカードです
ただし、ここに入っている二十枚のカードは先程私が通したライドカード……これをフォームライドカードと呼びましょうか……
これを読み込ませないと何の意味もありません」
――そうなのかー。……で、この二十枚のカードは一体?
婚約「これはフォームライドカードに記録された『デッキ』です
大きく分けて『アタックライド』『ファイナルアタックライド』『システムライド』です
……詳しくは後で貴方にも支給されるスキマドライバー付属の説明書を熟読して下さい
で、フォームライドカードに記録されたこの二十枚のカードを駆使して緋想天ファイトを行う訳です」
――……今までとどう違うんでしょうか?
婚約「そうですねぇ……。まず、これまでは皆思い思いの技を制限無しに使っていました。そこに制限をつけることとなります
例えば……アタックライド。これは使用者が使える『必殺技』のような物ですね。使用者は「この技を使いたい!」と思ったら、このカードでそれを『宣言』しなければなりません
他の二種も同様です。ファイナルアタックライドのみ、宣言と同時……というか宣言しながら発動可能ですが」
いつもの「つまりルール無用の残虐ファイトでは無くなった、ということです」
困惑している俺に、いつもの先生が簡潔に結論を述べた
――成る程、大体は解りました。……でも、こういうのに難色を示す人も居るんじゃないでしょうか?
婚約「そうですねぇ……今のところ不満の声は有りませんが、これからもこの状態が続けば、有り得るかもしれません
まぁ、その辺は黄昏コーポレーションに直接文句言っていただくしかないですねぇ……」
――はぁ……
婚約「説明は以上です
では、としあき君には後でスキマドライバーを支給しますので……最初は戸惑うかもしれませんが、どうぞE&Eして下さいね」
そう言ってニッコリ微笑むと、婚約先生はまた管理業務に戻った
新しいシステムか……俺に使いこなせるだろうか……?
いつもの「大丈夫。すぐ慣れますよ」
俺の不安げな様子に気付いたのか、そう言っていつもの先生が優しく肩を叩いた
考えても仕方ない。業に入らば業に従え、という諺もあるし、いっちょやってみるか!
了
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