第十一話『ちがうこと』

Last-modified: 2011-08-05 (金) 00:05:40

 最初の森で何日か経った朝。疲れて木陰で休んでいた僕は、同じ色をして、同じ尻尾を持つ生物と出逢った。初めて見る他の生き物。確かに僕と同じ尻尾だけど、体の大きさや顔つきが僕とは全然違っていた。初めて見る生き物を前に、僕は嬉しい感覚と一緒に緊張していた。休めるために伏せた体を立たせる力が入らない。
向こうも僕に気付いて暫く見ていた。僕も同じようにずっと見ていた。小さい体を震えさせて僕は勇気を振り絞って近づいてみた。近づくにつれて、向こうの生き物は少し屈んだ。一歩、また一歩と近づくにつれて向こうの生き物はその背を少しずつ低くした。その瞳は僕を見たままで、警戒している。
怖がらないで欲しい。僕は君と話したいんだ。そう言葉にしようとして僕は震える口を開いて声に出した。
その時・・・
『オォォーーーーン!』
生き物が鳴いた。伏せていた背を高らかに伸ばし、上を見上げて鳴いた。その声に僕は驚き、ビリビリ来る感覚を感じながら目を見開いた。その鳴き声が何を言ってるのか判らなかったけどその声から感じるのは『怖さ』だった。次に生き物が僕を見たときその目から感じるのは『怖い』感じだった。今にも僕を襲いそうなその目に僕はまた震えだした。そして僕はまたうずくまり、声も出なくなった。
暫くすると向こうの生き物と同じ生き物が数匹やってきた。皆同じ。顔も体も尻尾も。そして、僕を睨むその鋭い眼差しも。僕だけが彼らと少し違うらしい。僕だけが違う。違うから僕は睨まれているのだろうか。
違うから、囲まれているのだろうか・・・
――僕の声を聞いてよ!
心の底から溢れ出てくる感情を吐き出すように叫んだ。悲しくて辛くて・・・
でも目の前の生き物達は僕に向かって襲い掛かってくる。鋭い歯を見せる生き物達を目の前にしながら、僕の意識はそこで途絶えた。