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Last-modified: 2009-07-05 (日) 12:54:04
 
 

1.

 

圧殺「ねぇとしあき、会長知らない?」

放課後の食堂、多くの生徒が思い思いにお茶の時間を楽しんだり、甘いスイーツに舌鼓を打つ時間
その御多分に違わずちーすけ、巫女巫女等とくつろいでいたとしあきに圧殺が尋ねる

――会長って……だぜだー?
圧殺「他に誰がいるのよ」
――それもそうだ。うーん…ゴメン、知らない
圧殺「…そう。そっちの二人は……?」
ちーすけ「悪いが分からんな」
巫女巫女「生徒会室には居なかったから、まだ教室に居るかもしれんぞ」
圧殺「……教室……ね。どうも。……それじゃあ……」

そう言って挨拶もそこそこに圧殺は踵を返し、その場を後にする
その後姿を、三人はコーヒーを啜りながら見届ける

――圧殺さん、会長に何の用事が……?
ちーすけ「何だとしあき、お前…知らないのか?」
――何がだ?
巫女巫女「彼女とだぜだー、AIBO-関係になったんだぞ?」
――なん……だと……?マジか!?
ちーすけ「落ち着け」
巫女巫女「マジだよ。しかも告ったのはだぜだーの方らしい」
――ほー、会長がねぇ………
ちーすけ「としあきもさっさと相棒見つけたらどうだ?いいモンだぜ?相棒ってのは。なぁ?」
巫女巫女「そうだな」
――………そんな簡単に見つかりゃ苦労しねぇよ……

 
 
 

2.

 

としあき達と別れた後、圧殺は他には目もくれず三年生の教室へと向かった
目的の場所に近づくにつれて、聞こえてくる談笑の声が大きくなる
そっと物陰からその様子を窺う圧殺

圧殺「(だぜだーと……あれは……誰?)」

彼女の目的の相手であるだぜだーは、教室でおっとりとした雰囲気の、眼鏡を掛けた女生徒と話していた
楽しそうに笑い合う二人を見て、圧殺は完全に出て行くタイミングを逃してしまう

葱「…ところで会長、生徒会の仕事はいいの?」

唐突に、眼鏡の女生徒……葱が話題を変えてだぜだーにそう言った

だぜだー「ゆむっちに任せておけば大丈夫なんだぜ!」
葱「そう……またゆむさんの怒りが有頂天になりそうねぇ。…もっとちゃんと仕事してあげればいいのに」
だぜだー「べ、別にサボってる訳じゃないのぜ?真打は遅れて出て行くものなんだぜ!」
葱「はいはい。そういうことにしておきましょうか。……ところで会長、誰か待たせてるの?」
だぜだー「…?別に誰も待たせてないのぜ?」
葱「でも……あの子……」

そう言ってスッと物陰の圧殺を指差す葱
様子を窺おうとするあまり、身を乗り出しすぎていたことに気付いた圧殺はササッとまた隠れるが、時既に遅し

だぜだー「あっちゃん、何してるのぜ?」
葱「知り合い?」
だぜだー「うん。あ、葱っちにはまだ話してなかってのぜ。彼女は圧殺さんっていって、だぜだーの相棒なんだぜ!」

圧殺のことを葱に紹介しながら、えっへんと胸を張るだぜだー
それを聞いた葱はあらあらと、驚いているのかおどけているのか分からない態度で応える

葱「へぇ……彼女が会長のハートを射止めたって訳ね」
だぜだー「い、射止めたなんて大袈裟なのぜ……」
葱「でも、そうじゃない。…ねぇ圧殺さん。そんなところに隠れてないで、こっちに来たら?」
圧殺「……あ……は、はい……」

笑顔でおいでおいで、と手招きする葱に誘われてそそくさと物陰から顔を出す圧殺

葱「初めまして…かな?私はねぎかも。皆からは葱って呼ばれてるわ」
圧殺「……あ、圧殺です……ハジメマシテ」
だぜだー「そんなに固くならなくていいのぜ!ところであっちゃん、どうしたのぜ?」
圧殺「…あ…だ、だぜだーと一緒に帰ろうと思って……」
だぜだー「そうなのかー。だぜ!じゃあ一緒に帰るのぜ!」
圧殺「…う、うん……」
葱「あらあら、お熱いわねぇ……私、お邪魔かしら?」

仲睦まじい二人を見て、苦笑いを浮かべる葱

だぜだー「そ、そんなこと無いのぜ!?」
葱「……ふふ……どうかしら……?そういえば会長、あの事…圧殺さんに話したの?」
圧殺「……あの事……?」
だぜだー「まだ話してないのぜ。その内話そうと思ってたのぜ」
葱「じゃあいい機会だから話しちゃえば?」
だぜだー「うーん……」
圧殺「………あの……何の話?」
葱「あのね、会長……だぜだーが、ホントは男の子っていう話」
だぜだー「あぁぁぁ!い、言っちゃダメなんだぜ!」
葱「…何で?」
だぜだー「な、何でって……ほ、ホラ、あっちゃん超驚いてるのぜ!?」

だぜだーと葱、二人が圧殺の方を見合わせると、彼女はポカーンと呆気に取られた顔をしていた
そして、遅れること数秒……

圧殺「……えっ……男……?えぇぇぇぇ!?」

圧殺の、素っ頓狂な声を上がった

だぜだー「…言わんこっちゃないのぜ……」
葱「あら?いいじゃない。いずれ分かることなんだし…」
圧殺「……え……ど、どういう……こと……?」
葱「ふふ……混乱させちゃったわね…。私から話してもいい?会長」
だぜだー「……任せるのぜ」
葱「了解。……あのね、だぜだーって昔、虐められっ子だったのよ」
圧殺「……それは……あの容姿の所為……?」
葱「そう。男なのに女みたいな顔してるとか、色々言われたのよ。ねぇ?」
だぜだー「そんなこともあったのぜ」
葱「まぁ、そういう子達はゆむちゃんが片っ端からボコボコにしたんだけどね」
だぜだー「でも虐めが無くなった訳じゃなかったのぜ
     そんな時、葱っちがどんな時でもポジティブハートの精神を教えてくれたんだぜ!」
葱「そうだったわねぇ。……で、その後のだぜだーはどうしたと思う?」
圧殺「えっ……それは……ま、まさか……?」
葱「ふふ……そう、開き直って女装始めたのよ。で、それが今も続いてる訳 
  ちなみにこの事知ってるのは私とゆむちゃんくらいよ」
圧殺「は、はぁ……」

明かされる衝撃の事実に、呆然とする圧殺

葱「まぁ、そういう訳なんだけど、だぜだーのこと、嫌いにならないでね?」

言いながら葱は圧殺の顔を覗き込み、手を合わせて「お願い」のポーズを取る

圧殺「え、えぇ……それは……勿論……」
葱「ふふ、良かった…。なら私はお邪魔にならない内に帰ろうかな。じゃ、仲良くね、お二人さん」

そう言って葱は軽やかな足取りで教室を後にする
残されたのは、まだ呆然とする圧殺と、バツが悪そうに苦笑いをするだぜだー

だぜだー「か、帰るのぜ……」
圧殺「……うん……」

 
 
 

3.

 

教室を後にした二人は中庭を通り、校門を目指していた
特に会話も無く、ゆっくりと歩く二人
やがて、その沈黙を破るように、だぜだーが口を開いた

だぜだー「…えっと……やっぱり……驚いたのぜ……?」
圧殺「……そう、ね……ちょっと……ううん、結構驚いた……」
だぜだー「で、でも、その内話すつもりだったのぜ?相棒のあっちゃんには、知っててほしかったから…」
圧殺「…………」
だぜだー「…やっぱり、怒ってるのぜ…?」
圧殺「――――ない」
だぜだー「…えっ?」
圧殺「別に……怒ってなんかない……。だぜだーが男でも女でも……わ、私はだぜだーの…相棒だから……」
だぜだー「……あっちゃん……」

そこで二人の会話は途切れた
が、先程に比べてその足取りは軽い
互いに頬を赤く染めながら並んで歩く二人は、初々しいカップルのそれだった

圧殺「……ね、ねぇ……だぜだー」
だぜだー「な、なんなの…ぜ?」
圧殺「………手、繋いでも………いい?」
だぜだー「…も、勿論なんだぜ!」

差し出した手をそっと握りあって

お互いの手の温もりを感じながら、二人は帰路に着いた