現実は非情である

Last-modified: 2015-10-21 (水) 19:40:00

【現在地:市街地 真昼】

 

(…………おいおいなんかあいつすっ転んだぞ!)
(……うっわぁびしょ濡れじゃん。可哀想に。)

 

早瀬琢磨の清く透き通った瞳には銀髪の青年が映り込む。
青年の身体が落ちた先には小さな水溜り──、僅かに時を挟み音を立てて水へと沈み込んだ。
銀髪の青年の足元を見れば、ふにゃふにゃした滑り気のある黄色い皮…………BANANA。

 

黄に弄ばれる様に見事な転倒を魅せたその銀髪の青年の名はマグニ・T・トルデオン。
別世界に於いても同じ様なシチュエーションに嘲笑された可哀想な魔術師の1人である。
白い肌を比較的紅く染め上げながら、ゆっくりと立ち上がる。

 

──それを目に映した、早瀬琢磨は動揺を隠せずに居た。タオルを握り締めた右手がバイブレーションの様にブルブルと振動している。

 

──遂に。遂に、早瀬琢磨の優しさが垣間見える……のかと思いきや。

 

(……………タオルなんて貸してやらん。それに反対方向じゃねぇか向かう先)

 

【現 実 は 非 情 で あ る 。】

 

まるでギャグ漫画の様にすってんころりんと優雅な回転を見せ、水を纏ったマグニを尻目に、早瀬は非常に徹することを選ぶ。……つまり、そのままスルーしようとした。

 

──然し。

 
 
 

「……………あぶねェぞ…………!」

 

先程よりも顔の赤みが薄くなってきたマグニは、早瀬とのすれ違い様に囁く様に口を動かした。
然し言った後の彼は何処か満足そうに、三日月の形に口を歪ませていて。

 

──それもその筈。早瀬が進む道の先には薄汚い忌々しきBANANAの皮が幾つも配置されていたのだから。
そもそも魔術師の精鋭ともあろうマグニがそんじょそこらのBANANA程度で引っかかる訳が無い。

 

下手な鉄砲も数打ちゃあたる戦法ではないが、早瀬の進路を明らかに制限している”それら”。
この人生でニ度目の邂逅……。早瀬は引っかかるか……どうか。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

(うおっ!?アブね!俺もあいつみたいになるところだったぜ……)

 
 
 

……そして。

 

「……………………………………。」

 
 

……その二人の青年の距離は、別世界の出来事も含めて僅か二回の邂逅の間に無限に開いた。

 
 
 
 
 
 

【早瀬琢磨@旧学園都市】
[状態]:健康 超スルースキル
[装備]:不明
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:全ての厄災から逃れるべく、全ての面倒ごとをスルーして生還する
1.とりあえず隠れる
2.人と出会っても無視
3.それがどんな状態であっても無視

 

【マグニ・T・トルデオン@旧学園都市】
[状態]:健康 スブ濡れ
[装備]:不明
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:元の世界へ帰る
1.運営の排除、正体解明
2.邪魔者は全て倒す
3. 早瀬を無視

 
 
 

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早瀬琢磨甘ったれんじゃねぇ
マグニ・T・トルデオン甘ったれんじゃねぇ