決着

Last-modified: 2015-08-05 (水) 00:41:03

【現在地:市街地/夕方】

 
 

「ところで僕は『退化論』の支持者でね」
「た……なんだって?」
「退化論。人間は退化しているんじゃないかという説だよ。だってそうだろう?」
「こうやって僕たちは特殊な力があるわけだけど、そのせいで必要以上に争うようになった」
「そうでなくともテレキネシスに手足はいらないしサイキッカーに口はいらない」
「と、いうことはだ。僕たちはそのうち手足も口も目も耳もなくなるんじゃないか」
「そういうのが退化論だよ。こういう話を聞いてくれるのは四人に一人くらいしかいなくてね」
「まさにキミは『四分の一の貴重』というわけさ。尤も今まで何人にこういう話をしたか覚えてなくてね」
「正確な人数を把握するためには指折り確認しなきゃいけないわけだけど……大変だからね」
「週間少年ジャンプの主人公なら律儀にも全部覚えているんだろうけど、そこはご愛嬌」
「は、はぁ……」

 

アリシアと女の子の戦闘はまだ続いていた。
「凶獣だね、あの二人はさ」 二人の争いを見て、鬱月は笑っていた。
「安心したまえ相良くん。どうせ勝負は今日中にはつく」……そういう鬱月の言葉を信じ、相良は鬱月の隣に座っていた。
最初は二人の争いを尻目にただ座っているのはかなりの抵抗を感じた相良。しかし……。

 

「いいじゃんいいじゃん。立っていても疲れるだけだぜ?」

 

その一言で相良は鬱月の隣に座り、前述の会話が繰り広げられることとなったのである。

 
 

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「ぐろろろろ!」
「ふざけ……やがって!」

 

目の前では相変わらず激闘が展開されていた。
だが注意して見ていれば、アリシアが攻撃を受ける回数が増えている。
今この瞬間も、女の子の攻撃を避けきれずアリシアの身体が宙に舞う。

 

「う……鬱月さん!」
「……やれやれ。既に危険信号というわけか。けど下劣な大道芸も見飽きてきたころだし」
「ど、どうする!?」
「ふーむ、そうだね。もう一度アリシアくんがこぶしちゃんに殴り飛ばされた時がチャンスだ」
「アリシアくんとこぶしちゃんの距離が開いた瞬間、僕たち二人がかりでこぶしちゃんに飛びかかる」
「それであの女の子は止まるのか!?」
「多分ね。いや、止まるさ。何と言っても僕とこぶしちゃんは仲間(チーム)なんだから」
「分かった。信じてるよ鬱月さん」
「僕に任せたまえ相良くん……よし、今だよ!」

 

アリシアがビルの壁面に叩きつけられる。女の子とアリシアとの距離が確かに開く。
鬱月の言葉を合図に、相良は女の子に向けて果敢に突撃していった。

 
 

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相良がこぶしに突撃するのを見届けた後、鬱月はゆっくりと歩き出す。

 

「さて……仕上げといこうじゃないか」

 

変化は唐突だった。
一歩踏み出す毎に、鬱月の衣装が変わっていく。

 

片目を眼帯が包み込む。
緩いジャージが端から光の粒子へと変わる。
空間から出現した赤い包帯が鬱月の身体に巻きつく。
光の粒子が黒紫へと染まり、新たな服を構築する。

 

「ドレスアップ。そして……」

 

黒紫のゴシックロリィタ。それが魔法少女・狂犬病鬱月のバトルコスチュームだった。
手を宙に翳す。手の先に紫の薔薇を基調とした魔法陣が現れる。
魔法陣の中央に漆黒の闇が凝集されていき…………。

 

「ショット」

 

闇の魔力により構築された弾丸が放たれる。
ショット。鬱月の使う闇属性の魔術の中でも比較的威力は低く、牽制に使用することの多い技。
彼女の同郷である魔法少女たちであれば、この技は通用しない。
しかし傷を負い疲れ果て、かつ動きが止まっている者なら話は別だ。

 

鬱月は笑う。
闇の弾丸が、アリシア・B・リミットの頭部と相良健一の腹部を貫いた。

 
 

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相良が地面に崩れ落ちる。こぶしが困惑した表情で鬱月を見つめていた。
当の鬱月は涼しげな様子で、こぶしと相良の側に歩み寄ってくる。

 

「鬱月さん? 何をしたんだぞ?」
「なんてことないさこぶしちゃん。ちょっと相良くんを煽ってあげただけさ」
「いやあ、困ったね。僕としてもこんなに上手くいくとは思わなかった!」
「言葉の重みってやつは恐ろしいね。我ながら鳥肌が立つぜ」

 

コスチュームはそのままに、鬱月が足で相良を仰向けにさせる。
まだ息はあった。出血は酷いが、すぐに手当てをすれば助かる程度の傷だった。

 

「う……鬱月、さん……」
「やあ相良くん。気分はどうかな? まあその怪我じゃあまりいい返事は聞けなさそうだけど」
「どう……して……」
「……んん? どうして? どうしてって言ったのかい?」

 

けたけたと鬱月は笑った。

 

「どうしてもこうしてもないよ相良くん! 単純。そう、話は単純だ」
「…………気が、変わったんだよ。ふふ、とぉっても単純だろう?」
「典型的な正義漢であるキミをこの場でチームに引き入れても、後から面倒になりそうだったしね」
「そうそう! あそこで死んでいるキミのお仲間は元から殺すつもりだったんだよ」
「だから、僕が真に裏切ったのは相良くんだけなんだ!」
「……この、外道が」
「おいおいおいおい、そんな目で睨んでこないでくれよ。怖いじゃあないか」
「それに話していなかったっけ。僕はね……手のひら孵しが大得意なんだ」
「うん、だいぶ鬱月さんもお喋りしちゃったし、疲れてきたよ。そろそろお別れといこう相良くん」

 

手を相良に翳す。紫色の魔方陣が出現する。
抵抗しようとする相良の両手を、こぶしが押さえつけた。

 

ぱん。

 

気の抜けるような軽い音とともに、コンクリートが赤く染まった。
ふふ、と鬱月が笑う。コスチュームが徐々に、元のジャージへと戻っていく。
みいんと蝉の声が聞こえてきた。
こぶしもそれに釣られて、ぐろろろと笑う。

 

「やれやれ……また勝ってしまったぜ」

 

そう言って鬱月はデパートの方を見る。
今の騒ぎを聞きつけたのだろうか。デパートの中から、二人の男女が出てくるのが見えた。

 
 

【金岡こぶし@魔法少女】
[状態]:戦闘によるダメージ(中)
[装備]:ボルトアクション式魔具『デア・フライシュッツ』、銃弾型魔具『フライクーゲル』@魔法少女
[道具]:基本支給品
[思想・状況]
基本行動指針:ゲームに乗り、自分の正しさと最強であることを証明する
1.愛染の仇討ちだ!
2.鬱月さんいいやつ!
3.デパートからきた連中はどうするんだぞ?

 

※魔法についての制限は後の書き手さんにお任せします

 
 

【狂犬病鬱月@魔法少女】
[状態]:疲労(少) 主に喋り疲れ
[装備]:神将・午@境界線
[道具]:基本支給品 オネショタヤンデレ小説『ボクノオネェチャン』@魔法少女
[思想・状況]
基本行動指針:生き残る、そのためには全てを利用する
1.馬鹿の金岡を上手く使っていこう
2.ササヤキ・ガイアに謎の因縁。早目に始末してあの武器を手に入れたい
3.デパートやスーパーで仲間探し
4.危なくなったら鋼の体を持つ金岡を盾にして逃げ切る
5.あのデパートから出てきた連中は味方になるかな?

 

【アリシア・B・リミット@俺能 死亡確認】
【相良健一@俺能 死亡確認】
【現死亡者 11名】

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