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補習授業とはいえ、古典なんて受験に関係ないのに、なんで夏休みなのに学校に来てるんだろう。
おれは、わけのわからない助動詞の活用を、プリントに書き込んでいく。
頭に来るのは、古典の授業の補習を受けているのが、おれ一人だということだ。
大学を出たばかりの教師が、おれのプリントを覗きこむ。
「そこは命令形じゃなくて、已然形よ…。係助詞の係り結びなんて基本でしょ?もう」
立っていればおれの胸くらいの身長なのに、彼女は椅子に座っているおれを見下ろしながら言う。
夏の暑い風が教室に吹き込む。
彼女の髪が風に揺れる。
彼女の香りがおれの鼻腔をくすぐる。
「センセ、暑いんスけど。クーラー入れて下さいよ」
おれが汗だくで不満を言うと、
「あのねぇ…、補習を受けてるのは一人でしょ?そんなに学校には予算がないのよ」
軽くかわされる。
彼女も汗をかいている。
彼女のブラウスが汗で肌に張り付いている。白いブラが、うっすらと浮かび上がる。
おれは、なんだか罪悪感を感じてプリントに視線を落とす。
「で、でもセンセも大変ですよね。クソ暑いのにバカなおれなんかの勉強を見て。おれ、センセの彼氏に申し訳ないよ」
視線をごまかすために、なんだか口数が増えてしまう。
彼女は、
「馬鹿なこと言わない!あたしの彼氏の心配するんだったら、さっさとプリントを終わらせなさい!」
とりつくシマもない。
「…すんません。おれ、センセと勉強できるのがうれしくて、へ、変なこと言っちゃったな…」
おれは品詞分解をしながら、彼女に告げる。
プリントから目を上げると、彼女は困ったような顔で、赤面していた。
彼女は、
「ばばばばば馬鹿なこと言うと、先生おこるわよ…!」
語気は強いのだが、どうも迫力に欠ける。
おれもなんだか恥ずかしくなって、
「す、すみません…、でも、センセの彼氏って、うらやましいッスね、あははは…」
また、言わなくてもいいことを言ってしまった。
彼女はますます真っ赤になって、泣きそうな声で、
「…いないもん…彼氏なんか。それに、一緒に勉強できて、うれしいのは、一緒だもん…」
と、子供のようなことをつぶやいた。
古典の成績が、上がりそうな気がした。
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