森林公園を破棄し、三つの異型が訪れたのは鬱蒼と木々の生え渡った雑木林。
サキュバス、キメラ、堕天使という常識外の来訪者をも、風に揺れる木々はまるで歓迎するかのように迎える。
差し掛かる仄かな月明かりに照らされながら、異型はもぞもぞと不気味に動きを見せていた。
「ふぅ……超疲れましたねぇ……超移動はもう超勘弁です!」
「はぁぁん!ならばラピ様、このグラナダめの背中に……」
「くだらない事やってないでさ、君たちも罠作るの手伝ってよ!」
ぐったりとだらしなく寝転がるラピに、グラナダはチャンスとばかりに寄り添い髪を撫でる。
対してディバインはせっせと、雑木林の環境を用いたトラップを制作していく。
自作の道具や持ち前の身体能力の事もあり着々とトラップが出来上がっていくが、どれも初歩的なもの。
予め斧で切込を入れていた大木にロープを括り付け、手元のロープを引けば木が倒れる仕組みとなる狩猟用トラップ。
スコップで掘った落とし穴に尖った枝や骨を敷き詰めたブービートラップ。
極めつけにはロープを用いた括り縄など、余程の間抜けでない限り引っかからない代物だ。
手元の道具が限られている上に人数が少ないために仕方ないといえば仕方ないのだが……
「それにしてもさ……さっきの放送を聞く限り、もう何人も死んでるみたいだね」
ブービートラップを掘り進めていく最中、不意にディバインがそう零した。
しかしラピもグラナダも大した反応はみせず、逆にキョトンとした表情で見つめ返してくる。
まさか……堕天使さんの頭は最悪な答えを導き出した。
「もしかして……二人共、さっきの放送聞いてなかったの?」
「超はい!というか超耳障りで超聞き流してましたし」
「ワタクシもですわぁん!あんな糞女と糞犬の放送なんて、耳が腐ってしまいますぅ……」
はぁ……。
なんなんだこいつらは、やる気があるのかないのかわからない。
まぁ自分に愚直なのはこの二人らしいが、僕の苦労も分かってほしい。
そう悪態つきながら、ディバインは放送の内容を簡略化しサキュバスとキメラへ伝えた。
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「――へぇ~!超優勝すると超願いが一つ叶うんですか!」
説明を聞いて、やっと納得したようにポンッと掌に拳を置いてみせるラピ。
その横ではグラナダも分断した頭で頷きながら「流石ラピ様!理解が早いですわぁあん!」とか言っている。
同時に死亡者と禁止エリアの事も伝えたんだが……この様子だと”景品”の事しか頭に入っていないらしい。
しかしこの景品、本当だとしたら……当然、この機会を逃す事なんてまずない。
合理的にニンゲンを研究し、合理的にこの未知な異文化に触れられ、その上に願いが叶う。
僕にとって……いや、ラピとグラナダにとってもそれはきっと理想なのだ。
「はぁん、それではワタクシたちが目指すのはぁ……優勝一択ですねぇ!」
「モャハハ!超その通りですよ超グラナダっ!超ディバインも超そうですよね!?」
……ああ、その目…その目に映る世界。
穢れのない輝きが反射を起こし、僕の瞳を射抜くその光。
美しい、けど……自分が大切だと思った宝物ほど、失う事が怖いものはない。
「――勿論、僕は死ぬつもりはないからね」
天使は、人魚とおんなじくらい儚くって
天使は、デゾンメリーとおんなじくらい脆くって
天使は、エルフとおんなじくらい繊細なんだって
何処かの誰かが、そう言っていた。
認めたくはない、けど僕は確かにその通りなんだと思う。
僕がラピの"瞳"を飲み込んで堕天した時、あの苦しみは一生忘れられる事はないだろう。
僕は、弱い。だからこそ堕天するまでは翼さえも無くて、波動なんていうちっぽけな力を持ってしまったんだ。
それ故に、僕は”一人”じゃダメなんだ……グラナダと、そしてラピと一緒にいなければならない。
だから、もしもこの二人が死んでしまった時は………きっと僕は、ディバイン・W・アーマゲドンではなくなってしまう。
それだけはダメだ。だから僕は、この二人を守る資格がある。
自分の命を張って――だなんて、格好つけた事は言わない。
僕も、グラナダも、ラピも、全員で生き残って願いを叶えるのが筋ってものさ。
だからそれまでは僕は、天使だとか堕天使だとか関係なく……ディバインとして、この二人と行動しよう。
勿論異文化への”交流”も忘れずに。というかそちらがメインとなるだろうね。
「じゃあ超ディバイン、超グラナダ!罠もいっぱい作ったし超ご飯にしましょう!」
「そうですわねぇ……ワタクシも、結局あの死体しか食べていませんしぃ……」
「罠を作ったのは殆ど僕だけどね……まぁいいや、そうしようか」
「よし!超なにが出るかな~?なにが出るかな~?」
彼女のマシンガンのような言葉が炸裂したと思えば、既にデイパックから食糧が出されていた。
その光景に思わず口をあんぐりと開けて、絶句してしまう。
行動力があるというか、自分の欲求に素直というか……まぁ、そういう点では”サキュバス”らしいのかもしれない。
自慢の小さな翼をパタパタと前後に可愛らしく動かしながら、食糧を漁るラピの姿はとてもそうは思えないが。
まぁ、そういう自分も人のことなど言えないけれど―――……。
一人苦悩を抱える堕天の異型は、呆れ返ったような溜息を一つ吐いた。
【雑木林:世界樹付近/夜中】
【ラピ・モャー@五大陸】
[状態]:健康 好奇心旺盛
[装備]:無道 武美のブブゼラ『ケティオコルム』@能力者(リセット前)
[道具]:基本支給品(食糧一食分消費) 有坂大輔の片腕@現地調達 骨スコップ@現地調達
[思考・状況]
基本行動方針:今の状況を徹底的に楽しみ、優勝する
1.みんなで超お食事!
2.とにかく優勝を目指す
3.ニンゲンの骨でお城作りたい!
※小さなサキュバス
物質を「ラピが考える最高の状態」に保持し続ける魔術が得意だが、能力制限により減弱されています。
【グラナダ・ジャロウ@五大陸】
[状態]:健康、ラピに依存
[装備]:???
[道具]:基本支給品(食糧一食分消費) 骨スコップ@現地調達
[思考・状況]
基本行動方針:ラピに従う
1.いざとなったらラピ様はワタクシが守ってみせますわぁ!
2.ニンゲンとはみんな能力を持っているものなのでしょうか
3.こちらでも、ラピ様と一緒に骨のお城を作りたいですわぁ
※蜘蛛をベースにしたキメラ
首と頭が分かれているが、首輪は頭部側に不思議理論で取り付けられています。
※黒魔術が制限されているかどうかは後の書き手さんにお任せします。
【ディバイン・W・アーマゲドン@五大陸】
[状態]:健康 疲労(小)
[装備]:斧@現実 ロープ@現実 魔刀《神楽》@魔法少女(ヒロから奪取)
[道具]:基本支給品(食糧一食分消費) 骨スコップ@現地調達
[思考・状況]
基本行動方針:今の状況を楽しみ、最終的に優勝
1.森林公園を捨てたのが惜しい
2.罠はこれくらいでいいかなぁ
3.空腹ってこういうものなのか
※堕天使
肌を覆う波動がオートである程度の特殊攻撃を弾くが、能力制限により減弱されています。
※洗脳能力の機能が若干制限され、その他の白魔術も制限されている可能性もあります。