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Last-modified: 2009-02-15 (日) 14:28:58

※地子ちゃんの「私」は「ワタクシ」とお読み下さい

1

地子「ふぅ………」
イトミ「どうしたの地子ちゃん、何か悩み事?」
なのか「悩んでるのかー」

昼休み、友人達と机を並べ、一緒に昼食タイム
そんな中、一人憂鬱気味に溜息を付いてしまう私の名は地子
そんな私の様子を心配そうに見つめるイトミさんとそーなのかーさん

地子「いえ………悩んでいる訳では無いのですが……」
イトミ「そうなの?でも、何か悩み事があるなら、いつでも言ってね。私達で良かったら相談に乗るから」
なのか「乗るのかー」
地子「クス……二人共ありがとうですわ。その時は是非、頼りにさせてもらいますわ」

二人の好意は嬉しいけれど、これは私自身でどうにかしなければいけない問題……
………私は今、恋をしている……。……相手は二年生のとしあきという殿方……
初めて会ったのは、今はこの場に居ないもう一人の友人、天子ちゃんさんと共にショッピングモールへ行った時……
第一印象は、何処にでも居る冴えない同年代の殿方、という本人に向かって言ったならばとても失礼にあたるであろう印象
……でも……日を追うごとに……私の中で彼への想いはドンドン大きくなっていって……
最初は何かの病気かと思いましたわ。だって……暇さえあればとしあきさんのことを考えてしまうのですもの
あの方は今何をしているんだろう、とか、今何処にいらっしゃるんだろう、とか……
でも、私は確かに病気に掛かっていたようです……
そう、恋の病に………

イトミ「そういえば明日バレンタインデーだっけ」
なのか「チョコあげるのかー」
イトミ「私はあげる相手居ないなぁ。なのかちゃんと地子ちゃんは?」
なのか「居ないのかー」
地子「わ、私も……居ませんわ……」

イトミさんは何気なく話題を振っただけでしょう
渡す相手なんて居ない、と言いつつも私はついとしあきさんの顔を思い浮かべてしまい、それを隠すのに精一杯でした
でも、同時に私の中で「これだ!」という心の叫びと共に電球がぴこーん、と輝きました
何ということは無い、ただバレンタインデーに託けて告白するという単純極まりない、閃きとも言えない思い付き
多くの女性が「チョコを渡す」という名目の元、自らの思いの丈をアピール出来る日
それからの私はもう放課後の予定を立てるのに夢中で、午後の授業なんてまるで頭に入りませんでした

天子「おーい地子ちゃーん、一緒にかえろー」
地子「す、すみません天子ちゃんさん!今日は用事がありますの!」

自分も一緒に行くとか言われたり、どういう用事なのか追求される前に一目散に教室を出て行く私
一緒に居たイトミさんとそーなのかーさんが唖然とした顔で私を見ていた気がしますが、気にしている余裕なんてありませんわ
その足でアーケード街へと向かった私は幾つかのチョコを適当に見繕い、会計を済ますと寄り道せず真っ直ぐ家へ帰りましたわ。そう、全ては明日のために

地子「(こういうイベントの基本は手作りですわよね!べ、別にあの方のために作るわけではないですわ!)」

……でも、結局としあきさんに作ったチョコを渡すのですから、あの方のため……ですわよね……
何て考えると、どんどん頬が紅潮していくのが分かって……あぅぅ……全部としあきさんの所為ですわ!

2

次の日、作ったチョコを持ち、登校する私
校門へ、校舎へと近づくにつれ、心臓が破裂しそうなくらい鼓動しているのが解って、深呼吸したり、手に人という字を書いてそれを飲み込んでみたり、色々しましたが結局ドキドキは収まりませんでした

地子「(な、何てことありませんわ……。そう、ただ……チョコを渡すだけですもの……)」

そう、たったそれだけのことだ。でも……私の心は不安で一杯だった

地子「(もし……受け取ってもらえなかったら………?)」

そんな最悪の考えにまで行き着いてしまう

地子「(い、いえ……としあきさんならきっと受け取って下さいますわ!)」

首を振ってネガティブな思考を吹き飛ばす。こうなったら当たって砕けろ!ですわ!
この気持ちが萎えない内に渡さなければ!そう思い二年生の教室へと向かう私

地子「(あっ………!?)」

目標発見!ですわ。ちょうどいい所にとしあきさんは今一人。呼び止めて…チョコを渡すには絶好の機会!

地子「と、としあ――――」
天子「うおーい!としあきー!」

としあきさんを呼び止めようとしたその時、私の背後からドタドタと走りながら大声でとしあきさんの名を呼ぶ女子が一人
……天子ちゃんさん……空気読んで下さいませ!
心の中で天子ちゃんさんに悪態をついて、物陰に隠れる私。………って、何でこうなるんですのー!?

――あぁ、天子ちゃんか……何?
天子「チョコやるぞー。チョコ。義理だけどな!嬉しいか?としあき嬉しいかー?」
――はいはい、ありがとう。思いっきり義理って言わなきゃ嬉しかったかもな
天子「そうかそうか、嬉しいかー。じゃあなーとしあきー」
――話聞けよ

慌しくとしあきさんにチョコを渡し、また慌しく去っていく天子ちゃんさん。こういう時、彼女のノリだけで突き抜けるスキルが羨ましいですわ…
でも天子ちゃんさんも去って、今度こそ……と思った矢先、またもとしあきさんに近づく影が一つ

地子「(こ、今度は誰ですのー!?)」

仕方なくまた物陰に潜み機を窺う私。……あれ……は副生徒会長……!?な、何故あの方が……

ゆむ「としあき、ちょっといいかい?」
――あ、ゆむ先輩。何ですか?
ゆむ「あぁ、これを渡そうと思ってね。生徒会女性メンバーからのチョコだ」
――え、マジですか!?ありがとうございます!
ゆむ「私だけでなくあるるとふまれの分もあるんだ。後で二人にも礼を言っておくんだぞ?」
――は、はい。もちろんです!
ゆむ「では私はこれで。またな」

そういってチョコの入っているであろう紙袋をとしあきさんに渡し、その場を去る副生徒会長
……生徒会の皆さんとも懇意だなんて……としあきさんって意外と大物なのでしょうか……?
何てことを考えつつも、副生徒会長の姿が見えなくなるのを確認し、息を整え、今度こそとしあきさんの元へ―――

くたくた「………としあき………見つけた。これ……あげる………」

と、出鼻を挫くようにまたとしあきさんの前に現れる一人の女生徒。そしてまたタイミングを逃す私
………今日は厄日ですの……?

――くたくたさん、わざわざありがとう
くたくた「………別に………礼を言われる程のことじゃない………
     心霊研究部と科研部が共同で作った栄養剤入り、ドーピングホラーイチョコ。一粒食べれば朝まで絶倫………」
――そ、そうなんだ……と、とにかくありがとう……

あのゴスロリ娘、今明らかにドーピングって言いましたわよ!?としあきさんも引いてらっしゃいますし………

………そして……くたくたと呼ばれた女生徒が去った後も(私にとっての)受難は続きましたわ

雛「とっしー!チョコあげるー!」
テケ「……としあき、主様と一緒に頑張って作ってみたのだ。是非味わってほしいのだ」
さとり「としくん、はい、チョコレート」
くるる「さとりんが作ってたから、ついでに一緒に作ったわ。義理だから期待しないように」
めかぶ「と、としあき!これをやる!……あ、味は期待するな!でも……少しでも美味しいと思ってくれたら嬉しいぞ……」

次々と現れてはチョコを渡し、去っていく女生徒達。………としあきさん、意外と女性との交友関係が広かったのですね………
しかも「覇王」と呼ばれるめかぶ先輩や「剣聖」テケ先輩までもチョコを渡していらして………私、自身が無くってきましたわ………

地子「(もう誰もいらっしゃらないかしら………?)」

結局その全てを出歯亀してしまった私。すっかり「まだ誰か来るんじゃないか?」という疑念に駆られてしまいますわ
そして今度こそ、と思ったその時、またしても別の女生徒がとしあきさんの元に現れ、私はまた出鼻を挫かれてしまいます

地子「(……はぁ……もう勘弁して下さいまし……)」

でも今更後には引けないので、またしても物陰に隠れ様子を窺う私。うぅ……もう何度目でしょう……?

圧殺「としあき、チョコ一杯貰ったみたいね」
――………あぁ、圧殺さん……まぁ、見ての通り大漁……って言っていいのかな?
圧殺「ふぅん……じゃあ私からのチョコなんて要らない、か………」
――あーいえ、貰える物は貰っとく主義なんで、頂けるとありがたいです
圧殺「あ、そ。じゃあ口開けて」
――……へっ?は、はい……

口を開けるように言われ、口をあんぐりと開けたとしあきさんに、圧殺と呼ばれた方が四角形の小さな黒い物体を、としあきさんの口へと放り込む……
まさか毒物!?と思いましたがとしあきさんが苦しむ様子は微塵も見受けられませんので、毒物の類では無かったようですわ

――……えーと、これって………
圧殺「チロルチョコ」
――ですよねー。まぁ圧殺さんが本命くれるなんて思ってませんでしたが
圧殺「……としあきは……チロル渡されたら義理だと思うんだ」
――えっ……?まぁ、普通は皆そう思うんじゃないですかねぇ?
圧殺「ふぅん……まぁ、いいけどね……。けどさ………チロルが義理だなんて、誰が決めたのさ」
――……へっ………?そ、それって………どういう……?
圧殺「さぁ、ね……どういう意味かしらね……?まぁ、用件はそれだけ。じゃあね……
   …………後、そこで隠れて見てるヤツ、覗き見なんていい趣味してるわね
   ………オマエの眼球、抉っちゃうゾ?」

言われて私は、心臓が口から飛び出るんじゃないというくらい驚いてしまいます
……も、もしかして今までの人達も、私がここに隠れて様子を窺っていたことに気付いてらしたんでしょうか……?
眼球を抉るというのが本気かどうかは解りませんが、出歯亀行為をしていたのは事実ですし、私は大人しく物陰から姿を現します
そこには、すでにあの圧殺と呼ばれていた方の姿は無く、残されたのは私ととしあきさんだけでした

――えーと……地子ちゃん?

「いつから居たの?」的なニュアンスを含めているであろう疑問系の呼びかけに、今更ですが自分のしていたことが恥ずかしくなってきてしまいました

地子「あぅ……そ、その……す、すみません……覗き見するつもりでは無かったのですが……出るタイミングを逃してしまって……」
――そ、そうなんだ……。……で、俺に何か用?
地子「あ、え…と………」

解ってるクセに、と私は思ってしまいます。だって、今日はバレンタインデー。そして今までの流れからして、私のとしあきさんへの用事なんて、たった一つだけですのに……

地子「と、としあきさん!こ、これを!」

意を決して、私はチョコをとしあきさんに差し出しました。顔をまともに見れないので、俯いたままで、でしたが……

――あ、地子ちゃんもチョコくれるんだ?ありがとう、嬉しいよ

そう言って、差し出した包みをそっと受け取るとしあきさん。良かった、受け取ってもらえた……
私はようやく胸を撫で下ろし、憑き物が落ちたような晴れ晴れとした気分になりました

地子「あ、あの……美味しくないかもしれませんが………」
――地子ちゃんが作ってくれたんだから、不味い訳無いさ

恥ずかしげも無くそんな台詞を吐くとしあきさん。きっと今の私の顔は、茹蛸みたいに真っ赤になっていることでしょう
でも、恥ずかしがっていられません。……チョコを渡すのはただの前提。そう、本番は……ここからですわ!

地子「え、えと……それとですね……としあきさん………」
――ん……何?
地子「そ、その……わ、私と………」
――地子ちゃんと………?

さぁ、言うんです!私!たった一言で済むその言葉を……『私と付き合って下さい!』と

地子「わ、私と………」
――う、うん………
地子「―――――っ!!!!!や、やっぱりダメですわぁぁぁぁぁ!!!!」
――え、えぇぇ!?な、何?どうしたのさ、地子ちゃん?
地子「――っ!…………い、いえ、申し訳ありません……取り乱してしまって……
   な、何でも無いんです。ほ、ホントに何でも………
   ご、ごきげんよう、としあきさん!ちょ、チョコ、味わって食べて下さいね!」

搾り出すようにそれだけ言うと、私は脱兎の如くその場から逃げ出してしまいました……
うぅぅ……後少し、後少しだったというのに………あぁ、私の意気地無し!!!

それから一日中、私は自己嫌悪と後悔で重々しい気分でした……
でもめげませんわ!聞けばとしあきさんは特定の女性とお付き合いしている訳では無いとのこと
つまり、私にもまだチャンスはあるということですわ!
……次こそは……!次こそは必ず……!そう思い、私は決意を新たにしました……

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