好機
ここなら大丈夫かな
広さも十分だし、人目につくこともないし
「こそこそしてないで出てきたら?」
見えない陰に言う
あ、気づいてたんだ
言ってくれればすぐに行くのに
「あの、…」
「ごめん、しばらく待ってて」
そういった彼女が杖を構えたとたんに周りを紅い氷が覆っていく
あ、
また、あの時と同じドームだ
誰かほかにいるのかな
それにこのドーム、私を守ってくれてる
誰かと、戦うのか
昨日も入っていたドームも、一人だと少し寂しかった
「これで、心おきなくやれるでしょ」
これで、戦うことになってもとりあえず彼女は守れる
いまだに見えない陰に向かって言う
「気づいてたか」
ドームの影から姿を現したのは金髪の青年だった
「で、何のためにここまできたの?」
すぐに戦闘には入らないけど、気をつけた方がいいわね
杖を構えたまま、話を続ける
「とりあえず、俺は敵じゃない」
彼は言葉をつなぐ
「俺はレオン、ハデス軍と戦っている自警団に所属している」
レオンは言葉と同時にバッジを出す、それは自警団に所属している証明にもなるものだ
「レオンね、私のことは朱音と呼んで」
バッジを持っている以上敵ではないだろう
「とりあえず、彼女をあそこから出すわね」
彼女の杖が淡い光を放った直後、先程のドームが消えていき、中にいた少女の姿が見えた
「ごめんね、いきなり閉じ込めて」
「いえ、昨日も入ったせいかあまり怖くも無かったですし」
彼女は苦笑いを浮かべながら言う
「町で見かけて、昨日のお礼を言おうと思って追いかけてきたんです」
「俺にとっては、あんたがここにいたのは都合がよかった」
「へ?」
「あぁ、俺はレオン、ある自警団のメンバーだ」
「私は朱音って呼んで」
「麗奈、です古館麗奈。」
「さっきの話だが、続けてもいいか?」
「構わないわ」
「あの、それって私も聞いてていいものなんですか?」
ごく当然の疑問、それにレオンが即答する
「むしろ、聞いていてもらいたいくらいだ、その方が手間が省ける」
「あ、はい」
麗奈はおとなしく口を閉じる
麗奈の反応を見て続ける
「まず俺がここに来た理由だが、自警団のメンバーのスカウト、正確にはあんたら二人とあの場にいたもう一人だ」
一瞬の沈黙
「なぜ、私なんですか?」
以外にも、最初に反応したのは麗奈だった
「私には戦うこともできないし、自警団にスカウトされる理由なんてないと思いますが…」
「まぁ、あんたを選んだのは俺の独断だがな、あんたに素質があると思ったからだ。」
「私は隊長に連絡してくるわ、元々どこかの自警団に所属しようとしてたところだったし、許可は出ると思う」
そう言い残し、朱音は城に向かっていく
「で、あんただがいきなり戦えとは言わない、まずは戦闘訓練からだが、いずれ戦えるようになると俺は思っている。来るか来ないかは自由だ」
麗奈が黙っている間もレオンは続ける
「当然、危険でもあるし、つらいこともあるだろうがそれでも来るかどうか、決めるのはあんた自身だ、どうする?」
思わぬところで巡ってきた好機、しかしそれは想像を上回る危険と共にあった、即答はできない