レジスタンスどもは、どうせ死ぬ。
せめて、できるだけ早く全滅させてやるのが
慈悲ってやつだと思うがな。
自己紹介
俺のコードネームはアインス。
職人の手仕事で生み出されたこの性能で、遠くからでも確実な狙撃が可能だ。
俺なら、レジスタンスや古銃どもを一瞬で葬ってやることができる
……奴らがそうと気付く間もなく、な。
勝敗の見えている戦いを長引かせるこたぁねぇ。
早く楽にしてやりたいもんだ。
世界帝軍エピソード
第1話:「諜報員は見た!~残酷な優しさ~」
あ……ター。
さ…………し、あの村は消えた。
報告は以上だ。
……フ。作戦成功の知らせを聞くや否や、
次の軍議か。相変わらず、お忙しい方だ。
それにしても、今回の殲滅戦……
俺たちと、村人の戦力差は歴然。
虚しい戦いだったぜ。
あの村人たちも、可哀想に……
レジスタンスに協力したばかりになぁ。
村にあった孤児院のガキどもを、
きちんと皆殺しにしてやれたのが、
せめてもの救いか……。
あのまま生き永らえたところで、
不幸になるばかりだからな。
とはいえ……ひとりひとり、きっちり
撃ち殺すってのは、やりすぎだったらしい。
ファルにも、窘められちまったしな。
あいつの言うことも、もっともだ。
いずれ死ぬ相手を、今殺してやりたいという
俺のエゴで……高価な銃弾を無駄遣い
するのは、賢明とは言えねぇ。
次からは、皆殺しにするにも
やり方を考えなけりゃな。
……俺はついつい、
気持ちのままに動いちまうのが悪い癖だ。
その点ファルは冷静で、細かいところに
よく気が付く。俺にはもったいないくらいの
優秀な補佐だぜ。
そうだ、当然とはいえ作戦も成功したこと
だし……ここはひとつ、ファルに
旨いモンでも食わせてやるか。
馴染みのステーキハウスに、
連絡しておくとしよう。
あいつの好きなブルーチーズに合う
赤ワインを、手配させなきゃな。
第2話:「諜報員は見た!~垣間見える無慈悲~」
アインス | ……て、か……をやる……んだ……ん? おい、そこのお前! ここにあったジョウロ、どうした!? |
兵士 | ジョウロですか? それでしたら、あそこに……。 |
アインス | ああ? おい……ジョウロ使ったらすぐ 定位置に戻せっつっただろうが馬鹿野郎ォ! |
兵士 | も、申し訳ございません! |
アインス | チッ……次はねぇぞ? ……さて、仕切り直しだ。 花壇の様子は……。 |
アインス | ……お。この花、もうすぐ咲きそうだな。 つぼみの色を見るに、花びらは赤か? |
兵士 | ……! その花は……。 |
アインス | ん? こいつがどうした? |
兵士 | その花は、自分の故郷の花です。 |
アインス | ああ、確か……どっかの王族が、 世界帝に献上したんだったか。 |
アインス | 最初は従属に反対していたようだが…… 軽く叩いてやったら、 コロッと態度変えやがって。 |
アインス | 今では民衆そっちのけで世界帝に尻尾 振って、ご機嫌取りだ。 王族なんてのは、信用ならねぇ連中だぜ。 |
アインス | ……お前も、叩けば寝返る裏切者か? |
兵士 | い、いえっ! 自分は世界帝に忠誠を誓っております! |
アインス | そうか……ならいい。 |
アインス | 俺は、家族以外は信用しねぇ。 たとえ今は、世界帝に従う同士だとしてもな ……覚えておけ。 |