その場にいる全員の耳を劈く凄まじい轟音。
四人と一匹がそれに反応するよりも早く、廊下への扉が木っ端微塵に砕け散り破片が吹き飛んだ。
待合室全体を揺れ動かす程の衝撃に、シュバルト達は身を屈める余裕さえも存在しない。
突然自らを襲った地響きと破壊の権化に、四人は構える事も忘れて目を見開いていた。
「……冗談だろ……」
やっとの思いで出たのは、そんな月並みな言葉だった。
無残に破壊された扉の奥には、更に無残に崩壊した廊下の姿が覗く。
そんな惨状を引き起こしたのは他でもない、闇色のマントを翻すラスボス見習い少女だった。
まるで一室全体が吹き飛んだかのような、途方も無い殺気を弾けさせながら。
獣のような空色の瞳が、四人へと凄まじい眼力を見せていた。
「ラスボス!貴様、乗ったのかッ!!?」
いち早く反応を示したのはガイアだった。
弾末魔の銃口を向けて、何時でも引き金を引けるように照準を定めて。
それに続いて状況を把握しきれぬまま、シュバルトもマスケット銃を召喚し照準を合わせる。
だが当のラスボス少女は意にも止めず、ポツポツと気迫の込められた殺意を漏らす。
「……殺、す…全部……殺す……」
ゆらりと、一瞬少女の姿がブレたかと思えばドサリと音を立てシュバルトの目の前に何かが投げ出される。
緩い放物線を描いて放棄されたそれは、シュバルトにとって見覚えのあるものだった。
赤黒い血溜りで床を濡らし、生ゴミのように転がるそれはまさしく――
「なっ……調停者!?」
「なにっ!?」
調停者だった。
しかしその肉体には有るべき筈の右腕が欠損し、全身には無数のえげつない打撃痕が残り最早肉塊寸前。
死人と称するにも残酷な、元が人とは思えぬ姿。
だが調停者は生きていた、文字通り瀕死の状態ながらも。
しかし、こんな状態で生きているという事は死ぬよりも遥かに辛い状態だ。
調停者は今、生と死の境目を彷徨っている。ぶっちぎりで”死”へと足を踏み入れている状態だが。
哲学者の卵により理性を失ったラスボス少女に、人を痛め付けるという知能はない。
ただ巡り巡る殺人衝動に身を任せて、存在する生物を全て殺害するのみ。
そんな彼女が調停者を生かしておいたのは、本当に偶然だ。
強いて言うのならば調停者の運が良かった――いや、悪かったとも言えよう。
調停者自身の高い生命力が、その命を微かに繋ぎ留めたのだ。
最もそれは、調停者自身にとっては厄災でしかない。
「あ、あああア……アアアアアアアアアアァァァアアアアアアァァア!!!」
「……っ! マズイ!伏せろッ!!」
しかし目の前の怪物は、混乱する時間さえも与えてはくれない。
異変を感じとったレナートの一声を合図に、伏せる全員の頭上では暴風が通り過ぎた。
否、それは暴風というよりも……もはや、台風そのもの。
幸いその台風は誰にも当たらずに通り過ぎたが、標的の失ったそれは病院の入口を無残に破壊しても有り余る。
決して脆くはない建物の入口が、一瞬にして崩壊された。
その一撃を身に受けていたのならば命はない事ぐらい、この場にいる全員が容易に察することができた。
「くっ……遂に狂ったか!」
最早今のラスボス少女は、ラスボス少女ではない。
知性を失い、暴君と化す彼女を見てガイアは弾末魔の引き金に置かれた指に、力を込める。
音速を軽く突破し降りかかる銃弾は、ラスボス少女の額へと突き進み――弾かれた。
不可視である、”風”のベールによって。
ガイアの表情が驚愕と絶望に染まる。
ラスボス少女の能力はあの規格外の身体能力だけではなかったのか。
思えばあの調停者の右腕は、へし折られたというよりも刃物で切断されたような痕だった。
如何に彼女の手刀が鋭くとも、あんなに綺麗に断面を残すことなどできない。
ならばそれを説明するとすれば――ラスボス少女はあの身体能力以外に、”もう一つ”能力を持っている。
ガイアは全身の毛が逆立つのを感じた。
もしもその推測が正しければ、今目の前に存在するのは犬山よりもよっぽど危険な存在だ。
すべてを破壊して、すべてを殺して、それでもお釣りが返ってくるような。
まさしくラスボスのような、化物。
一介の能力者如きではとても手に負えないような、次元の違う存在だ。
勝ち目などない、じわじわと心が絶望に染め上げられていく。
「……シュバルト!ガイア!!
てめぇらはそいつ連れて逃げろ!!」
そんな最中、レナートの乱暴な叱咤が木霊する。
しかしそのレナートの言葉は、呆然としていたガイアとシュバルトを我に戻した。
「正気か!?奴に立ち向かって生き残れると……」
「勝ち負けの可能性じゃねぇ、戦うんだよ!
結果はいつだって、他人が決めるもんじゃねぇんだ!!」
「っ……!」
すかさず食って掛かるシュバルトに、レナートは怒号を浴びせる。
勝ち目のない戦いや戦争を経験してきた彼だからこそ成せる迫力に、シュバルトは押し黙る他なかった。
確かに、今ここで全員が立ち向かえば全滅の可能性もあり得るし、逃げれば全員が追いつかれる。
それを考慮しても、誰かがこの場に残るのが最善だろう。
理屈では理解していても、その方法がどんなに無慈悲なものかは知っている。
「シュバルト」
その時、不意に横から声が掛かる。
それに反応し振り返れば、そこには調停者を抱えたリチャードの姿があった。
「この方は貴方達にに任せます……
廃墟街の朽木に囲まれた一軒家、そこに私達の仲間であるカクゴが居るはずです」
反論を返す隙も与えずに、リチャードはそう言った。
そして両腕で抱えられた調停者をシュバルトに差し出し、凛とした瞳を向ける。
言葉はなくとも伝わった。リチャード達は、自分達に託す気なのだと。
シュバルトは静かに頷いて、調停者の肉体を背中に乗せる。
ズシリとした重さが肉体を襲った。
だがこれが調停者の命の重みだとすれば、なんとも軽いものだ。
「……すまない…行くぞ、ガイア!」
「くっ……先に拠点で待っている!」
「フー!!フー!!」
背中の調停者を背負い直し、シュバルトとガイア、マウは一度も振り返る事なく病院の出口へと向かっていく。
レナートとリチャードも振り返ることはない、ただ目の前の怪物に睨みを利かせるのみ。
やがて二人分の足音が、病院内から消失した。
それを二人が外へ出たと判断したレナートは、中戦車『T-34』を自身の横へと召喚する。
それとほぼ同時のタイミングでリチャードも崩壊した破片を媒体に、ゴーレムを10体その場につかせた。
「待っててくれるなんて随分律儀なもんだなぁ?
それとも余裕ぶっこいてんじゃねーだろうな?」
「アアア………殺ス……全員……」
「無駄ですよレナート、こいつに言葉は通じません」
「ヘッ、上等……闘うのに言葉は要らねぇってことかよ!!」
ラスボス少女の眼光が、膨大な殺気と共に流される。
しかしそれさえもリチャードとレナートにとっては、戦闘意欲の着火剤でしかない。
戦車の主砲がラスボス少女を捉える。20もののゴーレムの視線が集中的に浴びせられる。
少女の表情ははっきりとは伺えぬものの、それを前にしても全く動じた様子は無い事が察せた。
「ウ…アァ……アアアアアアァァァァァァァアァハハハハハハハハ!!!」
待合室に集合する三人は、全員冷静さなど持っていない。
理由は?それは三人全員が紛れも無い”狂人”だからだ。
良く言えば戦闘狂、悪く言っても戦闘狂。
狂人は狂人を呼び寄せる。そしてそれらが重なり合ったのならば、やる事はただ一つ。
「さぁ、始めようぜ――”戦争”をよォ!!」
猛々しい咆哮を合図に、激戦の火蓋は切って落とされた。
【市街地病院付近/深夜】
【ササヤキ・ガイア@高校】
[状態]:背中に打ち身 腹部に打撲(処置済み) 戸惑い
[装備]:"弾"末魔@能力者(しゃべる)
[道具]:基本支給品(食糧一食分消費) 牛糞@魔法少女(しゃべる・うるさい・うざい)
[思考・状況]
基本行動方針:犬山を殺して役目を終える。
1.廃墟街の一軒家を目指す。
2.犬山を殺す。できれば牛糞を鼻にぶち込む。
3.朝になったら廃墟街の中央に行き、結界が張られていないか確かめる。
4.狂犬病、金岡も出会ったなら殺しておく。
5.俺に関わるな、と言いたいが『マトモな』協力者が必要か。
※重力操作、確定能力共に制限対象となり使用不可です。
※犬山(運営)から割と警戒されています。
※魔法少女、俺能、VIP邪気眼、境界線の世界の情報をある程度入手しました。
※首輪についてかなりの情報を入手しました。
※運営が組織的に行われていることを知りました。
※境界線のゲートを使ってあらゆる世界から参加者が集められた事を知りました。
※運営の拠点は廃墟街の中央なのではないかと考えています。
【シュバルト@境界線(平行世界)】
[状態]:健康
[装備]:マウ@境界線(平行世界)
[道具]:基本支給品(食糧一食分消費) ハリセン@映画バトロワ
[思考・状況]
基本行動方針:敵対する者は皆殺す。犬山も例外ではない。
1.廃墟街の一軒家を目指す。
2.信頼出来る参加者と協力し犬山を殺す。
3.朝になったら廃墟街の中央に行き、結界が張られていないか確かめる。
4.カノッサや越境者がこの状況に関与している可能性を示唆。
※邪気眼、魔法少女、俺能、高校の世界についての知識をある程度入手しました
※首輪の危険性や機能について確信しました
※運営が組織的に行われていることを知りました。
※境界線のゲートを使ってあらゆる世界から参加者が集められた事を知りました。
※優勝の景品については信じていません
※運営の拠点は廃墟街の中央なのではないかと考えています。
【調停者@VIP邪気眼】
[状態]右腕欠損 全身打撲(大) ダメージ(極大) 気絶 瀕死
[装備]『断罪十字(ダストパニッシャー)』@邪気眼大学(異能都市)
[道具]基本支給品×2(食糧一食分消費)
[思考・状況]
基本行動方針:運営を潰し、バトルロワイヤルからの脱出
1.………
※首輪の危険性に勘付いています。
※犬山個人ではなく、組織的な現象だと気付き始めています。
※優勝の景品については信じていません。
※魔法少女、境界線、俺能、高校の世界についての知識をある程度入手しました。
※調停者の右腕からの失血と肉体的なダメージは深刻で、とても危険な状態です。
【市街地病院内/待合室/深夜】
【ラスボス見習いの少女@俺能】
[状態]:背中、右肩に軽傷 自我の消失 凄まじい殺人衝動
[装備]:津山涼のゴーグル@魔法少女 不明支給品(確認済み)
[道具]:基本支給品×3(食糧二食分消費)
[思考・状況]
基本行動方針:全てを殺す
1.自分以外の全ての存在を殺す。
※身体機能に制限が掛かっており、戦闘の際に体に負担が掛かります。
※シュバルト達の首輪や運営に対しての考察を頭に入れました。
※魔法少女、VIP邪気眼、境界線、高校の世界の情報をある程度入手しました。
※哲学者の卵により『負』の感情が爆発しており、凄まじい殺人衝動に駆られています。
※哲学者の卵の影響により新しい異能が芽生えました。目覚めた異能は風力操作です。
しかし自我を失っている為に、あまり高度な扱いは出来ません。
【媒介召喚】
【リチャード・ロウ@厨二能力スレ】
[状態]:健康 疲労(小)
[装備]:白銀のオイルライター@学園都市
[道具]:基本支給品(食糧一食分消費) 革手袋@学園都市
[思考・状況]
基本行動方針:聖王復活の為、元の世界に帰還する
1.レナートと共にラスボス見習い少女との戦争。
2.それが終わったら、シュバルト達を追い廃墟街の拠点へ向かう。
3.運営も参加者も邪魔をする者は全て排除する。
4.レナート、カクゴとは同盟を組み、戦いの決着は元の世界に戻ってから。
※王国・教団戦争直後からの参戦です。
※本来の能力が制限されており、一度に召喚できる限界は下級でも10体、中級は5体、上級は1体です。
※運営が組織的に行われていることを知りました。
※参加者がそれぞれ違う世界から集められたという情報を得ました。
※首輪の危険性や機能についての知識を得ました。
※運営の拠点は廃墟街の中央なのではないかと考えています。
【殲滅指揮】
【レナート・コンスタンチノヴィチ・アスカロノフ@厨二能力スレ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食糧一食分消費) ウサギのぬいぐるみ@学園都市
[思考・状況]
基本行動方針:この殺し合いを破壊し、元の世界に帰還し、戦争を続ける
1.リチャードと共にラスボス見習い少女との戦争。
2.それが終わったら、シュバルト達を追い廃墟街の拠点へ向かう。
2.運営も参加者も邪魔をする者は全て排除する。
3.リチャード、カクゴとは同盟を組み、戦いの決着は元の世界に戻ってから。
※王国・教団戦争直後からの参戦です
※本来の能力が制限されており、一度に召喚できる兵器は最大二つまでで、兵器が存在できる時間は凡そ20秒程です。
※参加者がそれぞれ違う世界から集められたという情報を得ました。
※運営が組織的に行われていることを知りました。
※首輪の危険性や機能についての知識を得ました。
※運営の拠点は廃墟街の中央なのではないかと考えています。
【シュバルト、調停者、レナート、リチャードの地図】
※四人の地図には市街地・廃墟街に大きな赤マルが描かれています
※その他にも、様々な拠点となる場所に青マルが描かれています。
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