1.出しすぎ注意
走る。風を切って、ただひたすらに
朝の少し冷たい空気に肌寒さを感じながら、学園目指して走る
しかねぇ「やっぱ新品のMBは最高ッスねー」
新調し立てのマウンテンバイクによる軽快な走りは、何とも言えない充実感をもたらしてくれる
自然と頬が綻んで、ペダルを漕ぐ足も軽くなるというもの
???「……朝っぱらからニヤニヤして……キモイ……」
そんな満足感に浸っていると横から突然聞こえてくる淡々とした物言い
私は即座に声の主の方へと振り向く
しかねぇ「おやおや……恥知らずなクソ兎が、スクーターでご登校ッスか?」
くたくた「……恥知らずは天下の往来でニヤニヤしてる貴方の方……キモイんだよ魚介類……」
最早日々の恒例とかしている罵り合いをしながら、併走する私達
イライラが頂点に達しそうなところで赤信号に道を阻まれる
お互い顔を合わせない。ただじっと青信号に変わるのを待ち続けた
そして……運命の瞬間……青になると同時に全力でペダルを漕ぐ
しかねぇ「うおぉぉぉぉぉッス!!!」
弾丸のように加速をつけて駆けるMB
初速で一気に差をつけて、引き離す作戦だ
くたくた「………バカじゃないの……?自転車でスクーターに勝てる訳ないじゃん……」
しかしそんなこちらの思惑をあざ笑うかのようにすぐさま併走するクソ兎
しかねぇ「付いて来なくてもいいんスよ?てか事故って無様に病院にでも運ばれるッス」
くたくた「……そっちこそ……スピード出しすぎで派手に転べ………」
しかねぇ「ぐぬぬ………」
くたくた「………」
こっちは常時全力全開で漕いでいるというのにクソ兎ときたら涼しい顔をしてわざとらしく併走……やっぱりスクーターは邪道の極み!
そのまま暫くの間併走したまま、通学路を駆けて行く私達
……けれど……一気に差をつけるチャンスは来る……
学園前の坂道、ここを全速力で下って行けば、私の勝利……!クソ兎の悔しがる顔が目に浮かぶ……
そして、件の坂道に差し掛かる。ここで一気にフルスロットル!
くたくた「……あっ…!」
しかねぇ「お先ッスよー!」
坂を、下る。とてつもないスピードで
自転車の限界を超えるそのスピードに流石のクソ兎も唖然としてる様子。やった!勝った!
……後は全開でブレーキを掛け……掛け……………効かねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!
気付けば私は仰向けに寝転がって空を仰いでいた
制御不能に陥った我がマイMBは壁に激突したことで漸く止まったようだ……
全身が痛い……骨に異常は無いみたいだけど……暫く立てそうにない……
くたくた「……ホントに派手に転んだ……大丈夫……?」
そんな私を覗き込むクソ兎。………誰の所為だと………
くたくた「……言っとくけど、勝手にスピード出しすぎてすっ転んだ貴方が悪いんだから、私を責めるのは止めてね………」
ぐっ……先手を打たれた……。まぁ、確かに全面的に自分の過失なのだけど……
くたくた「……自転車」
しかねぇ「はぁ!?」
くたくた「……自転車、壊れた……ホントにバカね……」
……言われて気がついた……
新調したばかりのマイMBは中心からくの字に曲がり、ペダルやタイヤ、ハンドルも全てに渡って即廃棄品扱いされること間違いないくらいに壊れていた
……な、なんてこと……私は深い悲しみに包まれた………
くたくた「……自業自得……」
しかねぇ「うっ……ぐっ……ぐぐっ……」
更に追い討ちをかけてくるクソ兎。……てか、いつまで居る気なんだ……
しかねぇ「……ふん!笑いたければ笑えばいいッスよ……望み通り、盛大にすっ転んだッスからね……」
情けなくて涙がこぼれそうになる。……こんなクソ兎のご期待に応えてしまう自分が……恥ずかしい……
くたくた「………」
けれど、てっきりこれ見よがしにあざ笑うかと思っていたクソ兎は……何を思ったのか、私に手を差し伸べてきた
しかねぇ「……何のつもりッスか……?」
くたくた「……保健室……」
しかねぇ「は……?」
くたくた「……怪我してるじゃない……だから、保健室行って……診てもらった方がいい……」
しかねぇ「……連れてってくれるとでも言うッスか……?余計なお世話ッスよ!」
予想外のその行動に、私は思わず差し伸べられた手を払ってしまう
その直後、一瞬悲しそうな目をするクソ兎。……何なの……一体……
くたくた「……そう……余計なことしたわね………じゃあ………」
そう言ってさっさと去っていくクソ兎。……同情なんか……要らないっての……
しかねぇ「………痛いッス………」
私はその後、フラフラになりながらも保健室に行った
MBは大破……。暫くは歩きで登校になりそう
それもこれもぜーんぶあのクソ兎の所為…!必ず仕返ししてやる……
でも……もしあの時……あの手を取っていたら……?どうなっていただろう……
しかねぇ「……どうでもいいッスね……そんなこと……」
余計な考えを振り払い、私はあのクソ兎にどう仕返しをするか……それだけを考えることにした
2.○○ジン
朝、学園には様々な登校風景がある
歩き、自転車、バイク、電車etc、etc……皆最適な通学方法で学園に通う
……だが、彼女達は違う……そう、俺達庶民とはな……お、来た……
校門前に現れたのは一台の黒塗りリムジン。出てきたのはKINGこと雛山さんだ
専属メイドのゴゴゴさんから学生鞄を受け取り、いってらっしゃいませ、と見送られる
…ちなみに本人はこうやって送られるのを嫌がっていたりする
次に来たのは白のリムジン。出てきたのは…確かミルクティーちゃんだったか……
優雅な物腰と愛らしい、憂いを帯びた表情は正にお嬢様
お次は……何やら金ピカのド派手なリムジン。出てきたのは……誰だ?あのドリルヘアー……
りドる「オーホッホッホッホ!本日も晴天なり!ちくわしかねぇ!ですわー」
ドリルヘアーのその少女は何やらみょんなことを口走りながら、しかしミルクティーちゃんに負けず劣らずの優雅さを見せながら校門をくぐって行く
……セレブは何考えてるのか解らんなぁ……
何て思っていると、突如遠くの方からキュイーンという駆動音が響く
しかも、段々音は大きくなっていく……近づいてきている……?
暫くすると音の発生源と思しきモノが、やはりキュイーンという駆動音を響かせながら近づいてきた。……アレは……ろ、ロボット……!?
いつもの「こらー!くるるさんでしょう!?テムジンに乗って学園に来てはダメとあれ程言ったでしょう!」
そのロボットが校門に着いたと同時に、いつもの先生がすごい剣幕で走ってきて、そのロボットに対して怒り始めた。てか、くるるさんが作ったのか…?あれ…
くるる「いやー、調整終わったんで、試運転も兼ねて来たんですけど……やっぱりダメですか?」
そしてコクピットからひょこりと顔を出し、てへっと舌を出して言うくるるさん
いつもの「当たり前です!私はライデン派なんです!テムジンなんて邪道です!」
くるる「…って言われてもなぁ……間を取ってハッター軍曹にしましょうよー」
いつもの「全く間が取れてません!」
…何だかよく分からない会話を展開し続ける二人
道行く生徒達もそんな二人に呆れたり、野次馬根性丸出しでキャーキャー騒いだりと、様々だ
くるる「……よっと……仕方ない……自律行動モードにして……」
そんな喧騒など気にもせず、コクピットから降りたくるるさんはリモコンをアレコレ操作し始める
リモコン操作を終えると、テムジンと呼ばれたロボットが「Get Ready」という機械音声とキュイーンという駆動音を響かせて何処かへと去っていった
……何このくるるん脅威のメカニズム………
3.非公式が非公式な訳
あるる「ふまれー、居るー?今から非公式の部の調査に行くわよー」
生徒会室、重い扉を開けて入るや否や私を呼ぶあるる先輩
ふまれ「…非公式の……ですか?」
あるる「そう。アンタも知ってるでしょ?この学園には生徒会と理事長に正式に認められた部と、そうでない部があるってこと」
ふまれ「えぇ……まぁ……」
あるる「で、非公式の部ってのは、裏で何してるか分かんないからね……ちょくちょく調べとかないといけないの」
ふまれ「……私達生徒会が抑止力になる、ってことですか?」
あるる「そうよ。アンタにしちゃ鋭いじゃない。たまーに目を光らせとかないとね……。じゃ、行くわよ」
ふまれ「は、はい!」
こうして私は非公式の部の調査に向かうことになった。……一体どんな部が……?
あるる「さて、と………何処に居るかしら………あ、居た」
ふまれ「へっ…?」
あるる先輩の視線の先に居たのはテケちゃん。…そして……その後をぞろぞろと着いて行く男子生徒
ふまれ「せ、先輩……あれって…?」
あるる「あれはテケちゃん親衛隊。その名の通りテケちゃんの親衛隊を気取る傍迷惑な連中よ」
ふまれ「……は、はぁ………」
……確かに迷惑だなぁ……別にテケちゃんが頼んだ訳じゃなさそうだし……うわっ!あのテケちゃんが露骨に嫌そうな顔してる……
あるる「……まぁあれはほっといていいわ。次、行くわよ」
ふまれ「えっ……?い、いいんですか……?」
あるる「いいのよ。テケちゃんなら狼藉働いた瞬間に即殺でしょ」
ふまれ「…ま、まぁ……そうですけど……」
いいのかなぁ……?と思いつつもあるる先輩に諭され、私達は次のターゲット探しへと向かった
次に見つけたのはゆむ先輩と……ゆむ先輩に吹っ飛ばされている多数の生徒
ふまれ「あ、あるる先輩…あれは……?」
あるる「あれは……副会長にダイブされ隊ね……」
ふまれ「な、何ですか……?それ……」
あるる「…何と言うか……ゆむにダイブされて吹っ飛ばされることに快感を感じるアホの集まりよ」
ふまれ「あぁ、変態ですね。分かります」
あるる「そうね…。ちなみに悪女緊急発進をブチ込まれることがあの部における最高の名誉らしいわ」
ふまれ「……すごく……痛そうです……」
何て話してる内にも多くの生徒が吹っ飛ばされていく……一偏の容赦も無く
生徒A「ふ、ふくかいちょー!お、俺もお願いしますー!是非!悪女緊急発進を!」
ゆむ「はぁ!?やれと言われてやるバカは居ない!お前は……シーリングフィアで十分!」
生徒A「ぐぇぇぇぇ!!!」
生徒B「せ、先輩!俺も俺もー!」
生徒C「あぁん…先輩……ステキです……。わ、私にも……先輩の熱いヴェーゼを……」
ゆむ「あーうるせー!纏めてデーモンロードウォークだぁぁぁぁ!!!」
生徒B・C「ぎゃー!!!」
次々と名乗りを上げては吹っ飛ばされる生徒達……ゆむ先輩も大変だなぁ…
あるる「……じゃ、じゃあ次行くわよ…」
ふまれ「は、はい……」
…何だかこの調査事態意味が無いことに思えてきたんですが……
でもそんなこと言ったらあるる先輩に怒られるしなぁ……
あるる「あ、見つけた」
何て考えながら歩いてると、唐突にあるる先輩が間抜けな声を上げた
ふまれ「……今度は……何ですか?」
あるる「あれは圧殺さんに潰され隊ね……彼女の得意技、天地開闢プレスに潰されたがってるバカ共よ」
ふまれ「……はぁ。………ちょっといいかも………」
あるる「えっ?何か言った?」
ふまれ「い、いえ!何も……」
い、いけない……あやうく私も変態の仲間入りを果たしてしまうところだった……
そうこうしてる内にも潰され隊の方々の熱烈なラブコールは続いている
圧殺さんは「またか」と言いたげな様子でうんざりしているようだ
圧殺「……じゃあ、そこに並んで……そう、三角錐型に……」
群がる生徒達に指示を出し、並ばせる圧殺さん
…てかあの形……何か…アレを彷彿させるんですが……
圧殺「さて……必殺、私の必殺技……ボーリングバージョン……なんてね……」
あぁ……やっぱりボーリングなんですね……
そしてスキマドライバーを取り出し、カードを装填する
<<<ファイナルアタックライドゥ>>>
<<<テテテテンコゥ>>>
圧殺「…はぁ!天地!開闢!!!」
続いて投擲された要石はスキマシステムの力で数倍の大きさへと変貌し、一直線に並んだ生徒達へと向かっていく
そして…先頭の生徒を筆頭に次々とぶっ飛ばされていく生徒達。やったー!ストラーイク!
あるる「……この学園の生徒の考えることはよく分からんわ……」
ふまれ「……で、ですね……」
あるる「さ、次!次行くわよ!」
…そんなこんなで調査は続いた
途中、『あるるに罵られ隊』なる連中に詰め寄られ、あるる先輩がノリノリでその連中を罵倒し、踏みつけて女王様っぷりを披露したのはまた別のお話
了