拡張型心筋症
Last-modified: 2025-05-06 (火) 11:42:44
- 英語ではDCM(dilated cardiomyopathy)
疫学
- 中年男性に多い(男女比2:1)。30~40歳代から徐々に発症する。
- 遺伝性で発症する場合もあり、その場合小児での発症も見られる。
病態
- 一次性心筋症の一種で、心室が拡大する(心拡大する)もの。
何らかの原因で心筋収縮機能が著しく低下することにより、代償的に心室腔が大きくなる(弱い収縮でも十分な駆出量を確保しようとする)。
壁の体積(心筋の量)は変わらないのに心室腔だけやたらと大きくなるため、肥大型心筋症とは逆に壁が薄くなる。
代償できなくなるほどに収縮機能が低下して十分な駆出量を確保できなくなると、強い心不全をきたす。
病因
- 原因不明な特発性のことが多い。
20~35%程度の症例で、遺伝的な要因が関係していると言われている。
- 高血圧や心筋炎など、明確な原因がある状態で同様の病態を呈する場合もある。
これを二次性心筋症や特定心筋症という。
症状
- 慢性的に進行する心不全症状
動悸、息切れ、呼吸困難、浮腫、交互脈
- 胸部圧迫感、塞栓症状、不整脈(PVC,AF,VT)、突然死
不整脈や心腔内血栓形成の合併症に注意
診断
- 心エコーでは、左室や左房の拡大、壁運動低下、駆出率低下の所見が見られる。
具体的に見られ得る所見としては以下のようなものがある。
- 左室径が拡張末期と収縮末期でほぼ変化していない。
- Mモードで左室内径が確認できる。
拡張期は39~55mm、収縮期は22~42mmが正常値。
治療
- できれば原因を取り除きたいところだが、遺伝性のものや原因不明の特発性のものも多い。
そのため、慢性心不全の治療に留まる場合が多く、治療薬としてβ遮断薬やACE阻害薬・ARBが使われる。
必要に応じて、心臓再同期療法(CRT)、植え込み型除細動器(ICD)、補助循環といったものも使われる。
根治の難しい予後の悪い疾患であるため、心臓移植の適応疾患である。適応疾患の中でも、最も患者数が多い。